水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)が最終戦鈴鹿で3年連続5勝目を挙げた。明日のレース2で優勝すれば3年連続で最終戦パーフェクトウィン。当然狙っていく。しかしその前に立ちはだかるのは恐らく浦本修充(AutoRace Ube Racing Team)。この週末、圧倒的な速さを見せている。昨日のART合同走行ではただ一人2分4秒台に入れる2’04.763。「レコードブレイクは難しいと思います」とは言いながらも3秒台に入れる勢いがあった。しかし、このマシンでウェットの走行経験が無い。そこが不安点だと言う。
土曜日の午前中に行われた公式予選。前夜からの雨の影響でところどころウェットパッチが残る難しいコンディション。ここで中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が信じられない光景を見せる。2’06.601をマークして一時リーダーボードのトップに立った。木曜日の大きな転倒で右肩と左足を痛めた状態でこのタイムである。さらに5秒台に入れる2’05.929で2番グリッドを獲得する。
ポールポジションは浦本。2’05.407。スプリント仕様になったファクトリースペックのBMW M1000RRはやはり速い。速さに定評のあるドゥカティを駆る水野に「ドライでは浦本選手がアタマひとつ抜け出ています」と言わしめるほどだ。
3番グリッドは水野涼:2’06.151。4番グリッドは野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing):2’06.367、5番グリッド:岩田悟(Team ATJ)2’06.582の上位5台。
決勝レースは雨予報だったが微妙なコンディション。ウェット宣言が出されたものの減算無しの14周がアナウンスされた。スタート進行時はパラパラと雨が落ちてくるが路面が濡れるほどではない。ウェットタイヤかスリックタイヤか判断が難しいところだ。しかし、ウォームアップ走行が始まる前から一気に雨が強くなり路面が濡れ始めた。グリッド上でタイヤ交換するチームも現れ慌ただしくなってきた。
ウォームアップ走行を終えた中須賀はピットに戻りレースをキャンセルした。これはチーム判断。「怪我をしている状態での出走は危険と判断したためレースをキャンセルする決断をしました」
ピットボックスに戻る映像が映っていたが自力ではマシンから降りられず抱えられながら歩いていた。かなりの痛みがあると思われる。中須賀の身体を考えたらチームの判断は正しい。
13:30、14周による決勝レース1がスタート。ホールショットは水野が奪う。浦本、長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)、岩田と続いて1コーナーに進入する。津田拓也(Team SUZUKI CN CHALLENGE)が良いスタートを決めて野左根、岩田をアウト側からパスして4番手に浮上する。
逆バンクで浦本が水野をパスしてトップ浮上、しかしデグナーひとつめで水野が抜き返し、そのままオープニングラップを制する。
「ウォームアップ走行で自分と浦本選手以外ついてこなかったので二人の一騎打ちになるなと思いました」
「このウィークで初めてのウェット。誰もラップタイムペースの基準値を知りません。だから最初は浦本選手の後ろについて様子を見ようと思ったのですが、抜かれた後にNIPPOコーナー上りで意外とすんなり追いつけたので、前に出て自分のラップタイムペースで走ろうと考えました」と水野。
一方の浦本。「自分も同じくサイティングラップで今日は水野選手と二人のバトルになるな、と思いました。スタートしてすぐにS字区間は自分のほうが速いと思ったので一度前に出て離せたら離そう、と考えましたが抜き返されてしまいました」
この2台のラップタイムが速い。水野2分19秒、浦本2分20秒台に対して、3番手以下は2分22秒台。その差が一気に開いていく。さらに水野は2’18.866のファステストを刻むと浦本との差を広げる。レース終盤、雨脚が強くなりライダーの転倒により赤旗終了。2023年、2024年最終戦鈴鹿優勝に引き続き3年連続で優勝を飾った。
「今日は天候に救われました」と謙遜するが、ウェットでも自信を持って臨めた。前戦岡山でドゥカティファクトリーのエンジニアが来日して電気系と抱えている課題を詰めてもらい復調した。「それがあるからサーキットが変わっても、急に雨になってもアドバンテージを持てたと思っています。」
「但、序盤の雨足が弱い時と後半のヘビーウェットになった時でフィーリングが違いました。明日はヘビーウェットになると思うのでその準備をしっかりとしたいと思います」
2位は浦本。ドライでレースをしたかった、と悔しがる。
「ウェットは走ったことがなかったので不安しかありませんでしたが、サイティングラップで出た時に意外と接地感を感じたのでいけるかもしれない、とは思いました。ですが、それ以上に水野選手が速かったので自分が前に出たとしても抜かれていたと思います。」
「これが10位とか12位でボコボコにされたのでしたらそれどころでは無いと思いますが、なまじ優勝争いができるほど戦えたので悔しさが大きいです。今日見えた課題を明日の朝フリーで試してレース2に備えたいと思います。
表彰台争いが目まぐるしかった。序盤は岩田を先頭に津田、長島が順位を入れ替えながら周回を重ねる。5周目以降岩田が順位を下げ、再び津田と長島がバトルを展開する。そこに日浦大治朗が加わり3台のパックになる。その後方では岩田、野左根、渥美心(YOSHIMURA SERT Motul)のサードグループを形成する。
セカンドグループから津田がアタマひとつ抜け出し、日浦が長島のすぐ後ろにつけてきた8周目のシケインで長島がオーバーラン、日浦が4番手に順位を上げる。この頃から雨脚が強くなりウォータースクリーンが大きくなってきた。
日浦がペースを上げて津田に迫る。12周目のS字で序盤から表彰台争いを展開していた長島が転倒、戦線離脱する。さらに雨脚が強くなり白く視界も悪くなってきた矢先、3番手を走行していた津田が逆バンクで転倒、さらにヘアピンで中富伸一も転倒を喫し、ここで赤旗が掲示される。12周終了時点での順位となるのだが、津田は赤旗掲示後5分以内にピットへ戻ってこられなかったので日浦が3位表彰台を獲得した。
「今週サスのセットを大きく変えてドライでは良いフィーリングでした。ウェットではぶっつけ本番だったのですが走り出しから同じようなフィーリングで走れたのが大きいと思っています。但、津田選手についていくことはできても追い抜くほどのペースは持っていませんでした」
「無理して表彰台を狙って焦ったりせず、きちんとウェットのデータを持ち帰り明日のレース2に繋げることを考えていたのが良かったのかもしれません。だからあの位置を走れていて結果的に表彰台に乗ることができました」
全日本ロードレース第7戦 第57回 MFJグランプリ スーパーバイクレース in 鈴鹿 決勝レース1上位10位は以下の通り
1位:#3水野 涼 DUCATI Team KAGAYAMA
2位:#31浦本 修充 AutoRace Ube Racing Team
3位:#14日浦 大治朗 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
4位:#16渥美 心 YOSHIMURA SERT Motul
5位:#4野左根 航汰 Astemo Pro Honda SI Racing
6位:#8岩田 悟 Team ATJ
7位:#46阿部 恵斗 SDG Team HARC-PRO. Honda
8位:#11関口 太郎 SANMEI Team TARO PLUSONE
9位:#9伊藤 和輝 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
10位:#32中村 竜也 KRP SANYOUKOUGYO RSITOH
Photo & text: Toshiyuki KOMAI





































