2018年全日本ロードレース最終戦鈴鹿 Race2

2018/11/12

Race2:モリワキがついに初優勝!清成龍一が有終の美を飾る。

モリワキがついに表彰台の真ん中に立った!50回 目を迎える記念のMFJグランプリで清成龍一(KYB MORIWAKI MOTUL RACING)が悲願の初優勝をモリワキに贈った。2位に中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)、3位に高橋巧(Team HRC)。

生憎の雨となったレース1。しかしその雨に自信があった高橋巧がホンダワークスHRCに初優勝をもたらした。雨のラップタイムはチャンピオン中須賀をして「速い」と言わしめるほどだった。雨はお昼くらいに止み、路面は非常に難しいコンディションに。乾いてはいないがフルウェットでもない。サイティングラップでスリックタイヤで出ていくライダーもいるくらい微妙な路面であった。

レース2はウェット宣言が出されて2周減算の18周で今シーズン最後のレースが行われた。

ホールショットは高橋巧が奪う。予選6番手からブラッドリー・レイ(ヨシムラスズキMOTULレーシング)が2番手にジャンプアップ、野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)、渡辺一馬(Kawasaki Team GREEN)、中須賀、の順に1コーナーに進入する。

S字で中須賀が渡辺一馬をかわして4番手。デグナーで野左根、中須賀がブラッドリーをパスして2番手と3番手に浮上。MCシケインで中須賀が2番手浮上。高橋はレース1に引き続き1周目から差を広げる。

オープニングラップは高橋巧が制する。中須賀、野佐根、渡辺一馬、秋吉耕佑(au・テルル・MotoUP RT)、清成、加賀山就臣(Team KAGAYAMA)、中富伸一(HiTMAN KOSHIEN YAMAHA)、ブラッドリー・レイ、水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO. Honda)の上位10台。

レース1では高橋巧の速さについて行けなかった中須賀が同じ轍は踏まずとその背後にピタリとつける。ヘアピンではテール・トゥ・ノーズの展開となる。

しかし、その後方からとんでもない速さで追い上げてくるマシンがあった。清成である。2周目、高橋巧:2分17秒593、中須賀:2分17秒074に対して2分16秒109と約1秒も速い。

清成は4周目のS字ひとつめで中須賀をパスすると、続く逆バンクで高橋巧をもパスしてトップに立つ!清成はピレリのインターミディエイトタイヤを履いていた。西ストレートやホームストレートでは水しぶきがあがるものの、レコードラインは徐々に乾いていく。レインタイヤよりも溝が少なくスリックタイヤとレインタイヤの中間的性能を持つインターミディエイトタイヤはこのようなコンディションでは速い。高橋巧、中須賀をはじめとする上位陣はほとんどレインタイヤを装着。乾いていく路面ではレインタイヤに厳しくタイムは伸びない。

同じくインターミディエイトを履いているライダーがいた。高橋裕紀(KYB MORIWAKI MOTUL RACING)と星野知也(TONE RT SYNCEDGE4413)である。高橋はスタート直後の1コーナーで集団に飲み込まれて行き場を失い大きく順位を落としてしまう。しかし、この路面コンディションとインターミディエイトを活かして5周目には5人抜きで7番手まで順位を上げる。

プライベーターの星野もワークをはじめとする上位チームをパスしていき、6周目には高橋裕紀に続く8番手まで順位を上げる。10周目に高橋裕紀はヤマハファクトリーの野佐根をパス、星野も17周目にかわして高橋裕紀4位、星野5位でチェッカーを受けた。

乾いていく路面にレインタイヤではタイヤに熱が入りすぎて消耗が早くなる。中須賀は清成の速さについていくことはせず、タイヤマネジメントに徹する。しかし、同じレインタイヤを履く高橋巧との勝負は捨てない。4周目のスプーン進入で高橋のインをつくと2番手に浮上。2分16秒台の安定したラップタイムで2位チェッカーを受ける。高橋巧は3位でフィニッシュする。

清成は11年ぶりの優勝を無邪気に喜んだ。路面は乾くと読んだ清成、サイティングラップ後、スリックタイヤで行こうと思ったと言う。「ピレリタイヤのスタッフ、チームスタッフがインター(ミディエイト)で行け、というからみんなを信頼した」結果的にレインタイヤの上位陣より約2秒速いタイムで周回、23秒779の大差をつけて独走優勝を果たした。

