完全優勝を果たした津田拓也選手の成長

2015/04/21

AI2Q7339約1年半ぶりの優勝、歓欣鼓舞かと思いきや・・

全日本ロードレース2015シリーズの開幕戦が鈴鹿サーキットで開催され、ヨシムラ スズキ シェルアドバンスの津田拓也選手のポール・トゥ・ウィンで締めくくった。津田選手の優勝は2013年6月の筑波以来約1年半ぶり。喜びもひとしおかと思いきや「まだ実感が沸いていません」と本人は意外とあっさりとしていた。津田選手がメンタル面でも強くなったと感じた開幕戦であった。

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新生・ヨシムラ

2014年シーズン終了後、加藤陽平監督、メカニック、ライダーを集めてミーティングを行い、吉村不二雄社長を中心に細部を見直して新しい体制でスタートを切った2015年。マシンの基本的な性能向上(エンジンパワー、車体の軽量化、重心位置の改良など)を行ない、そして、スズキから辻本聡さんをアドバイザーとして招き入れた。

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 辻本聡さんの存在はものすごく大きい

「辻本さんの存在がものすごく大きい」津田選手、加藤監督、共に絶大なる信頼を寄せている。「ライダーはコースへ出たら走ることしかできません。しかし辻本さんは自分がコースに出ている間も「拓也がこう言ったらどうする?」「次はこうしよう」とチームへ提案をしてくれる。自分の持っている力を引き出してくれてとても心強い」と津田選手は言う。「ライダーの気持ちが分かる辻本さんだからこその精度の高い情報をチームに戻してくれる」と加藤監督。

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「ポール“だけ”を狙ってはいませんでした」

津田選手は2分6秒103のコースレコードを塗り替えるタイムで堂々のポールポジションを獲得した。「ポール“だけ”を狙ってはいませんでした」と津田選手。もちろんレーシングライダーだからコースに出ればイチバンを狙う。しかし“それだけ”を意識すると、(マシンの)隠れた状態まで把握できず決勝レースに出てくる可能性もある。だから「闇雲に走るのではなく考えながら走ることを目標にした」と言う。「悪いモノを良くするためのトライではなく、良いモノを更に良くするためのトライ」をした結果がコースレコードを超えるタイムなのだからマシンの仕上がりが良く、且つ、津田選手の調子も良いのだろう。

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「独走で優勝?!嘘でしょ?」辻本聡さんの奇策(?)

迎えた決勝レース、終わってみれば2位に2.3秒ものアドバンテージを築く圧勝。しかし本人は「はっ?!独走なんて嘘でしょ?」と接戦を制したと思っていたらしい。
実は、2位との差が1秒以上離れていてもサインボードは「(後続との差は)0.3秒」と出されていたそうである。津田選手は「嘘やろ?けっこう離したつもりだけどまだそんな差かい?」と常にピタリと背後に付けられていたレースだと思っていたそうである。
そこには辻本さんの作戦があった。「ここで1秒以上の差が開いていることを知ると気が緩むかもしれない」だから「コンマ1、コンマ2、最大でもコンマ7やな」とサインボードを出す事にした。津田選手はその話を聞いて「ありがたかった。確かに最後まで集中力を切らせずに走り切れました」とコメント。

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 昨年までとは違うレース展開で勝てた

昨年までは「予選は速いけど決勝レースは勝てない」というイメージが強かった。本人も自覚していた。しかし今回は違った。「(2分)7秒前半をイメージしていた。もしもついてこられたらラスト5周くらいで6秒台に入れて逃げようと考えていた」そうである。レース中も背後から迫ってきているけど焦ることもなく冷静に判断、集中力を切らすことなく優勝。加藤監督は「一発の速さだけではなく決勝中の速さ」もみて指導してきた。それが2015年シーズンの開幕戦で現れたことは大きい、と津田選手の今後に期待している。

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 メンタル面が強くなった津田選手

レース後、あまり疲れていなかったそうである。オフシーズン、辻本さんにメニューを相談したながらかなり追い込んでトレーニングをしてきた。体力的な面でも向上しているが、それよりも津田選手のメンタル面がかなり強くなってきた、と感じた開幕戦であった。

photo & text : koma

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