2022全日本ロード開幕戦もてぎ 決勝レース2

2022/04/07

開幕戦レース2。中須賀克行が開幕2連勝!強い。 しかし今日の主役はルーキー岡本裕生だった。

開幕戦のレース2はスタート直前の雨で流れが変わった。難しいコンディションの中、中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)はキッチリと走り切り2連勝を飾る。岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)はルーキーながら一時トップに立ちレースを引っ張る。3位には渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)。場内を沸かせたのは岡本のアグレッシブな走りだった。

サイティングラップの最中に雨が落ちてきたため赤旗中断。約20分遅れの14:30にスタートした。周回数は2周減算の21周。ホールショットは中須賀が奪う。濱原颯道(Honda Dream RT桜井ホンダ)が2番手、渡辺3番手で1コーナーに進入する。3コーナー進入で渡辺が濱原をパス、4コーナーでは濱原の背後に作本輝介(Astemo Honda Dream SI Racing)亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)が迫る。5コーナー進入で作本がインから濱原を、岡本がコンパクトなラインから亀井をパスして順位を上げる。

S字の進入で濱原が作本を抜き返して3番手浮上、岡本はV字進入で亀井をオーバーテイクするとヘアピンの進入ではズバッと切れ込み作本をパス、4番手に浮上する。オープニングラップから各所でパッシングが見られ、見応えのあるこの後の展開を予想させる。

90度コーナーで中須賀がやや膨らむ。その間に渡辺、濱原が前に出て渡辺がオープニングラップを制する。濱原、中須賀、岡本、作本、亀井、星野知也(TONE RT SYNCEDGE4413 BMW)、岩田悟(Team ATJ)、中富伸一(WaveinnR)、武田雄一(OGURA CLUTCH ORC with RIDE IN)の上位10台。

2週目のV字コーナー、濱原が渡辺のインに飛び込みトップを奪う。岡本はヘアピン進入で中須賀をかわして3番手に浮上、さらに90度コーナーで渡辺に襲いかかるが渡辺が押さえる。勢いのある岡本は1コーナー進入でもう一度渡辺のインを突き2番手に浮上する。

濱原、岡本の若手ライダーが中須賀、渡辺を従えて走行すると言う近年見られなかった光景が映しだされる。トップ濱原を追う岡本、3周目に0.967秒あった差が4週目には0.311秒にまで詰めてきた。そして5週目のV字立ち上がりで一気に抜き去り、ルーキーが初戦でトップに立った!

レインタイヤを履いたものの、想定より雨量が少なくタイヤライフを気にしていた中須賀。途中で雨量が増えた時のことも考えて前半はセーブして走行を重ねる。また、このコンディション下でマシンをマネジメントしなくてはならいこともあったため考えることが多く集中するのに苦労したという。序盤は4番手を走行するも、6周目には岡本の後ろ2番手を走行、タイヤ、マシンのマネジメントを図りながらの走行を重ねる。

体格の差で他のライダーよりタイヤに熱を入れやすい濱原は昨日のような温度の低いコンディションやウェットではアドバンテージがあると言う。加えて今シーズンはレースへの向き合い方を変えた。「何をすれば勝利に近づけるのかなと思ったら、行ける時にプッシュする」と考えて1周目から攻めた。マシンもレース1からセットを変えた。「気温や路温がさらに低くなったら、後半に雨が降ってきたら、その時に勝負できるように変更しました」

序盤は中須賀と渡辺が2分4秒台のラップに対して3秒台で周回、3周にわたりトップを走行した。安定してポイントを獲るよりは“勝ち”を意識してプッシュできるところは攻める、そんな濱原の走りを魅せてくれた。タイヤ選択から中盤から後半に厳しくなりペースが上がらなくなってきたが、後半に2分3 秒021のベストラップを刻み意地を見せた。

ドライでのセットアップは上手く機能して中須賀に迫る走りを見せた渡辺だったが、レース2では苦しんだ。EWCでチャンピオンを獲得したマシンではあるが先行開発部分もあり若干の仕様変更をしている。そのマシンでは雨の走行をしたことがなく「純粋にデータ不足がそのまま露呈した」と言う。「こういうコンディションの中で、安定した性能が発揮できなかったことはEWCを考えても課題です。そう言う意味では今後の開発にとってプラスのレースとなりました」

トップを走る岡本。追う中須賀。2人のタイム差はほとんどない。だが12周目の2コーナー立ち上がりで岡本がやや膨らみゼブラに乗り上げ大きくマシンを振られる。それを見逃すはずがなく中須賀がトップを奪う。岡本はここまで8周に渡りトップを走ってきた。

