雨に翻弄された鈴鹿8耐。Honda HRC 5連覇達成、ヤマハワークス2位、BMWが3位表彰台。鈴鹿8耐初のSCチェッカー

2026/07/11

やはりホンダワークスは強かった。Honda HRC が鈴鹿8耐5連覇を達成した。顔馴染みと言っても良い現役MotoGPライダーのヨハン・ザルコが欠場、ジョナサン・レイにスイッチ。さらにソムキアット・チャントラが急遽決定とライダー構成では2年連続でバタバタ感があったが、蓋を開けてみれば高橋とジョナサン・レイの2人で走り切った。雨により波乱のレースとなったが最後は鈴鹿8耐初のSCチェッカーで幕を閉じた。

天気予報通り決勝日は朝から雨。水曜日の事前テストもウェットであったが、8:30からのウォームアップ走行は決勝に向けた大事な走行となる。序盤はさほど強くなかったが中盤以降本降りとなりヘビーウェットとなる。ウェットを得意とするチームにとっては上位に食い込めるチャンスとも言える。だが、Honda HRCは速かった。ジョナサン・レイが2:20.189のトップタイム。#0 Team SUZUKI CN CHALLENGEが8番手、#76 AutoRace Ube Racing Teamが5番手に上がってきた。Team SUZUKI CN CHALLENGEのウェットタイヤは他のチームと同じ。ここに一矢を報いるチャンスとなる。

11:30、8時間後のチェッカーを目指してスタートが切られる。スタート時は曇り、路面はウェットだがそのまま降雨が無ければ乾いていきそうなコンディション。

ホールショットは#12 グレッグ・ブラック(Yoshimura SERT Motul)が奪う、#30 高橋巧(Honda HRC)#21 ジャック・ミラー(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)#76浦本修充(AutoRace Ube Racing Team)、#17野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)と続く。予選2番手の#37 マイケル・ファン・デル・マーク(BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM)はエンジンがかからず大きく出遅れる。

#76浦本がデグナー一つ目でトップに立つとそのままオープニングラップを制する。以下、#30高橋、#17野左根、#21ジャック・ミラー(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)、#1マービン・フリッツ(YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team)のトップ5。

トップ浦本は4周目に2分17秒台に入れる。高橋は18秒台、他の上位陣は19秒から20秒台、高橋との差は2.2秒、3番手には8秒3もの差をつける。3番手グループは#21ジャック・ミラー、#17野左根、#1マービン・フリッツによる三つ巴バトルだったが、#21 ジャックが遅れ出す。そこに10番手まで遅れていた#37マイケル・ファン・デル・マークが追い上げてきて#21 ジャックをパス、4番手に浮上する。さらにペースを上げ、12周目の最終シケインで#17 野左根をパスして3番手まで浮上する。

ここで#828TEAM FRONTIERのマシンから白煙、2コーナーからヘアピンまで進んでしまい東コースにオイルを巻いた。それに乗ってしまったのが予選3番グリッドを獲得した#99Elf Marc VDS Racing Team/KM99のフロリアン・マリノ。S字で転倒、レコードライン上で逆向きに転倒、ヒヤリとしたがコース外に逃れた。ハンドルが折れていた。

11周目のS字コーナー、後ろから様子を伺っていた#30 高橋が#76 浦本をパスしてトップに浮上する。

13周目の130Rで#4 Tati Team AVA6 Racingのマシンが白煙を上げ、大量のオイルをコースに撒き散らす。その餌食となったのが#17 野左根。130Rで転倒、ピットに戻ってきた途端に怒りをあらわにした。

その他にも転倒が相次ぎ今年1回目のセーフティ・カー(SC)投入となる。SC走行の間に1時間が経過。オイル処理のため時間がかかり34分間・9周のSC走行後12:38 リスタートが切られる。

そろそろ1回目のピットインが始まる。最初にピットインしたのは#5 F.C.C. TSR Honda France。27周目にジョン・マクフィーにライダーチェンジ。続いて#0 Team SUZUKI CN CHALLENGEは水野涼に、#71 Team SAKURAI HONDAは日浦大治朗にライダーチェンジ。

トップ争いを展開していた#76 AutoRace Ube Racing Teamは28周目にシルバン・ギュントーリにライダーチェンジ。#30 Honda HRCは“あと何周でピットインしなさい”というサインではなく「STAY TO END」の文字が掲示される。ピットインのタイミングはライダーの判断に任せ、ガソリンのエンプティサインが掲示されるまでピットインを引き延ばすことが考えられる。

しかもこの間に自己ベストタイムを更新してペースアップ、後続とのマージンを築く。ここが高橋の強さ。スティント終盤にもかかわらずベストタイムをマークした。

31周目に#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM、32周目に#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがピットイン、高橋は33周目まで引っ張り1時間半も走行した。

13:05 S字コーナーで#3 SANMEI Team TARO PLUSONE with SDGが転倒、マシン回収のため2回目のSCが投入される。一時は路面が乾くかと思われたが12:30くらいから再び雨が落ち始め、2回目のSCの頃には大粒の雨、路面コンディション悪化による危険回避のためSC走行が続く。結局1回目よりも長い39分間、10周のSC走行となった。

