2022全日本ロード第8戦 鈴鹿 決勝レース3

2022/11/07

レース3。中須賀克行と渡辺一樹の鬼気迫る一騎討ち。全戦優勝の金字塔を打ち立てた中須賀。亀井雄大が満足の3位表彰台

史上初の3レース制の最終レース。渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)が須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)からシケインでインを突く一騎討ち。3位に一時トップを走った亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)。大トリに相応しい好レースであった。

15周のレース3は15時40分にスタート。ホールショットは濱原颯道(Honda Dream RT桜井ホンダ)が奪うが止まりきれずオーバーラン。渡辺がトップで2コーナーを立ち上がる。岩田悟(Team ATJ)が3列目からロケットスタートを決めて2番手。3番手に作本輝介(Astemo Honda Dream SI Racing)、中須賀は出遅れて4番手。日浦大治朗(Honda Dream RT桜井ホンダ)岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)と続く。

ダンロップ上りで中須賀が作本をかわして3番手、さらにヘアピン立ち上がりからMCシケイン進入で岩田をパスして2番手に浮上して渡辺を射程内に捉える。

オープニングラップは渡辺が制し、中須賀、作本、岩田、濱原、岡本、日浦、亀井、秋吉耕佑(Murayama.Honda Dream.RT)、榎戸育寛(SDG Honda Racing)の上位10台。

トップ渡辺のコンマ1秒後ろにテールtoノーズでつけている中須賀。だが前に出ない。渡辺も後ろに中須賀が来ているのはわかっている。タイヤマネジメントのために2分7秒中盤付近でコントロールした。レース後に「序盤にペースを抑え過ぎたかもしれない。渡辺選手にタイヤを温存させてしまった。先に自分が前に出た方が戦いやすかったかもしれない」と中須賀。

トップ2台が2分7秒台で膠着状態にある中、オープニングラップで8番手まで下がってしまった亀井が2分6秒台で3番手まで上がってきた。そして6周目の130Rで中須賀をパス、心の中で「ヨッシャー!」と叫んだそうである。さらにシケインで渡辺のインを刺してトップに浮上!プライベーターの亀井がワークスを抑えてトップに立つ光景に会場からは歓声が沸く。亀井は2分7秒フラットのペース、当然渡辺も中須賀もペースを上げる。

中須賀が動く。8周目に渡辺をかわして2番手に浮上、亀井の背後につける。さらに渡辺も動く。8周目の最終シケイン二つ目で中須賀のインを突き2番手、しかし今度は1コーナーで中須賀にインを突かれて3番手。ここから中須賀と渡辺の鬼気迫るサイドbyサイドのバトルが始まる。

10周目、中須賀が得意の最終シケインで亀井のインを突いてトップ浮上、このレースで初めてトップに立つ。すかさず渡辺も1コーナーで亀井をパスして2番手浮上、中須賀を追う。中須賀はギアを入れ2分7秒台から一気に2分6秒138までペースを上げる。渡辺も負けない。なんと2分5秒821のファステストラップを叩き出し中須賀の背後にピタリと付けて隙を伺う。

13周目の130R、ギリギリまでブレーキングを遅らせリアタイヤを激しくスライドさせながら中須賀のテールにつける渡辺が中須賀の十八番シケインでアウト側からの鋭い飛び込みインを突く。中須賀も開けざるを得ず渡辺がトップを奪う。場内から大歓声。そして渡辺がトップでファイナルラップを迎える。

中須賀は渡辺のテールにピタリとつけコーナーではマシン一台分インに寄せt鼻先を突っ込む。そしてヘアピンで渡辺のインが空いた隙を突いてトップを奪取する。渡辺は前周と同じ130Rでテールtoノーズまで寄せるとアウトからシケインに飛び込む。しかし中須賀がキッチリとインを閉めて勝負あり。中須賀が全戦全勝の偉業を達成してトップチェッカー!渡辺は悔しい2位。

