Team KAGAYAMAが「元町 安全・安心パレード」に参加

2018/05/07

誰もが振り返る甲高く乾いたエキゾースト音が元町のショッピングストリートに響き渡る。 一般公道では走ることができないホンモノのレーシングマシンが元町をパレードした。マシンはTeam KAGAYAMAのGSX−R1000、ライダーは加賀山就臣。今年も子どもたちの安全・安心を願う「元町 安全・安心パレード」に参加した。チーム発足の2011年以来8年連続で参加している。

このパレードは協同組合元町SS会が交通安全意識の高まりと無事故を願って開催している。今年は神奈川県警加賀町警察署1日署長に小田えりなさん(AKB48チーム8 神奈川県代表(チームK兼任))、横浜市消防局 中消防署1日署長に田山寛豪さん(元トライアスロン日本代表)を迎えた。

街ゆく人たちからは初めて観るレーシングマシンに「何なに?何が走ってるの?」「カッコいい!」「すっげぇーイイ音がする!」と驚きと賞賛の声が多く聞かれた。

チームヨコハマになりたい。

横浜生まれ横浜育ちの加賀山。横浜に対する愛着は人一倍である。「元町 安全・安心パレード」への参加は横浜への感謝の想いから参加し続けている。そして、レーシングライダーだからこそ安全には常に気にかけている。

「安全に走る・曲がる・止まる”はレースでも一般公道でも同じ。モータースポーツから伝えられる交通安全貢献がある」「チーム発足の時点からいつかは”チームヨコハマ“になりたいと言う想いがあった。モータースポーツを認知してもらうには地域貢献が大切。ストリートライダーたちに伝えられる交通安全はたくさんあるのでこのパレードを通じて伝えていきたい。横浜市と地元の元町のみなさんには本当にたくさんの応援、サポートを受けているからそれに応えたい、そして横浜の二輪の顔・シンボルとしてTeam KAGAYAMAがなれればいいな、と思っている」と言う。

チーム発足8年、未だに現役ライダー

加賀山は現役で走ることにこだわる。チーム代表、監督、ライダー、と一人で何役ものわらじを履くのだが決して現役を退こうとはしない。その理由を尋ねると「理由なんてないよ(笑)」と一笑に付された。

「走れるから走る。条件さえ整えば成績を残せる自信はあるし、それができると信じているから走っている。そして応援している人がたくさんいるので彼らがいる限りは走り続けたい」「単純にバイクが好き、バイクで競ることが好きなんだと思う。サーキットで攻める、オートバイを開発する、速くするためにセットアップすることが好き。オートバイはそれに応えてくれるし確実に速くなる」と加賀山。

加賀山が絶大なる信頼を寄せるチーフメカニック:斉藤雅彦氏

その加賀山が絶大なる信頼を置いているのが斉藤雅彦チーフメカニックである。加賀山が現役で走り続けられているのは斉藤氏がいるからと言っても過言ではないだろう。

加賀山と斉藤氏の付き合いはもう20年以上になる。チームは違うが同じスズキ系のチーム:斉藤氏がミラージュ関東、加賀山がSRS KUBOに在籍していたときに知り合った。

斉藤氏が加賀山らしいエピソードを話してくれた。鈴鹿のレースで加賀山と芳賀健輔選手が激しいトップ争いを展開していた。しかし、加賀山が前に出るとペースが落ちる。後日加賀山に理由を聞いてみたら「コースがわからないから前に出ると次にどっちに曲がるかわからなくてペースを上げられなかった」とのこと。

エンジニアとメカニックは違う。

加賀山は「オートバイを正確に組み上げる優秀なエンジニアはたくさんいる。だけどレースで勝つためにベストの選択をすることができる優秀なチーフメカニックは少ないと思う。何が正しいかは誰にもわからない。だからそのときどきで出来ることとできないことを見極め、今のライダーには何が最適なのかを選択することができるのが斉藤チーフメカニック」と言う。

「いくらオートバイが100点満点でもライダーのマインドがそこに達していなければオートバイは走らない。逆に80点のオートバイでもライダーのチカラを120%発揮できればトータルで100点になれる。ライダーとオートバイ、欠けていればそこを補い合うことができるのがバイクレース。その両方をマネジメントするのがチーフメカニックだと思う」と加賀山。