その清成、来季は世界へ闘いの場を移す。ワールドスーパーバイク(WSB)へHRCのサポートを受けて参戦することが発表された。「モリワキ」とイタリアの「アルテアレーシング」が新チームを作りHRCがサポートする。事実上のワークスチームだ。ブリヂストン1強と言われている全日本ロードレースでモリワキは復帰当初からピレリタイヤを選択、周囲から「何故ピレリ?」と不思議がられていたが、WSB参戦への布石だと考えれば納得がいく。

2018年の全日本ロードレースが全て終了した。JSB1000クラスのチャンピオンは中須賀克行。昨年、17インチタイヤへの移行に苦労してチャンピオン獲得を逃した。しかしそのおかげで再度自分を見つめ直し、自分を追い込み、メンタル・フィジカルを含めて根本から鍛え直した。自分に足りない部分を補い、攻略方法をみつけた中須賀は速い。それは今シーズンのリザルトを見れば明らか。全12戦(決勝レースは11戦)中ポールポジション10回、優勝8回。圧倒的強さを誇った。

ランキング2位は高橋巧。10年ぶりのホンダワークス復活で全日本ロードレースを活気づけた。速さと強さを手に入れた高橋。王者中須賀を前になかなか勝てなかったが最終戦で中須賀を寄せ付けない速さで優勝。来季の活躍に期待したい。

ランキング3位は渡辺一馬。カワサキのエースとして2年目。走りにも自覚と覚悟が見えてきて速さも手に入れた。オートポリスで優勝するも、その後良い流れに乗れなかったがポテンシャルの高いライダー、来季の飛躍が期待できる。

清成龍一(KYB MORIWAKI MOTUL RACING)

「今シーズンは2年目でしたが、マシンのセットをひとつ良くすれば他がダメになるなど、詰め切ることができず本当に厳しいシーズンでした。もう勝てないと思っていました。最終戦はかなりわがままを言って、ライディングポジション、ハンドルバーの高さ、ステップの位置など操作性に関わる重要な部分を大きく仕様変更してもらいました。それを受け入れてくれたチームに感謝しています。ピレリタイヤのスタッフが「インターミディエイトで絶対にいける」と奨めるので信頼して履きました。ここ数年、トップ争の位置に居ないことが当然のようになってしまい、それでは絶対にいけない、と思っていただけにこの勝利はとてつもなく大きいです。チェッカーの後、子供のようにはしゃいでしまいました(笑)今シーズンの最終戦で有終の美を飾ることができたのは本当に良かったです。」

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

「サイティングラップで出ていったときはとてもスリックタイヤで走れる状態では無かったのでレインタイヤを選択しました。その選択は正解だったと思っています。オートポリスのようなミスはしたくなかったので周囲のタイヤ情報を入手してブリヂストンのハード側のタイヤを選択しました。清成選手が前に出たときに、このペースでは無理、セーブしてタイヤマネジメントしないと18周保たないと思いました。レース1では高橋巧選手にやられたけど、レース2では同じレインタイヤを履く高橋巧選手に勝てたのは良かったです。結果は2位ですが自分のやるべきことはしっかりとやったつもりなので結果には満足しています。」

高橋巧(Team HRC)

「東コースは乾いているらしい」という情報が入ったのでスリックで(サイティングラップに)出ていったら「どこが乾いているんだ」という状態だったのでレインタイヤに変更しました。レインタイヤの選択は決して間違ってはいなかった、と思っていますがひとりだけ異次元の走りの人がいて…(笑)悔しいけど素直におめでとうと言いたいです。もう少し雨が降ると思ったのですが天気ばかりは自分ではどうしようもありません。全力で走りましたがこれも現実だと真摯に受け止め、追い越せるように努力します。ホンダワークスの体制にはとても感謝しています。ずっと勝てない中でずっと支えてくださったチーム、スタッフ、ファンのみなさまにお礼を言いたいです。最後に勝てて良かったです。来年はチャンピオンを獲れるようにさらに努力したいと思います。」

全日本ロードレース最終戦「第50回MFJグランプリ スーパーバイクレースin 鈴鹿」決勝レース2上位10位の結果は以下の通り。

優勝:#23 清成龍一 KYB MORIWAKI MOTUL RACING
2位:#21 中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
3位:#1 高橋巧 Team HRC
4位:#72 高橋裕紀 KYB MORIWAKI MOTUL RACING
5位:#46 星野知也 TONE RT SYNCEDGE4413
6位:#5 野左根航汰 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
7位:#090 秋吉耕佑 au・テルル・MotoUP RT
8位:#11 渡辺一馬 Kawasaki Team GREEN
9位:#28 ブラッドリー・レイ ヨシムラスズキMOTULレーシング
10位:#20 日浦大治郎 Honda Suzuka Racing Team

photo & text :Toshiyuki KOMAI