2019全日本ロードレース第2戦鈴鹿 決勝レース2

2019/04/23

高橋巧、ぶっちぎり独走で2連勝。それでも「たまたま勝てただけ」と気を引き締める。2位に中須賀克行、3位野左根航汰

「太刀打ち出来ない状況だった」絶対王者:中須賀からこんな言葉を聞いたのは何年ぶりだろうか。それくらいこのウィークの高橋巧とHRCは速かった。全日本ロードレース第2戦「SUZUKA 2&4 RACE」」の決勝レース2は高橋巧が2位に16秒以上の大差をつけて圧勝。2連勝を飾る。それでも「たまたま勝てただけ」と謙虚な姿勢は崩さない。2位に中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)。3位に野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

18周のレース2は午前11時にスタート。ホールショットは渡辺一馬(Kawasaki Team GREEN)が奪う。中須賀と野左根はウィリーさせて出遅れる。5番グリッドの水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO. Honda)がスーッとイン側へ上手く寄せていき、渡辺一馬、高橋巧、水野、加賀山就臣(ヨシムラスズキMOTULレーシング)、岩戸亮介(Kawasaki Team GREEN)、渡辺一樹(ヨシムラスズキMOTULレーシング)の順に1コーナーへ進入する。2コーナー立ち上がりで高橋がトップを奪うと早くも逃げにかかる。

ダンロップコーナー進入で加賀山が水野をパス、さらにスプーンカーブで渡辺一馬をパスして2番手に浮上する。渡辺一樹も渡辺一馬をかわしてヨシムラが2番、3番手で西ストレートに入ると4ワイドで130Rへ進入、ストレートスピードに定評のある渡辺一馬が先頭を奪い返すと、水野も一気に加賀山、渡辺一樹をパスして2番手浮上!オープニングラップから激しい2番手争いが展開される。

オープニングラップは高橋が制し、早くも2位以下に2.076秒の差をつける。以下、渡辺一馬、水野、加賀山、渡辺一樹、中須賀、野左根、岩戸、秋吉耕佑(au・テルルMotoUP RT)、高橋裕紀(KYB MORIWAKI RACING)の上位10台。

高橋巧は2周目にファステストラップ2分5秒265をたたき出すとその後も驚異的な速さ2分5秒台中盤で周回を続け、完全に独走状態となる。

その後方、2番手争いが7台の大きなパックとなる。序盤の見せ場を作ったのが加賀山。スタートこそ上手く決まらなかったが、2周目のスプーンカーブの進入でブレーキングを遅らせクロスラインで渡辺一馬のアウト側からインに飛び込み立ち上がりでかわして2番手に浮上する。その後もセカンドグループの中で3番手を走行、会場を沸かせてその存在感を示した。

序盤のセカンドグループはめまぐるしく順位が変わる。水野が集団を引っ張り、その後ろに渡辺一馬、加賀山と続く。6番手、7番手にいた中須賀と野左根。野左根が3周目に渡辺一樹と中須賀を一気にパス、加賀山の背後につける。5周目、ここで大きく順位が変わる。ダンロップコーナー入口で渡辺一馬が水野を捉えると、デグナー二つ目で野左根が水野のインに飛び込む。水野は失速して加賀山、中須賀に抜かれて6番手まで順位を落とす。代わってセカンドグループの先頭に立ったのは渡辺一馬。その後10周にわたりセカンドグループを引っ張っていく。

スタートを失敗してセカンドグループの中段辺りにいた中須賀。「本当はスタートから前に出て高橋選手にプレッシャーをかけたかった」というがマシンにトラブルを抱えていて思うようにペースを上げられずにいた。しかし5周目に4番手に上がると8周目には3番手、15周目にセカンドグループ先頭の渡辺一馬をかわすと2番手に浮上。しかし、トップの高橋巧ははるか15秒以上先。そのまま2位でチェッカーを受ける。

野左根はセカンド集団から抜け出せずにいたが3周目のシケインで中須賀をパスする。8周目のシケインで中須賀にインを刺されてしまうが、「このままではいけない」とピタリと背後につけて中須賀をプッシュする。しかし16周目のダンロップコーナー入口で痛恨のブレーキングミス、これで中須賀との差が開いてしまい、悔しい3位フィニッシュ。

一時6番手に沈んだ水野だったが諦めずチャンスを伺う。高橋巧が昨年乗っていたワークスマシンを駆る。従来の走り方では乗れないため、身体を鍛え、乗り方を変えたという。12周目に最高速度309.8km/hをマークして場内を驚愕させた。さらにレース終盤でも2分6秒台を連発、ファイナルラップの1コーナーで野佐根のインを刺して3番手に浮上、表彰台も見えたが最後は抜き返されて4位フィニッシュ。

