ベールを脱いだヤマハファクトリー!ライダーと白赤カラーリングを初披露

2025/07/05

7月3日〜4日鈴鹿サーキットでYAMAHA RACING TEAMのプライベートテストが開催された。今年創立70周年を迎えるヤマハ発動機は6年ぶりに鈴鹿8耐でファクトリー体制を復活させる。

復活に際し、1964年のロードレース世界選手権で使用してヤマハのシンボルカラーとなっている白と赤のカラーリングのマシンを採用、このテストで初披露した。このデザインは1999年にYAMAHA FACTORY RACING TEAMの吉川和多留監督が全日本チャンピオンを獲得した「YZF-R7」をベースとしている。

注目のライダーはエースの中須賀克行に加え、現役MotoGPライダーのジャック・ミラー(Prima Pramac Yamaha MotoGP)、そしてワールドスーパーバイクに参戦しているアンドレア・ロカテッリ(Pata Maxus Yamaha WorldSBK Official Team)が発表され、テストに参加した。

今回のテストは午前中2時間、午後2時間と一回の走行時間が長くたっぷりと走れる。初日のセッション1は鈴鹿を初めて走るロカッテリを中須賀が引っ張る形でスタート。8年ぶりの鈴鹿8耐のジャック・ミラー(2017年ハルクプロから参戦)も感触を確かめながらの走行。セッション1は中須賀が6秒台に入れる2’06.938で終える。

午後のセッション2。ジャックもロカテッリも徐々にタイムを上げてくるも、走らせ方の違いが露呈する。海外のレースで戦う2人はコーナリング時にさらにブレーキをかけてより強く曲がろうとする。それがフロントタイヤへの負荷となり摩耗が早くなる。特にジャックはMotoGPでJSB仕様のR1とはパワーが違うM1を走らせているので現象が顕著だ。耐久レースではタイヤにも優しい走りをしないと1スティント保たない。その点中須賀はそこを十分心得ておりタイヤの表面が綺麗に荒れる走り方をする。その中須賀がセッション2で転倒。本番に備え大事を取って2日目の走行をキャンセルした。

2日目はジャックとロカテッリが走行。午前中のセッション3ではロングを行った。路面温度が61度に達する鈴鹿8耐本番と同じようなコンディションの中、ロカテッリは2分6秒台に入れ、ジャックも2分7秒フラットをマーク。さらに2分7秒台のアベレージで周回するなど速さを見せた。初めて乗るR1、初めてのブリヂストンタイヤ、そして初めての鈴鹿でここまでタイムを上げてくるのはさすがである。

「わずか2日でここまで速くなるとは思っていませんでした。さすが世界で闘っているライダーは凄いです。自分もうかうかしていられません。と、同時に物凄く心強いペアライダーと出会えたと嬉しく思います」と中須賀。ピットでジャック、ロカテッリからのフィードバックに耳を傾け、積極的に走り方のアドバイスをしていた。

最終セッションでは二人ともさらにタイムアップ。ロカテッリは2’06.208、ジャックは2’06.421をマークした。速い。

ピットインを繰り返しながら細かい調整とセットアップの確認を行い2日間のテストを終えた。走り方の違いは”ライダーが合わせる”方向で進めるとのことでジャックがどこまで合わせられるか。だが「MotoGPで走っているジャックなら、こうやって走ってくれ、と言えばその通りに走ることは可能だろう」とブリヂストンのタイヤ開発責任者の松永氏は言う。レースウィークのテストで違うタイヤでも試してみるそうだ。

今回のテストには今年からWorldSSPにフル参戦している岡本裕生も参加した。鈴鹿8耐のリザーブライダーでもある。久しぶりの中須賀と岡本の2ショット。心なしか中須賀が嬉しそうに見えた。

「今年乗っているR9はJSB仕様のR1とは全く異なり、キャラクターを掴むのに時間がかかりました。マシンの違いもそうですが何より初めて走るサーキットばかりですのでそっちの方が合わせるのが大変です。20分走ったら予選のスケジュールはキツイですね」

3日の夜には「2025 Suzuka 8 Hours YAMAHA RACING TEAM Rider Meeting」と題したライブ配信が行われた。

 

初日の感触や、初めて乗るR1の評価などレースに関することはもちろんだが、ジャックが「以前はクレージーと呼ばれて無茶をやったけど今は落ち着いているよ」と語ったり、ロカテッリは「イタリアでは正直耐久レースの注目度は低いけど、ボクが走るから人気が出てくると思うよ」と茶目っ気を出したりと、普段見られない一面が見られて多くのヤマハファンを楽しませていた。

いよいよ1ヶ月後には鈴鹿8耐本番。

6年ぶりにワークス復帰するYAMAHA RACING TEAMの走りには大きな注目が集まる。今年はどんなドラマが観られるのか、今から楽しみである。

Photo & text:Toshiyuki KOMAI