2022全日本ロード第3戦 オートポリス 決勝レース2

2022/05/22

決勝レース2。強い!中須賀克行、開幕6連勝、2位岡本裕生、3位渡辺一樹

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が深い読みで開幕6連勝を飾る。2位に手応えを感じた岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)、体調が心配された渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)は3位表彰台獲得。

朝から気持ち良い好天に恵まれた決勝日。12時25分に18周の決勝レース2スタート!ホールショットはポールポジションの亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)が奪う。7番グリッドの榎戸育寛(SDG Motor Sports RT HARC-PRO.)が2番手で1コーナーに進入する。3コーナーで中須賀が榎戸をパス、その後ろに岡本、渡辺と続く。オープニングラップは亀井が制し、中須賀、榎戸、岡本、渡辺、國峰啄磨(TOHO Racing)、名越哲平(SDG Motor Sports RT HARC-PRO.)、作本輝介(Astemo Honda Dream SI Racing)、濱原颯道(Honda Dream RT桜井ホンダ)、岩田悟(Team ATJ)の上位10台。

亀井がレースをリードする。「スタートが決まったら序盤からペースを刻んで少しでも差を広げておきたい」との言葉通りオープニングラップで1分49秒182のファステストラップを刻む。だが中須賀も2周目に早くも48秒台に入れる1分48秒887をマーク、亀井の背後にピタリとつける。亀井とは初めての接近戦となったのでいつもとリズムが変わってしまうので背後から様子を伺っていた。

その後方では岡本と渡辺の3番手争いを展開。亀井のラップタイムペースが49秒4〜5。中須賀はそれに合わせる。対して岡本は49秒2。岡本に中須賀の背中が次第に近づいてくる。しかし中須賀は亀井を抜こうとはしなかった。

「昨日からさらに路面コンディションが悪くなりました。ラップタイムを上げるとフロントが切れたり、タイヤが滑るので後半保たなくとなると判断しました」

亀井は初日「一発のタイムは出せるけどアベレージが刻めません。49秒中盤から後半のタイムだと思います」と言っていたが49秒前半でラップした。しかしそれはタイヤを使うことになる。亀井も承知だ。「そうしないと出せないタイムです」後半タレてくるのを承知で序盤からペースを上げていた。

9周目の1コーナー。スリップに入った岡本が中須賀のインに入る。スリップを嫌った亀井はアウト側にラインを変えるが、岡本は「止まれるのか?」と思うほどリアが暴れながらの深いブレーキングで一気に2台抜きを演じる。その周、1分49秒063のベストラップを刻んだ。

中須賀も「ものすごい勢いでインから出てきた、止まれるのか?と心配になりました」と驚く。岡本は「次第にペースが上がってきたところで前に出たかった。後ろについて(中須賀の)走りを見てしまうと自分のペースで走れなくなると思いました」すかさず中須賀も亀井をパスして岡本の背後につける。

中須賀は冷静に分析していた。「このコンディションの中で良いペースのアベレージを刻むのはみんなタイヤを使っているように見えました。周回数を考えればここでギアを入れてもタイヤを消耗するだけなので自分は最後に前に出られればいい、と思っていました。」

「自分が亀井選手の後ろで49秒9で走行している時に、(岡本は)49秒4〜5で追いついきて、その勢いで前に出たと思います。その後もそのタイムで周回するだろうと思いました。このまま亀井選手の後ろにいても離されるのですぐに反応して裕生の後ろにつけました」

そのくらいのタイムであればタイヤをマネジメントしながらの走行が可能だとわかっていたからできる技だ。

岡本の背後につけていた中須賀が11周目の第1ヘアピンで僅かに膨らんだ岡本のインからトップを奪う。トップに立つともう一段ギアを入れた。しかし岡本も食らいつく。11周目中須賀1’49秒545、岡本:49秒581、12周目中須賀1分49秒433、岡本49秒496、遜色ないタイムで中須賀について行く。しかし13周目の1コーナーで膨らみタイムロス、差が広がる。

中須賀は手綱を緩めることなく49秒前半のタイムで周回、そのままトップチェッカー!今シーズン負けなしの6勝目を飾る。

2位には岡本。但、今日の2位は雨のもてぎよりも満足している結果だという。

やはり序盤のペースアップでタイヤが厳しくなってきた亀井はペースが上がらない。10周目の1コーナーでは渡辺がピタリと背後につけて3コーナーでインを刺してパッシング。しかし亀井が再び抜き返す。横突起骨折の怪我を負っている渡辺。今朝は痛みがだいぶ和らいだというがレース後半になると厳しくなり抑えが難しくなってきた。亀井を抜いた後に転倒しかけて「これ以上のリスク(転倒)は負えない」と自分でスイッチオフにしたという。亀井も渡辺もタイヤが厳しくなっていてお互い我慢比べの状態となっていた。

