2018全日本ロードレース第7戦オートポリス 決勝レース

2018/09/06

中須賀克行と野左根航汰のレベルの高い神経戦、勝ったのは中須賀、今季8勝目、2位:野左根航汰、3位:高橋巧

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が今季8勝目を挙げた。レースをコントロールしながらの勝利ではあったが、今回はチームメイトの野左根航汰が独走を許さず踏ん張った。これで2戦連続のヤマハファクトリーの1-2フィニッシュ。3位には悔しい高橋巧(Team HRC)

決勝当日は昨日までの豪雨・濃霧が嘘のような青空が広がった。土曜日の公式予選とレース1が中止になったので朝フリーの時間帯に公式予選が開催された。爽やかな晴天ではあるが路面はまだ濡れている。各車様子見で最初はウェットタイヤで出ていく。やがて路面は乾きはじめ、ウェットパッチは残るもののドライタイヤで出ていく。このような路面では秋吉耕佑(au・テルル・MotoUP RT)が速い。序盤はリーダーボードのトップに立つ。

路面が乾くにつれ各車タイムアップしていく。予選終了10分前には更新、更新でめまぐるしく順位が入れ替わるタイムアタックが続く。その中で中須賀がただ一人1分47秒台にいれる1分47秒955でポールポジション獲得。2番手には1分48秒552の野左根、3番手には1分48秒891の渡辺一樹(ヨシムラスズキMOTULレーシング)がフロントローを獲得。

以下、4番グリッド:渡辺一馬(Kawasaki Team GREEN)、5番グリッド:高橋巧、6番グリッド:津田拓也(ヨシムラスズキMOTULレーシング)、7番グリッド:加賀山就臣(Team KAGAYAMA)、8番グリッド:秋吉、9番グリッド:清成龍一(KYB MORIWAKI MOTUL RACING)、10番グリッド:水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO. Honda)

13:30決勝レーススタート。気温28度、路面温度43度と、このウィークで一番高い温度となる。

ホールショットはロケットスタートに定評がある加賀山。なんと予選7番手からトップで第1コーナーに進入する。中須賀、渡辺一樹、渡辺一馬、野左根、秋吉の順、行き場を失った高橋巧は8番手で1コーナーに進入する。

3コーナーで渡辺一樹が中須賀をパス、加賀山、渡辺一樹、中須賀の順。4コーナーでアウトから高橋巧は秋吉と津田を抜いて6番手まで回復。

オープニングラップは加賀山が制する。以下、渡辺一樹、中須賀、野左根、渡辺一馬、高橋巧、津田、秋吉、清成、高橋裕紀(KYB MORIWAKI MOTUL RACING)の上位10台。3周目の1コーナー進入で渡辺一樹が加賀山をパス、トップに浮上。ファイナルコーナースタンドコーナーで中須賀が加賀山のインを突いて2番手浮上する。

4周目の1コーナーで野左根が加賀山を、5周目の1コーナーで高橋巧が渡辺一馬をパスして渡辺一樹、中須賀、野左根、高橋巧、渡辺一馬、加賀山までが先頭グループ。レース序盤は渡辺一樹が先頭グループを引っ張る。

7周目、「いつも中須賀さんの後ろで様子をみていて最後は離されるので前に出て引っ張ってみようと思った」と言う野左根が中須賀をパス、2番手に浮上する。その言葉通り9周目の1コーナーで渡辺一樹をかわしてトップに立つ。しかし渡辺一樹も黙っていない。4コーナーで野佐根を抜き返すがその先の第2ヘアピンで野佐根が再びトップを奪い返すと、ジェットコースターからの上りセクションで中須賀が渡辺一樹をパス、野佐根、中須賀、渡辺一樹の上位3台。野佐根は14周目まで先頭グループを引っ張る。

11周目の1コーナーで高橋巧が渡辺一樹をパス、トップ争いに加わる。野佐根を先頭とするトップ3台は1分49秒台中盤から後半のタイムで周回、パッシングの機会をうかがう。

そして満を持して中須賀が15周目のファイナルコーナースタンドコーナーで野佐根のインを突いてトップに浮上する。「ここで来るとは思わなかった。攻め方の幅が広い」と野佐根は脱帽。ここから中須賀はいつものパターンのようにペースを上げる。

