速く!もっと速く!そのために敢えて鬼になる。秋吉耕佑選手の飽くなき挑戦

2013/12/13

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全日本ロードレースファンで「韋駄天」と聞いて思い浮かべるライダーは誰であろうか?「秋吉耕佑選手!」とほとんどの人が答えるだろう。秋吉耕佑選手の速さは誰もが認めているところである。2010年、2011年、2年連続JSB1000クラスチャンピオンの秋吉選手は2012年シーズン開幕戦で大腿骨骨折の大怪我を負い2012年シーズンは絶望かと思われた。が、しかしその年の鈴鹿8耐で優勝を果たす!しかもシーズン後半ではコースレコードを更新(オートポリス)する速さを見せつけ、最終戦鈴鹿ではダブルウィンを飾った。

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2013年シーズンもその速さで開幕2連勝を飾り好発進した矢先の第4戦筑波で大腿骨骨折の大怪我。シーズン中盤と鈴鹿8耐の欠場を余儀なくされた。多くのレースファンが秋吉選手の走りが観られないことに残念に思ったが、直ぐに秋吉選手の強靱な体力と精神力に驚くこととなる。なんと、鈴鹿8耐にスーパーバイザーとしてやって来たのである。大腿骨骨折の大怪我であれば歩くことさえままならないはずなのにわずか1ヶ月でピットボックスに現れたのである。これには多くのロードレースファンが驚き、喜んだ。そして大怪我からの復帰戦岡山大会。金曜日のフリー走行でトップタイムをたたき出すほどの速さを見せながらまさかの公式予選転倒、左鎖骨骨折で欠場となってしまう。しかしそれからわずか1ヶ月後の最終戦鈴鹿に出場、2分6秒台をたたき出す速さを魅せた。2013年は怪我に悩まされるシーズンではあったが秋吉選手の速さに疑いを持つ者は誰もいないだろう。

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C06D4058秋吉選手は速さにこだわる。でもその速さはタイム計測上の速さではない。記者会見で「自分は計時タイムには全く興味が無い」と頻繁に言っている。求めているのは自分が理想とする速さではないだろうか。そのために秋吉選手は絶対に妥協しない。

知っている人も多いだろうがピットボックスから出てレーシングスーツを脱いだ秋吉選手は常に明るくジョークを飛ばし、とびきりの笑顔である。イヤ、お笑い芸人顔負けなほど面白いのである。しかし、一度ピットボックスの中に入ると迂闊に近づいてはいけないオーラを発している。あるとき秋吉選手に聞いたことがある「何故そんなにピットボックスの中で厳しい表情をしているの?」と。

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すると「速さの追求にゴールは無い。今、仮にポールポジションを獲ったタイムだとしてもさらに速く走れるはず。だから今ここで“良し!”として満足してしまうとその先が無くなる。チームスタッフが頑張ってセッティングを出してくれることはよくわかっているし感謝もしている。でもここで笑顔で“OK”を出したらそこで終わってしまうので敢えて鬼となり“もっと速くするにはどうしたら良いのか”をスタッフに問いかけ、答えを出している」と言う回答が帰ってきた。そしてこう続けた。「速く安全に走れるマシンを作りたい。そのためには自分自身の妥協も許したくない。」チームに高いハードルを求める以上、自分自身に最も厳しくあるのだと思う。

秋吉選手は走行後の打合せには人一倍長い時間をかける。徹底的に速くなるセッティングについて話し合いをしているのだろう。チームスタッフもそんな秋吉選手の理想に全力で応える。この一体感がF.C.C. TSR Hondaの速さ/強さの元、そして秋吉選手の速さの源なのだと思う。

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秋吉選手の飽くなき速さの追求、もちろんそれはその先にある勝利を見据えてのものである。速く走ってチームに勝利をもたらす、その秋吉選手の速さに誰もが驚き、ワクワクしているのではないだろうか。さらに秋吉選手は本当にお客様を大切に思っている。「お客さんが来てくれてなんぼのレース。自分が優勝するためにと言うよりは観てもらって、面白かった!またサーキットに来たい!と言ってもらえるレースをしたい」

来年2014年シーズンの秋吉選手の「韋駄天」に全国の多くのファンが期待をしている。

photo & text : koma

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