激しくもクリーンなファイトに中須賀も満足。パルクフェルメでは渡辺と抱き合う姿が見られた。

3番手の加盟に作本、岡本が追いつき3台のパックで表彰台争いを展開していたが、亀井がキッチリ抑えて3位表彰台。最後の最後で岡本が作本をかわして4位、5位に作本が入った。

レース1、レース2で悔しい負け方をした渡辺。レース2からレース3にかけてチームはセットアップを変更。レース後にデータを見たら渡辺が驚くほどの数値で変更していたと言う。「序盤のフィーリングでは大差なかったのですがウィーク中の課題であったマシンのバランスが崩れる症状がレース3では出ませんでした。これはチームのおかげです」と渡辺。負けて悔しいのは当然だが今の力を全て出し切って戦ったことにスッキリとした表情に見えた。

今シーズンの全ての戦いを終えた。中須賀が2年連続で全戦全勝と言うとんでもない記録で幕を閉じた。もう1人の主役は間違いなく渡辺一樹。中須賀と真っ向勝負できたのは彼しかいなかった。そして若手の台頭も目立ったシーズンだった。ルーキーの岡本裕生。時には中須賀を追い込むシーンも見せてくれた。亀井も今シーズン一気にブレイクした。オリジナルのスイングアームは評判になり本田鈴鹿製作所の社員チームで制約が多い中、少ないチームスタッフで奮闘した。

来シーズンはどんなドラマが観られるのか、楽しみである。

優勝:中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)記者会見

「3レースもしてるとお互い手の内がわかってくるので同じ作戦だったのかなと思います。最後にプッシュはしましたが渡辺選手がなかなか離れず厳しいレースになりましたが勝ててホッとしています。お互いにリスペクトしているからこそのクリーンファイトなのでシーズンの最後にこのバトルをお客様に魅せられて良かったと思いいます。チームが信頼できるバイクを作ってくれたおかげで年間を通じて安定した成績を残せたと思うので先ずは感謝したいです。そして自分にもお疲れ様、と行ってやりたいです。」

2位:渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)記者会見

「良いスタートが切れて、中須賀選手が少し出遅れたので序盤の混戦から抜け出して自分のペースで走ったのですがすぐに中須賀選手が後ろについてきたのでタイヤをセーブする走りに切り替えました。仕掛けられる場所が限られているので少し危ないラインかもしれないけど思い切って勝負を仕掛けました。結果的に自分のミスで2位に終わったのはとても残念ですが、終盤でトップを走れたことはマシンのパフォーマンスを見せることができて、みんなから良いレースだったよ、と言ってもらえるのでは、と思います。来年の体制は決まってませんがしっかりと準備をしたいと思います。」

3位:亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)記者会見

「先ずはスタートの練習をしっかりとやります(笑)3レース共序盤で10位くらいまで下がってしまったので。レース3はアジャストしたのが決まって早く追い付けたので行けるところまで行ってみよう、と思ったらトップに立てました。いつもなら中須賀さん、渡辺さんに追いついても終盤に離される展開なのですが今回は2人が見える位置でゴールできたことが嬉しいです。地元鈴鹿で会社の偉い方や同僚が応援に来てくれた中で3位表彰台に立てたのはとても良かったです。みんな喜んでくれました。」

全日本ロードレース最終戦 鈴鹿 決勝レース1上位10位は以下の通り。

優勝:中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2:渡辺一樹 YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN
3:亀井雄大 Honda Suzuka Racing Team
4:岡本裕生 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
5:作本輝介 Astemo Honda Dream SI Racing
6:榎戸育寛 SDG Honda Racing
7:日浦大治朗 Honda Dream RT桜井ホンダ
8:岩田悟 Team ATJ
9:濱原颯道 Honda Dream RT桜井ホンダ
10:清成龍一 Astemo Honda Dream SI Racing

Photo & text:Toshiyuki KOMAI