後方から先頭グループと同じ49秒台で追い上げてくるマシンがいた。津田である。決勝に向けてセットを大幅に変えたと言う。序盤はラップタイムペースが上がらず中位集団にいたが、タイヤが減ってきてからのフィーリングが良くレース中盤から後半にかけてラップタイムを上げる。そのタイムは先頭集団とほぼ同じタイム。15周目に1分49秒439のベストタイムを刻む。セカンドグループに追いつき、さぁこれから、と言うところで1コーナーでオーバーラン、11位でフィニッシュする。

野佐根は中須賀にくらいついた。中須賀が1分49秒2、49秒1とペースを上げたにもかからず離れない。むしろ18周目には1分49秒014と中須賀よりも速いタイムをマーク。「タイムを上げたのに離れない。コンマ2秒からコンマ3秒差の目に見えない神経戦をやっていた。これはもつれこむなと思った」と中須賀。しかしラスト2周の19周目に1分48秒865!なんと48秒台に入れてきた。
これには野佐根もついて行けず中須賀が今季8勝目を挙げた。野佐根は2位。「3番手に上がってからプッシュしたが付いていくのがやっとだった」という高橋巧は悔しい3位。

以下、4位に渡辺一樹、5位:渡辺一馬、6位:加賀山、7位:秋吉、8位:水野、9位:Anupab Sarmoon、10位:清成の上位10位であった。

『今日は事前テストも含めてウィークで一番路面温度が上がり、その温度でテストしていないので不安はありました。ですがしっかり機能して、乗りやすいバイクにしてもらっていたので序盤は様子を見ていました。終盤もう少し早く仕掛けようと思いましたが、野佐根選手が前に出てから、後ろとの差も縮まらない(仕掛けてこられない)タイムでラップしてくれたので後ろで体力を温存させてもらいました。残り5周で前に出ました。野佐根選手はプッシュしたタイムで後ろからついてきて、タイムも離れなかったので最後までもつれるかなと思いました。野佐根選手も仕掛けるところがなかったみたいで、0.2〜0.3秒差の目には見えない神経戦をしていました。高いレベルの良いバトルができたと思います。今シーズンは地元なのに5月のオートポリスで勝ててなかったのでとても嬉しいです。』

『昨日は天候悪化により予選もレース1もキャンセルになり、あまり走行できなくて不安はありましたけど、走りだしてみたら周りと遜色ないペースで走れました。いつもは中須賀選手の後ろで様子を見ていて最後は離される展開が多かったので、今日は一度前に出てトップで引っ張ってみようと思って前に出ました。本当はもう少し速いペースで走りたかったのですが。でもコンスタントに走れました。ラスト5周で中須賀選手が仕掛けてくるのはわかっていたので、警戒はしていたのですが、最終コーナーの内側から抜かれるのは想定外でした。想定外の攻めができる幅が凄いと思います。いつもなら離されてしまうのですが、今日は頑張って食い付いていけたのはよかったです。勝つための課題はたくさんありますが、今日は一歩前進できたかな、と思います。
そろそろ違うワンツー(野左根ー中須賀のワンツー)をしたいと思っています。そのためには自分の頑張りが大切で、まだまだ遠くて高い山ですが少しは見えてきたかな、と思います。』

『今年調子が良いスタートですが、今日は行き場がなくてアクセルを緩めざるを得ず、ポジションダウンしてしまいました。最初は焦らなくても、後ろからついて周りのペースをみながら走ろうと思いました。中盤以降に3番手まで上がって、少しずつ追いついて、離れて、を繰り返していました。最終コーナーで中須賀さんがラインを変えたので絶対に行くな、と思いました。自分もさらにプッシュしたかったのですが付いていくのが精一杯でした。自分も余裕を持って走っていたつもりだったのですが、この路面温度で今週走っていなかったので予想以上に辛くて、いつも通りの負け方をしてしまいました。次はなんとか巻き返したいと毎回言っていますが、チームと話し合って努力していきます。』

全日本ロードレース第7戦「KYUSHU MOTORCYCLE FESTA in AUTOPOLIS」決勝レース上位10位の結果は以下の通り。

優勝:#21 中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2位:#5 野左根航汰 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
3位:#1 高橋巧 Team HRC
4位:#26 渡辺一樹 ヨシムラスズキMOTULレーシング
5位: #11 渡辺一馬 Kawasaki Team GREEN
6位:#71 加賀山就臣 Team KAGAYAMA
7位:#090 秋吉耕佑 au・テルルMotoUP RT
8位:#634 水野涼 MuSASHi RT HARC-PRO. Honda
9位:#99 Anupab Sarmoon YAMALUBE RACING TEAM
10位:#23 清成龍一 KYB MORIWAKI MOTUL RACING

photo & text :Toshiyuki KOMAI