2025年の全日本ロードレースも残り2戦。第6戦が岡山国際サーキットで開幕した。朝から生憎の雨。この大会で中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がシリーズチャンピオンを決めるか、注目される。
第5戦終了時点でのポイントは中須賀克行:160ポイント(pts)、ランキング2位の浦本修充(AutoRace Ube Racing Team)が86pts、同3位の伊藤和輝(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)が80pts、ここまでがチャンピオン争い。
浦本はEWC参戦のため岡山大会も欠席。となると伊藤と中須賀の一騎打ち。仮に中須賀が残り3レース(岡山・鈴鹿レース1、レース2)をノーポイントで、伊藤が3勝を挙げると1ポイント差でチャンピオン獲得(岡山:25pts+鈴鹿レース1:28pts+レース2:28pts=81pts)
裏を返せば中須賀がこのレースで1ポイント獲得(15位)すればチャンピオン決定となる。かなり有利な状況だがそんなことにあぐらをかかないのが中須賀。全力で獲りに行くはず。
金曜日の総合トップは中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)1’45.27。タイヤ選択が難しかったと言う。周囲を驚かせたのが名越哲平の代役で参戦した阿部恵斗(SDG Team HARC-PRO. Honda)が1本目の走行で1’45.635と中須賀と水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)の間に割って入って2番手タイムを叩き出したことだ。
水野も復活。今回イタリアからエンジニアを招聘、課題であった電気周りを中心にセットアップを詰めたところ本来の調子に戻りつつあるようだ。何よりライダーが気持ちよく走っているのが良いことだ。オートポリスの水野とは雲泥の差を感じる。
中須賀克行:「記録に残る仕事をしたいです」
「事前テストでは雨を走れなかったので2本ともウェットで走れたことは良かったです。タイヤもミディアムもハードも試せました。午後はしっかり濡れたのでハードでは機能しなくなり、ミディアムに変えました。雨量によってタイヤの機能が変わってくるので本番時のタイヤ選択が難しいですね。落ち着いて状況判断して転倒だけは避けたいですね」
あと1ポイントでチャンピオンについて聞いてみた
「確実にチャンピオンを獲りに行きますよ。15位でチャンピオンなんて恥ずかしいと昔は思っていましたが、今は違います。チャンピオンを獲れるのは一人だけ。そこに誇りを持っていますし13回目のチャンピオンと言う記録も残したいです。」
こう言う状況の時、ちょっと前の中須賀ならナーバスになっていたが今年は違う。「大人になったのですよ」と笑って言うが記録に残る仕事に誇りを持っている中須賀を見た。
水野涼:「自信を持ってバイクに乗れるまで戻ってきました」
「イタリアからエンジニアが来てくれて、走る前からここ数戦問題だった部分を見直してくれて、走り始めてからも課題が一つひとつ解決していくのを実感しました。ドライで走れていないので最終的にクリアにはなっていませんが雨の中でもフィーリングは良いですし自信を持ってバイクに乗れるまで戻ってきたな、と言う感じです。」
「例えばシフトが上手く落ちないとエンブレも変わってきますし、エンブレが違うとブレーキングも変わってきます。そういう制御系の設定を上手く見つけてもらえてブレーキも握れるようになりました。」
「最後はもうちょっと行けると思って攻めたら転んじゃいました。でも“もっと攻められる”と思えるくらいまでバイクは上向きになってきています。」
水野の表情が違った。自信を持って楽しく乗っているように見える。開幕戦の表情に似てきたことは良いことだ。
阿部恵斗:「テストの時の悔しさ晴らしたいです」
「今回急遽JSBに乗ることになり、先週のテストで初めてJSBマシンに乗ってのですが普段乗っているASB(アジア選手権のストッククラス)とは全然違うことに驚きました。」
「テストの時は“今までこんなに抜かれたことが無い”と言うくらいバンバン抜かれて泣きそうでした。しかも抜かれた後にどれだけ差が広がるんだと言うくらい離されて毎セッション落ち込んでいました」
だがテストでは最終的には総合5番手、今日のART走行でも3番手につけた。短期間でここまでのリザルトはライダーの技量では?と聞くと
「高橋巧さんが見てくれてアドバイスをもらったり、チームがいろいろとセットを変えてくれたのでタイムアップが図れたと思います。ここ岡山が好きだと言うこともありますし、ウェットではマシンの差が出にくいと言う点もあると思います。ウェットはどちらかと言うと得意なのである意味チャンスかな、とは思っています。」
JSBマシンに乗って3日目でここまで伸びた阿部恵斗のポテンシャルの高さを感じる。明日の予選、明後日の決勝レースが楽しみである。
全日本ロードレース第6戦スーパーバイク in 岡山 ART 合同走行上位10位は以下の通り
1:#2中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 1’45.27
2:#3水野 涼 DUCATI Team KAGAYAMA 1’45.349
3:#46 阿部 恵斗 SDG Team HARC-PRO.Honda 1’45.635
4:#8岩田 悟 Team ATJ 1’46.668
5:#24星野 知也 TONE Team4413 BMW 1’46.718
6:#4野左根 航汰 Astemo Pro Honda SI Racing 1’46.980
7:#7津田 拓也 Team SUZUKI CN CHALLENGE 1’47.176
8:#10長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI 1’47.459
9:#16 渥美 心 Yoshimura SERT Motul 1’47.577
10:#28吉田 愛乃助 TONE Team4413 BMW 1’47.959
photo & text: Toshiyuki KOMAI