13:44、リスタートが切られる。

リスタート後#30 ジョナサン・レイは快調にラップ。2番手に10秒近いマージンを築いている。セカンドグループは#21アンドレア・ロカテッリ、#37マーカス・ライターバーガー、#1カレル・ハニカ、#76シルバン・ギュントーリが続く。51周目に#76 ギュントーリが#1 ハニカをパス、4番手に浮上、さらに58周目に前を行く#37 ライターバーガーを抜き去り3番手に浮上する。1回目のピットインの際に6番手まで順位を下げたがここまで戻してきた。

2回目のライダーチェンジを迎える時間帯。59周目にピットインした#0 水野はライダーチェンジせずにダブルスティント。このヘビーレインの状況ではエティエンヌ・マッソンよりも鈴鹿をよく知る水野に走らせるのが得策と考えてのこと。#76AutoRace Ube Racing Teamは61周目に浦本にライダーチェンジ、62周目に#21ヤマハファクトリーは中須賀克行にライダーチェンジ。

#30Honda HRCは66周目にジョナサン・レイから高橋巧にライダーチェンジ。33周走行した。同じく66周目に#37 BMW MOTORRADスティーブン・オデンダールにライダーチェンジ、#12 YOSHIMURAはライダーチェンジせずにダン・リンフットがダブルスティントを敢行。しかしそのヨシムラにライダーチェンジの際のレギュレーション違反で10秒ストップペナルティが科される。これでヨシムラは8番手にドロップダウン。

3時間経過時の順位は、トップ#30 Honda HRC、その47秒後方に#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、#12 YOSHIMURA SERT Motul、#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM、#76 AutoRace Ube Racing Teamのトップ5。トップから5番手のAutoRace Ube Racing Teamまでは1分25秒差。

このスティントで#76 浦本が速かった。TOPを走る#30高橋が2:17.651に対して2:16.526と約1秒速いラップタイムで走行。71周目には3番手を走る#21中須賀の0.084秒差にまで詰めると72周目のヘアピンでパッシング、2番手に浮上する。 さらにトップ#30高橋を抜かんとばかりの勢いで攻める。80周目の#30高橋との差が18.875秒であったが86周目には11.787秒差と約7秒も詰める。だが猛追もここまで、89周目にギュントーリにライダーチェンジする。

レース折り返しを迎える4時間経過、上位陣が3回目のピットイン後の順位。トップは相変わらず#30 Honda HRC。2番手#76 AutoRace Ube Racing Team、3番手#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM、4番手YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team、5番手#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMのトップ5。約20秒ずつの等間隔で走行している。

このスティントは#21 ジャック・ミラーが速い。94周目に2:16.147と16 秒台に入れるとその後も連発、102周目に2:16.034のファステストラップを刻むとそれまで22秒近くあった#76 ギュントーリとの差を3.1秒まで縮めてくる。そしてついに105周目のスプーンカーブで#76 ギュントーリを仕留めると2番手に浮上した。

その後はピットインのタイミングで順位が入れ替わることがあってもトップ#30 Honda HRC、2番手#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM、3番手#76 AutoRace Ube Racing Team、4番手#1 YART YAMAHA EWC OFFICIAL TEAM、5番手#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMは変わらずこう着状態が続く。

残り2時間、予想されていた雨は降らず東コースでは路面が次第に乾いてくる。ピットインのタイミングでドライタイヤを用意するチームも出てくる。142周目、#21 YAMAHA FACTORYがジャック・ミラーにライダーチェンジ、タイヤはウェット。145周目に#30 Honda HRCはジョナサン・レイにライダーチェンジ。タイヤはウェット。同じく145周目#76 AutoRace Ube Racing Teamもピットイン、ウェットタイヤでギュントーリへライダーチェンジ。

ここで再び#21 ジャック・ミラーが2分17秒台のラップタイムでプッシュ。30秒以上あったトップとの差を17秒にまで縮めてきた。だが#30 ジョナサン・レイは慌てることなく17秒台にギアを一段上げる。その後方では表彰台争いが激しくなってきた。4番手#37マイケル・ファン・デル・マークが#76ギュントーリを猛プッシュ。165周目には4.4秒差にまで詰めてくる。166周目には0.096秒差にまで迫り167周目に2番手に浮上する。

もしかしたらドライタイヤの出番もあるか?と思われた矢先の18:20過ぎから雨脚が強くなり西コースから路面が濡れていく。

いよいよ残り1時間を切った。表彰台を目指す#76 AutoRace Ube Racing Teamは浦本にライダーチェンジ。BMWワークスの#37はライダーチェンジせずマイケル・ファン・デル・マークはダブルスティントを敢行。表彰台圏内死守を狙う。

18:40、さらに雨脚が強くなり路面は完全にウェットとなる。TOPを快走する#30 Honda HRCは高橋巧がラストスティントを走行。

18:42、ここで衝撃的なアナウンスが画面に表示される。#76に10秒ピットストップペナルティ。ピット作業違反とのこと。18:50、浦本がペナルティ消化でピットイン。これで#1 YARTが前に出て#76 浦本は5番手にドロップダウン。表彰台獲得の希望が断たれた。