序盤からトップに立った高橋巧は2分5秒台という信じられないラップタイムで周回を重ね、2位に約17秒もの大差をつけて2連勝を飾る。ART合同走行、公式予選、レース1、レース2、全てのセッションでトップに立ち、完封勝利した高橋。「自分のレース人生でも初めて」と言う。開幕戦もてぎでは2位とは言え中須賀を追いつめての惜敗。今年は速い・強い。しかし「たまたま勝っただけだと思っている。天狗にならず気を引き締めていきたい」とコメント。中須賀もこのまま黙っているわけがない。次戦SUGOは事前テストがあるので条件はみな一緒。次戦もホンダワークスvs ヤマハワークスの一騎打ちとなるだろう。

高橋巧記者会見コメント

「昨日に引き続き連勝できたことはすごく嬉しいです。事前テストから調子が良く、このウィークに入ってからも良い流れで金曜日から全セッションでトップに立てたことは今までのレース人生で経験のないことでした。この連勝は“たまたま勝てた”、と思っています。これで天狗にならず気を引き締めて、テストから決勝レースまで集中してしっかりとまとめて、この良い流れを持続させていきたいと思います。

去年唯一勝負できたのがSUGOの第2レースだったので、再びそのようなレースができるようにしたいです。昨年はすごく悔しい思いをしたので、今年は前でゴールできるように全力で頑張ります。」

中須賀克行記者会見コメント

「昨日のレースは巧選手が良いアベレージを持って非常に速かったので、“なんとかしてやろう”と攻めた結果が転倒でした。チャンピオンシップを考えたら反省すべき点です。今日はそのリベンジと思って臨みましたがスタートで失敗してしまい、久々に思う通りにならないレースウィークとなりました。まだまだレースはありますし、今度は追う側の立場としてプレッシャーをかけ続けたいと思います。各メーカーが切磋琢磨しながらレベルが上がってきていますのでお客様にとっては面白いレース展開になると思います。その中で良いバトルをしてしっかりと闘っていきたいと思います。

本当はスタートで前に出たかったのですが、マシンにトラブルを抱えていて思うようにペースを上げられませんでした。自分のレース2は失うものは何も無かったので巧選手にプレッシャーをかけながらバトルをしたかったので悔しいです。但、マシンにトラブルを抱えた状態の中では最大限にマネジメントできたかな、と思います。

このウィーク、ホンダと巧選手が本当に速くてここ鈴鹿に関しては太刀打ち出来ない状況でした。その意味でも次戦SUGOは仕切り直して巧選手の高いレベルの走りに追いつけるようにしっかりと準備したいと思います。昨年のSUGOは良い闘いになりました。事前にテストがありますし今回のような事が無いようにテストからしっかりとマシンを造り込んでまた良いバトルをしたいと思います。今回レース1でポイントを落としてしまったので、あとは勝ち続けるしかありません。そこ(優勝)に向けてしっかりと頑張りたいと思います。」

野左根航汰記者会見コメント

「自分もスタートで前に出たかったのですが失敗してしまいました。中須賀選手の後ろで挙動をみていたら厳しそうでした。自分もペースを上げづらい状況で集団の中からオーバーテイクが難しく徐々に順位を上げて行きました。2番手集団の中で渡辺一馬選手のペースが速くて自分はついていく余力はありませんでした。中須賀選手に抜かれて“このままでは厳しい”と思ったので何度か中須賀選手のオーバーテイクを試みましたがすぐに抜き返されてしまいました。最後について行きたかったのですが自分の大きなミスにより大きく引き離されてしまい、そこから順位を上げられませんでした。最後に水野選手に競り勝ちできたのは良かったですがまだまだ課題が残るレースでした。

SUGOの事前テストでしっかり走り込みたいと思います。SUGOは嫌いなコースではなく、昨年もテストでは調子良かったのですがウィークに入って調子を崩してしまったのでそのリベンジも含めて、高橋選手、中須賀選手と闘えるようにしっかりと準備したいと思います。」

全日本ロードレース第2戦「SUZUKA 2&4 RACE」の決勝レース2 上位10位は以下の通り。

優勝:#634 高橋巧MuSASHi RT HARC-PRO. Honda
2 : #1 中須賀克行YAMAHA FACTORY RACING TEAM
3:#4 野左根航汰 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
4:#634 水野涼 MuSASHi RT HARC-PRO. Honda
5:#23 渡辺一馬 Kawasaki Team GREEN
6:#26 渡辺一樹 ヨシムラスズキMOTULレーシング
7:#12 加賀山就臣 ヨシムラスズキMOTULレーシング
8:#64 岩戸亮介 Kawasaki Team GREEN
9:#090 秋吉耕佑 au・テルルMotoUP RT #26 加賀山就臣 Team KAGAYAMA
10:#15 Zaqhwan Zaidi Honda Asia-Dream Racing with SHOWA

photo & text : Toshiyuki KOMAI