斉藤チーフメカニックは「昔は“良いバイクを作ること”、そのためにエンジン、車体、タイヤ、電気、サスペンション、全てのことを理解することがメカニックの仕事だと思っていた。だけど今はそれらを理解した上で、バイク、チーム、周りの人間も含めて全てをマネジメントして、ライダーが安心してピットから出て行けるような状況を作り出す存在がチーフメカニックの役割だと思っている」と言う。

たまに嘘つきのときもありますが(笑)。

「ライダーの今の状況を把握してすべきことを選択する。そしてライダーが行きたいタイミングで出せるように準備することが大切」「ライダーは人間。どんなに良いタイヤ、良いオートバイを用意しても「もしかしたら途中で壊れるかも。。」「これでいけるのかな」と不安になったら絶対にタイムは出ない。

「これでいける、大丈夫だ」と言い切ってライダーを送り出す。たまに嘘つきのときもありますが(笑)。」と斉藤チーフメカニック。

ライダーが如何に安心して走り出せるかを作るのが我々の仕事。行きたいときに行かせる、今は走るべきではないと思ったら残り時間があっても出さない。そこの見極めが肝心だし難しいところ」と言う。

キャッチャーだけではバッテリーは成り立たない。

加賀山がセッション中に“パーツを変えて”と言ってピットインしても「変えない。ダメだ」と断られることもしばしばあるそうである。「ライダーは必要以上にパーツを変えようとしたり、変える必要も無いのに変えたかがったりする。そこをコントロールするのもチーフメカニックだと思う」と加賀山。ライダーもメカニックも目指すものは一緒「勝つため、ひとつでも成績を上げるためのオートバイを作ること」そのアプローチ方法が違うだけなので、話し合って納得すればお互いの意見を尊重する。

「ライダーが言っていることを止めたり、進めたり、変更させたりするのもチーフメカニックの仕事。世界をみても一緒にやりたいというメカニックは少ない。」と加賀山の斉藤チーフメカニックに対する信頼は絶大である。

斉藤チーフメカニックも「チームの状況にもよるけど、オートバイ、タイヤのダメな状況をなんとかカバーして走ることができるライダー」「ちゃんとしたマシン、チームの状況を作り出せれば十分トップ争いができるライダーだと思う」と加賀山の才能を認めている。

「信頼してくれるライダーがいて初めてメカニックの存在意義が生まれる。キャッチャーだけでは成り立たない。ライダーと言うピッチャーがいないとバッテリーにはなれない」と言う斉藤チーフメカニックの言葉が印象的であった。

常に話題をふりまくTeam KAGAYAMA

毎年、何かしら話題を振りまくTeam KAGAYAMA。昨年の鈴鹿8耐を走ったハフィス・シャーリンは今年MotoGPクラスを走っている。2013年には前代未聞のプロ野球始球式を加賀山就臣が努めた。ホンモノのレーシングマシンで横浜球場に現れ、レーシングスーツのままで投球した。

この「元町 安全・安心パレード」には、Team KAGAYAMAのライダーとして今年RFMEスペイン選手権にフル参戦する浦本修充も参加した。今シーズンの意気込みを聞いてみた。

「日本をベースにスペイン選手権の時に移動しています。RFMEスペイン選手権のレベルは非常に高くてとても勉強になっています。自分の中で少しずつ手応えを感じてきていますがそれをまだ結果に残せていないので残りのレースでなんとか結果を出せるように毎戦集中して臨みたいと思います。チームメイトが3人います。その中で常にトップでいることは最低限、そして表彰台に昇ることを今シーズンの目標としています。

日本人ライダーの中でこのような形で海外のレースに参戦できる人はいないと思うので、(加賀山)就臣さんには感謝しかありません。「ナオを海外に行かせて良かったよ」と言ってもらえるような結果を残し、その結果で就臣さんへの恩返しをしたいと思います」と加賀山への感謝の気持ちを込めて語っていた。

ポケットバイク“74Daijiro“による「親子体験ポケバイ試乗会」が岩田悟、岡崎静夏、亀井駿をインストラクターに迎えて開催された。パレードを観てバイクに乗りたい、というちびっ子達が初めてバイクに乗り、その屈託の無い笑顔がとてもステキだった。

今年もTeam KAGAYAMAの活動が楽しみである。

photo & text : Toshiyuki KOMAI