最後に波乱が訪れる。#21アンドレア・ロカテッリは#30 高橋よりも2秒ほど速いラップタイムで走行、トップとの差を15秒差にまで詰めてきた。その矢先、逆バンクで転倒したマシン回収のためSC投入された。残り34分。ここでヤマハのピットは湧き立つ。SC投入で15秒の差はリセットされSC明けに勝負をかけられる、と。

しかし、SCは#30と#21との差:約20秒の間に入ってしまった。これで万事休す。その差は1分23秒にも開いてしまった。SC明けのタイミングに注目が集まったが、雨脚は弱まらずここでリスタートすれば危険が伴うとの判断でSC走行が続き、そのままチェッカーとなった。長い鈴鹿8耐の歴史の中でSCのままチェッカーは史上初である。

これでHonda HRCは5年連続優勝。高橋巧も個人の鈴鹿8耐優勝記録を8回に延した。昨年の鈴鹿8耐後「2人体制は絶対に嫌です」と言っていた高橋だったが今年も2人体制で勝ち切った。例年より一ヶ月早い開催、雨のため気温が上がらなかったことが要因だと思われるが、やはりHonda HRCは速い。

燃費の良さと速さを兼ね備えたマシンにミスのないピット作業の早さ。盤石なワーク体制がなせる技と言えよう。高橋巧の安定した速さ・巧みなレース展開の読み、現役時代を彷彿させるジョナサン・レイの速さ、

2位はYAMAHA FACTORY RACING TEAM。「鈴鹿8耐の借りは鈴鹿8耐でしか返せない」と語っていた中須賀克行だが、今年も悔しい2位。だがその差は明らかに縮まっていると思う。昨年、課題のひとつであったピット作業。今年はトータル4分28秒。(6回ピット)平均ピットタイムは42秒753(Racing Heroes手元集計)昨年の平均46秒より約2秒縮めている。

最後はSCでチェッカーとなってしまったがその差を15秒程度にまで縮めていた。往年のHY戦争が見られる日も近いと期待する。

3位はBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM。外国車の鈴鹿8耐表彰台は史上初である。雨・SC投入と荒れた展開の中でもマイケル・ファン・デル・マーク、マルクス・ライターベルガー、スティーブン・オデンダールの世界耐久のプロフェッショナルの3人が安定してラップを刻んだことが大きいだろう。ピットストップ作業も早かった。平均ピットタイムは42秒999(Racing Heroes手元集計)

4位はYAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team。昨年EWCチャンピオンを獲得してゼッケン1を付けて凱旋。昨年の鈴鹿8耐は不運にも見舞われたが今年はトラブルもなく安定して走行した。チャンピオンシップでもランキング1位で鈴鹿に乗り込んできたYARTは荒れた天候の中で無理してトップを狙うより確実にポイントを取る方向にシフト。

これが功を奏して4位入賞、シリーズランキングトップを維持。2番手のBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMに19ポイント差をつけている。

5位はAutoRace Ube Racing Team。レースウィークに入りハンネス・スーマーが右肩剥離骨折の転倒により欠場。急遽クリスチャン・ポンソンを呼び寄せて参戦した。結果的には浦本修充とシルバン・ギュントーリの2名体制で走り切った。

常にトップ5前後を走行する安定した走りで、後半から終盤にかけて表彰台は間違いないと思われた。しかし、10秒のピットストップペナルティによりその道が閉ざされたのは残念だ。

昨年の全日本ロードレースでは参戦したレース全て表彰台獲得という圧倒的な速さを魅せた浦本修充とBMW。その速さがドイツ本国で認められ、今シーズンは日本初のBMW Motorrad Motorsport 公式チームとしてFIM EWCにフル参戦している。ここまでは不運も重なりランキング5位。9月の最終戦ボルドール24時間に期待したい。

危険な暑さの中で開催されていた鈴鹿8耐を今年は一か月前倒しして開催した。だが7月上旬は梅雨の真っ只中。確かに気温は低かったが雨に翻弄されるレースとなった。高橋も記者会見で「この時期の開催で良いのか」と疑問を呈した。観客動員的には昨年対比2,500人減の59,000人。EWCオーガナイザーは総合的に判断して来年の開催時期を決めるとのこと。

酷暑か雨か、、判断が難しいところだ。

“コカ・コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会 決勝レース上位10チームは以下の通り

優勝:#30 Honda HRC
2位:#21 YAMAHA RACING TEAM
3位:#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM
4位:#1 YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team
5位:#76 AutoRace Ube Racing Team
6位:#12 YOSHIMURA SERT Motul
7位:#0 Team SUZUKI CN CHALLENGE
8位:#73 SDG Team HARC-PRO. Honda
9位:#88 Honda Asia-Dream Racing with Astemo
10位:#40 TeamATJ with docomo Business

text:Toshiyuki KOMAI
photo:水谷たかひと