いつもならここから中須賀が2位以下を引き離すのだが今回は違った。岡本が離れない。中須賀よりもコンマ3秒からコンマ1秒速いタイムで周回する。13周目に0.820秒離れていたが15周目には0.425秒、17周目には0.193秒差とテール・トゥ・ノーズの状態が続く。これには場内から歓声が沸く。19周目に1分59秒496のファステストラップは岡本がマークした。20周目の5コーナーで中須賀のテールにピタリとつけるとS字進入で王者をパス!しかしクロスラインから抜き返される。

超接近戦のトップ争いはわずか0.14秒差でファイナルラップを迎える。中須賀は最後の最後に59秒台にまでペースアップ、これに岡本はついていけず中須賀が開幕2連勝を飾る。岡本はわずか0.550秒差で2位表彰台を獲得。3位に渡辺、トップとは30秒離れての悔しいゴールであった。

4位には亀井。レース1の後、かなり大きくマシンを振った。それが当たって朝フリーで好感触を得た。「ドライでレースをしたかったです」「新しい仕様のマシンで雨のデータがなく、エンジンブレーキの設定もなかったのでギクシャクして前半合わせきれなくて離れてしまいました」と悔しがる。だがホンダ最上位と聞いて少しホッとしたようである。

雨に翻弄されたレース2、ルーキー岡本の走りは多くのお客様に強烈な印象を植え付けた。主役は間違いなく岡本であった。「レース1の後半の走らせ方と今日のウェットの走らせ方が似ていて昨日の経験が今日に活かせた」と言う。ドライでは低温とブリヂストンタイヤ特有の「潰して曲がる」に苦労していたが、ウェットタイヤの剛性がマッチした。

本人は謙虚に「雨に救われた」とコメントしているが、「同じマシンなのに加速の乗せ方、アクセルの開け方が上手、自分もいい勉強になった」とあの中須賀に言わしめた。このレース結果は岡本の自信に繋がり今後の走りに生きてくるだろう。

優勝:中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)記者会見

「マシンをマネジメントしながら考えることが多く集中するのが困難な状況でした。岡本君は前に出ても良いペースで走っていて追いつくのが大変でした。抜いてからは自分の走りに集中して自分の武器を活かして勝てたのは良かったと思います。

自分は雨量に応じてタイヤを保たせるためにマージンを取りながらの走行でしたが、岡本君は“タイヤマネジメントしているのか?”ってくらい最初からプッシュしていました。加速の乗せ方、スピンをさせずにアクセルの開け方など同じマシンでそんな乗り方ができるのだから自分も取り入れて武器にしようと思います。今日の岡本君の走りはとても良かったと思います。」

2位:岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)記者会見

「このウィークは寒さに翻弄され、日曜日は暖かいと聞いて期待したのですが雨マークがついてがっかりしました。JSBで雨の走行は一度もなかったので自信はなかったのですが、サイティングラップを走ってみて“思ったよりいけるかも”と思いました。自分はドライではこんな走りができないのでせめて雨の時はいける時に行かないと、と思い常に集中して走りました。中須賀さんの後ろについて得ることがたくさんありました。自分に足りないところ、特にブレーキングが明確にわかりました。本当に勉強になりました。

ドライで表彰台に登りたいのですが自分はまだドライではそのレベルに達していないので今回は天候に助けられました。ですがレースする以上、ドライで表彰台、優勝を目指したいと思います。」

3位:渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)記者会見

「レースができなかったな、と言うのが正直な感想です。マシン的にスタートして数周のウォームアップの良さから前に出ることができたのですが、徐々にペースを上げてきたときにバランス的に違う部分が出てしまい、前との差が開いてしまいました。ついていくために試行錯誤したのですがうまくいかず、雨のデータ不足と今持っているネガティブな部分が出てしまいました。ですがこのコンディションだからこそ見えたバイクの課題が見つかり今後につながると思います。

非常に悔しいです。ですがこの悔しさを含めて“レースってこんなだったなぁ”って思っています。それくらい久しぶりのレースでした。この先マシンを良くして、自分も技術を上げて戦っていけるようにしっかりと準備をしたいと思います。」

全日本ロードレース開幕戦 もてぎ 決勝レース2上位10位は以下の通り。

優勝:中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2:岡本裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
3:渡辺一樹 YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN
4:亀井雄大 Honda Suzuka Racing Team
5:濱原颯道 Honda Dream RT桜井ホンダ
6:岩田悟 Team ATJ
7:星野知也 TONE RT SYNCEDGE4413 BMW
8:中富伸一 WaveinnR
9:柳川明 KRP SANYOUKOUGYO RSITOH
10:関口太郎 SANMEI Team TARO PLUSONE

Photo & text:Toshiyuki KOMAI