『1秒前のことは過去のこと。我々は次に向けて動き出す』 藤原克昭選手の勝利への執着心

2013/11/18

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「持っているオトコ」。。藤原克昭選手

藤原克昭。現在の日本で最もエンターテインメント性のあるライダーではないだろうか。モデルのようなルックス、褐色の肉体美、そして派手なパフォーマンス。藤原選手の廻りには常に人が集まる。レース関係者はもちろん、ファン、カメラマン、記者、、彼には人を惹きつける何かがあるのだと思う。今どきの言葉で現すなら「持っている」だろうか。。

しかし、藤原選手の魅力をそのエンターテインメント性だけで語ってはいけない。彼の本当の魅力は(言わずもがなだが)何と言ってもその速さである。そして、勝利への執着心と堅くなまでにチームを信じる力、ではないだろうか。

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2012年の最終戦後に語った言葉とは。

2012年アジアロードレース選手権最終戦カタール。シリーズランキングトップで迎えた最終戦、2位とのポイント差は16ポイントであったがコースレコードを塗り替えるタイムでポールポジションを獲得。このまま勝利は確実かと思われたが藤原選手のチーム(Manual-Tech BEET Kawasaki Racing)は自分たちでは解決できない物理的な問題を抱えていた。そして挑んだ最後のレース。もちろんチームは最高の仕事をした。藤原選手も最善の走りをした。しかし、結果はわずか5ポイント差でチャンピオンを獲得できなかった。悔しくて仕方ないはずのレース直後、彼は信じられない言葉を発する。

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「1秒前のことは過去のこと。勝てなかったのは自分の力不足。我々は次(2013年シーズン)に向けて動き出す」

一切の言い訳をせず、誰のせいにもせず、勝つために次のステージへ動き出す、と言ったのだ。藤原選手はチームのことを考えてコメントしたのではないだろうか。チャンピオンを獲るために一年間苦楽を共にしてきたチームスタッフ。常にチームへの感謝の気持ちを忘れず、チームの期待に走りで応える。当たり前の事だがレーシングライダー独りでは走れない。それをわかっているからこそ藤原選手はチームのことを一番に考えていると思う。日頃から藤原選手は「サイコーのチーム、サイコーのスタッフ!」「彼らが素晴らしい仕事をしてくれるから自分はサイコーの走りができる」と語っている。
昨年最終戦の藤原選手の言葉はある1部上場企業のトップの耳に入り、過去に囚われず前進(進化)すべきという意味として経営会議でしばしば使われているそうである。

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人一倍努力している姿を見せない、言わない、藤原選手

「オレって天才!」藤原選手のいつものコメント。だが本当に自分のことを天才だと奢っているわけではない、自分を追い込むためのコメントにも思える。派手なパフォーマンスで、ともすると悪ふざけしているように見えるかもしれない。しかしその陰で人一倍の努力をしている。サーキットに誰よりも早く入ってストレッチを欠かさない。「レースに臨む前にカラダをほぐしておかないと何が起きるかわからない。安全に、確実に勝つために絶対に必要なこと」と彼は言う。でもそんな姿を誰にも見せないし、言わない。「オレって天才!今日も勝っちゃうよ!」とわざとおどけて見せる。天才・藤原克昭の走りを楽しみに来ているお客様のために必ず勝つ!そのために自分自身にプレッシャーを与えているように見える。

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派手なパフォーマンスは自分へのプレッシャーを隠すためのもの、そう言ったら藤原選手に失礼だろうか。。でも、そんな気がしてならないのである。。

その藤原選手が今週末(2013年11月21日-11月23日)逆転チャンピオンを賭けて最終戦に臨む。今年もカタール・ロサイルサーキットだ。チームの力を信じ、自らのチカラを信じ、その手にチャンピオンを掴むことができるだろうか。全ては今週末に結論が出る。

photo & text : koma

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