ファイナルラップの1コーナー、渡辺が暴れるマシンを抑え込んで亀井のインから3番手に浮上する。「ラスト2周のタイミングでい行こうかなと思ったのですが、体力的にもタイヤ的にもラスト2周を踏ん張り切るだけの自信がありませんでした。ですので最後の1周だけにしようと決めました。」やはり体力的には相当厳しかったようである。最終コーナー立ち上がりからホームストレートでスリップに入れず距離が空いていた。ここで渡辺「亀井くん、当たったらごめん」と思いながら突っ込んでいったそうである。リアが左右に暴れながらの強烈なブレーキングであった。そのまま3位でチェッカー。

亀井は4位。だがヤマハファクトリー、ヨシムラと最初から最後まで接近戦を展開した。今シーズン一番近いところでバトルできたとことが大きいと言う。「トップから10秒以内でゴールできたので、今、できる範囲の中で最大のレースはできたかなと思います。ただ一発のタイムは出ても、あのアベレージラップではタイヤが消耗してしまいます。そういう細かいところも詰めていかなきゃいけないと思います。」

速いだけではなくアタマの中で様々な状況とその対処方法を考えながら、且つアベレージを刻みながら走る。終盤、トップにたった後に岡本がついてきたら他の手を考えていたそうである。そこまで奥深く戦略を考えながら戦う中須賀はやはり強い。

決勝日に中須賀のご子息が所属している野球少年団の子どもたちを招待した。野球少年の前でレースについて語り、ピット訪問も行い、子どもたちの目はキラキラと輝いしいた。みんなの前で「凄いパパ」を見せられたことにホッとしていた中須賀であった。

写真提供:ヤマハ発動機株式会社

 

優勝:中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)記者会見

「昨日よりも暑いコンディションになって、グリップはさらに悪くなっていました。3周長いとタイヤの磨耗的にはきついレースになるなと思たので、しっかりマネジメント対応を考えながら走りました。出るべきときにしっかり出ようと考えていたタイミングで仕掛けられたし、終盤にペースを上げて走ることもできたのでタイヤのマネジメントをしながらレースをコントロールできたと思います。

地元だったので非常にたくさんの応援団が来てくれました。このウィークはプレッシャーを感じていて、自分走りがちょっと硬くなっていたようです。ですが本当たくさんの応援とチームが良いバイクを用意してくれたおかげでしっかりと2連勝することができてよかったと思います。」

2位:岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)記者会見

「チームのトレーナーさんをはじめ、みなさんにサポートしていただいて、自分の走りやすいバイクに仕上げていただいたからこそ最後まで自分の精一杯で走り切れました。最終的には中須賀さんに離されてしまって、2位で終わってしまったのですが、もてぎの雨の2位よりは嬉しい2位だったと思います。自分はブレーキングがずっと課題でして。あのパッシングは2台のスリップが効いていた部分もあって前に出たですが、正直もう止まれないかと思いました。気合でなんとか止めました。追いついた流れのままで走りたかったので、あの場面で出れたのは良かったと思っています。」

3位:渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)記者会見

「今日の朝起きた瞬間に体が軽く感じて、今日はいけるかも、と思いました。

スタート自体はそんなに悪くはなかのですが、何かあったときに対応ができないという気持ちが出て、引いてしまったところでタイムロスしました。岡本選手のペースが速くて、逆に自分としては身体がキツイということを考えることなく、ついていくことに集中できたので、そういう意味では助けられました。亀井選手を抜いたあと、今のベストを出そうと思った時にフロントが切れ込んでしまい、やはり完走しなくてはと思いました。

最終ラップ、1コーナーで飛び込むことは考えていましたがホームストレートでスリップにつけなかったので亀井選手に当たることも覚悟しながら入ったのですがなんとか止まりきれました。転びかける瞬間も何度かあったレースだったので転ばずに帰って来れてよかったなと思います。」

全日本ロードレース開幕戦 もてぎ 決勝レース2上位10位は以下の通り。

優勝:中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2:岡本裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
3:渡辺一樹 YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN
4:亀井雄大 Honda Suzuka Racing Team
5:作本輝介 Astemo Honda Dream SI Racing
6:名越哲平 SDG Motor Sports RT HARC-PRO.
7:國峰啄磨 TOHO Racing
8:濱原颯道 Honda Dream RT桜井ホンダ
9:岩田悟 Team ATJ
10:榎戸育寛 SDG Motor Sports RT HARC-PRO.

Photo & text:Toshiyuki KOMAI