岡崎静夏の新たなる挑戦② わずかな迷いが結果に出た第2戦

2022/06/19

岡崎静夏の新たなる挑戦② わずかな迷いが結果に出た第2戦

手島雄介率いる『日本郵便Honda Dream TP』から参戦する岡崎静夏の新たなる挑戦。大きなチームに所属し、個人で戦ってきた時とは違う環境で自己研鑽に励む。開幕戦ではセッティングを詰めきれず結果を残せなかった。舞台を東北のスポーツランドSUGOに移して第2戦に臨んだ。

雨のART走行で良い感触を掴んだ

レースウィーク金曜日に行われたART合同走行は雨。雨の走行が課題だった岡崎。「ここ数年、雨が課題でウェットコンディションになるとどうにも走れない、という状態でした」しかしこの日は好タイムをマークする。1本目の1分57秒から2本目は1分54秒772と3秒タイムアップを果たす。トップからも3秒落ちだ。「全く違うセットで走ってみて、今までに経験したことのない良い感触を掴めました。」雨の走行で好感触を得た岡崎。だが、この好感触が後の判断に迷いを与えた。

ドライの予選で沈む

翌日の公式予選は雨から一転、朝からの好天となった。当然予選はドライ。予選の序盤、トップ10に食い込むタイムをマークした。これは!と期待したがこの後タイムは伸びない。「ドライのセッティングの方向が違ったようです。ブレーキングは前回(もてぎ)よりはかけられる。リアの感触も良いのですがフロントの旋回性が決まりませんでした」。予選結果は19位。とても納得のいく順位ではない。

雨の好感触に引きずられて判断を誤った

SUGOラウンド前週の事前テスト、ドライで良いタイムをマークした。ウィークに入ったら、さらに少し違うことを試したいと岡崎は考えていた。だが初日は雨。確かめることができなかった。しかし、今まで課題だった雨ですごく良い接地感を得た。その良いフィーリングの延長戦上でドライのセッティングを詰めた。しかし予選ではうまく機能しなかった。

「予選の段階で“これでは足りない”と、ドライのアタマに切り替えて事前テストの状態に戻す決断が持てたら良かったのですが、その勇気がなかった。チームに対して”元に戻して”とは言えませんでした」「ウェットで得たあの良いフィーリングに引きずられて“このまま詰めれば今までにないドライセットができるかも”と捨てきれませんでした。それは自分の判断ミスです」と悔やむ。

決勝レースは予選のセットをベースにアジャストして臨んだ。オープニングラップでは14番手、10周目には12番手まで順位を上げるが、フロントの旋回性に加えて岡崎がやりたい“深いブレーキング”ができず徐々に順位を下げていく。

加えて冷静さを欠いた。馬の背のブレーキングで突っ込み過ぎてオーバーラン、グリーンまではみ出しこそしなかったがそこで2台に抜かれる。「スリップもあるから仕方ないのですが、“もう抜かれたくない、もう邪魔しないで、私は私のペースで走りたいの”と思って、ちょっと行き過ぎてしまいました」。 結局17位でチェッカーを受けた。

ライダー自身のコントロールも必要

レース後「当たり前ですけど、バイクとライダー、二つが揃って初めて闘える。セッティングが出ればちゃんとしたブレーキができる、それはわかっていました。でも、(そのセットが)出ない時に“じゃぁライダーはどう走る?”ができなかった。もうどうにもできないっていうのはライダーのキャパの無さ、技術が足りていない、ということ。もっとライダーにできることがあれば、上の方で戦えたと思います」と語った。レース中に熱くなって冷静さを欠いたことも反省点だという。あれがなければ2台に抜かれなかった。

今回のレースを澁田に聞いてみた。「事前テストの調子が良くてウィークに入ってからさらに詰めようと考えていたようなのですが初日が雨でした。雨のフィーリングが今まで以上に良く、チームのエンジニアからも“それを活かしてやってみよう”とテストとは違う方向で進めることになったのが、今回違う方向に行ってしまったかな、と思います。自分がST600が忙しくて静夏やチームスタッフのコメントを十分に汲み取ることができない間にセッティングが進んでしまった点については申し訳なかったと反省しています。」「決勝もポジティブなコメントも聞けましたが本人がやりたい強いブレーキングがかけられない状態でした。事前テストとは違った方向で進んだが故に想定される入力をカバーするには限界がありました」

「メカニックに対してもっとキチンと伝えられるようにしたいと思います。みんな本当に一生懸命いろんな選択肢を提案してくださいます。乗っているライダーが一番わかるはずなのに、どれが良いんだろう、、と悩んでしまう。しっかりと自分で判断できるようにならないといけないと思います。せっかくチームに属しているのだからみんなからの提案を無駄にしないこと、を心掛けていきたいと思います」

悔しい結果となったSUGOラウンド。チームとの絆は強まってきているように見える。チームで戦うことのメリットを最大限に活かして岡崎の次戦に期待したい。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI