安堵の中須賀克行今季3勝目。最終ラップの雨で勝負がついた2位争い

2025/09/14

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が今季3勝目を挙げた。独走だったが久しぶりの勝利に胸を撫で下ろしていた。最終ラップまでもつれた2位争いは局地的な土砂降りで勝負が決まった。野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)が2位、津田拓也(Team SUZUKI CN CHALLENGE)は悔しい3位。見せ場を作った名越哲平(SDG Team HARC-PRO. Honda)が最終ラップで転倒、病院に搬送された。

雨が降ると思われた午前中の公式予選は時折陽が差すドライコンディションで行われた。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がただ1人1分47秒台に入れる1’47.960をマークしてポールポジション獲得。2番グリッドは野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)1’48.351。48秒前半まで詰めてきた。3番手は津田拓也(Team SUZUKI CN CHALLENGE)1’47.776。4番手には名越哲平(SDG Team HARC-PRO. Honda)1’48.903。5番手には鈴木光来(Team ATJ)1’49.015。

JSB1000クラスのスタート前に雨が降ったがすぐに止んだ。これが中途半端な路面を作る。ウェット宣言が出されたものの、路面はところどころウェットパッチが残るドライ路面。ドライタイヤか、レインタイヤか。難しい判断を迫られる中で各車コースイン、レインタイヤで出たチームはグリッド上でドライタイヤに交換。全車ドライタイヤで午後3時10分、15周による決勝レース1スタートした。

野左根がホールショットを奪う。中須賀2番手、好スタートを決めた名越哲平(SDG Team HARC-PRO. Honda)と岩田悟(Team ATJ)、伊藤和輝(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)と続き、津田は出遅れて6番手で1コーナーに進入する。

オープニングラップは野左根が制し、中須賀、名越、岩田、津田、伊藤と続く。2周目の第2ヘアピンで鈴木光生が伊藤のインを突き6番手浮上。序盤はこの6台が先頭グループを形成する。3周目の第2ヘアピンで岩田が中須賀を刺して2番手に浮上、場内が湧き立つ。

「サイティングラップで第1ヘアピンから先とジェットコースターストレート下にウェットパッチがあることを確認しました。序盤は様子を見ながら(ウェットパッチが)乾いてからペースを上げようと考えていました」

「しかし、岩田選手が突っ込んできたり、集団が大きくなってしまいリスクが高くなると判断、前に出た方が良いなと考えました」と中須賀。

その言葉通り最終コーナーで岩田をかわして2番手に復帰すると4周目の上りセクションでコンパクトなラインかで野左根のインに飛び込みトップに浮上する。

ここから中須賀はペースを上げる。4周目には1’48.825のファステストをマーク。その後も48秒台、49秒前半を刻み徐々に2番手以降を引き離していく。ここで食らいつきたい野左根だがペースが上がらない。序盤に速いペースで回りトップ争いに絡む・掻き乱す、を得意としてきたがセカンドグループの蓋をする形になっている。

「何故ペースが上がらなかったのか、自分でもわかりません。」とレース後にコメントしている。

そこに津田が絡んでくる。第2ヘアピンで野左根のインに飛び込むと2番手浮上、しかしジェットコースターストレート先の右コーナーでオーバーラン、芝生に乗り上げるがその先の上りセクションで再びインから抜き返す。

「自分たちは少し硬めのタイヤを選択しました。ですが想定よりも路面温度が上がらずどこまで行けるか不安はありましたが機能させられたことは大きな収穫でした。(セカンドグループの)他のライダーたちは柔らかめのタイヤを選択していたようでここから抜け出すことが難しかったです」

とは言え、自由度の高いラインで抜き差しを繰り返しセカンドグループを先頭で引っ張っていった。

野左根の背後には岩田と名越がピタリと付ける。7周目に岩田が野左根を刺して3番手、さらに名越もパスして4番手、野左根は5番手にドロップダウン。

名越のペースが良い。7周目に1’49.511のベストラップをマークすると岩田をパスして3番手、表彰台圏内に上がってきた。SUGOで肩を痛め、鈴鹿8耐でも同じところを痛めてしまい思うような走りができていなかったが気迫のある走りを見せている。さらに11周目の第2ヘアピンで津田のインに飛び込み、ついに2番手まで浮上する。

名越、津田、ここに一時ペースが落ちていた野左根が息を吹き返して接近戦を展開する。12周目の第1ヘアピンで津田のインにやや強引に飛び込みラインが交錯して接触、弾き出されて伊藤・岩田に続く6番手にドロップしてしまう。

このセカンドグループの5台が終盤にコーナ毎に順位が変わる激しい接近戦を展開する。津田が名越をパスして2番手浮上、さらに13周目の1コーナーで伊藤が名越をかわして3番手・表彰台圏内に入ってきた。岩田・野左根が名越を処理して名越は6番手にドロップダウン。津田がアタマひとつ抜け出してきた。

トップ独走の中須賀がファイナルラップを迎える。後続とはすでに8秒以上の大差をつけている。しかしこのファイナルラップにアクシデントが発生する。ジェットコースター付近だけ大粒の土砂降り。「驚きました。手を挙げようかと思いましたが最終ラップだしスピードを落とせば転ばずにゴールできると考えました」と驚愕しながらも冷静に対処した中須賀がSUGO以来今季3勝目を挙げる。

「マシンのパッケージよって向き・不向きが出ます。前戦もてぎは合わせ切ることができず苦しいレースでしたが最低限の仕事をしました。そしてここオートポリスは勝ちに行かなくてはならないサーキットなのでしっかり獲ると考えていました。微妙なコンディションの中、絶対に転べないので冷静になれと自分に言い聞かせました。勝てて本当に良かったと安堵しています」

ホッとしている、と中須賀からコメントが出たのが意外だった。今シーズン優勝からはちょっと距離があり中須賀自身も苦戦している中、地元オートポリスに臨むプレッシャーがあったのだろう。

「自分たちは少し硬めのタイヤを選んだのですが、この路面温度では滑って喰って、滑って喰ってを繰り返し、タイヤの表面が荒れてしまいます。そうなるとライフに影響するのでそれを確認する意味でも前に出てマージンを築きました。おかげでしっかりとデータが取れたので明日も同じようなコンディションで戦える自信はつきました」

土砂降りの中で明暗が別れた。5台による2番手争い。先頭の津田は転倒を避けるためにスピードを落とした。しかし野左根はものすごい勢いで下ってきて津田のインから抜いていく。

津田が「そんなに寝かしたら転ぶのでは?」と思うくらい思いっきり突っ込んでいった。そこで勝負あり、野左根が2位、津田が3位となった。

「自分はチャンピオン争いから外れているし失うものが何もないのでここはプッシュすべきだと思い勝負に出ました。」

と野左根。「今日のレースは自分で思い描いていたのとは真逆の展開となりました。中須賀さんに抜かれた時はむしろ前で引っ張ってもらってペースメーカーになればいいな、と思いましたが全然ついて行けず、そこが大きな誤算でした。原因はこれからチームと検証します。最後は雨に救われました。」

悔しい3位の津田。「めちゃくちゃ悔しいです。今日は2位を獲れたレースでした。但、タイヤに関して貴重なデータが取れたのは大きな収穫です。これでどんな条件でも勝負できることがわかりました。昨年はホンダ車に全く歯が立たなかったのですが今年は勝負できました。同じマシンでリザルトが良くなるということはマシンも自分もレベルが上がっていることだと思います」

この土砂降りで名越が転倒を喫する。ジェットコースターストレートを下っている伊藤とラインが交錯、外に弾き出された名越は激しく転倒、病院に搬送された。序盤から終盤まで気迫のこもった走りをしていただけに残念だし怪我の具合が心配だ。

そしてもう一つ気がかりなのが水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)予選ではトップから2秒落ちの10番グリッド。決勝レース1は11位フィニッシュ。この位置を走るライダーではないのは誰もが思うところだ。

「チームは懸命にマシンを良くしようと努力してくれています。自分の身体も痛くないか問われれば痛いです。だけど走れる状態にはあるので走行に影響はありません。原因がわからないのが一番歯痒いです」と唇を噛み締める。
開幕戦の速さを1日も早く取り戻してほしい。

全日本ロードレース第5戦SUPERBIKE RACE in KYUSHU  決勝レース1 上位10位は以下の通り

優勝:#2中須賀 克行YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2:#4 野左根 航汰 Astemo Pro Honda SI Racing
3:#7 津田 拓也 Team SUZUKI CN CHALLENGE
4: #8 岩田 悟 Team ATJ
5: #9 伊藤 和輝 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
6: #30 鈴木 光来 Team ATJ
7:#10 長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
8:#13 児玉 勇太 MARUMAE Team KODAMA
9:#32 中村 竜也 KRP SANYOUKOUGYO RSITOH
10:#11 関口 太郎 SANMEI Team TARO PLUSONE

Photo & text: Toshiyuki KOMAI