「今までで一番嬉しい優勝」水野涼!
このレースウィークの全セッションでトップタイム。コースレコード更新。2戦連続ポール・トゥ・ウィン!水野涼(SDG DUCATI Team KAGAYAMA)がパーフェクトウィンを達成した。しかし本人はそこを喜んでいるわけではない。誰かのミスを待つわけでも誘うわけでもなく、JSBとは思えない抜きつ抜かれつのクリーンファイトで中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)を抑え切ったことが嬉しかった。2位は中須賀、3位は長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)
SUGOで3日間とも晴れるのは珍しい。昨日までの低温から一転、暖かい好天の中で22周のレース2がスタート。ホールショットは水野が奪う。長島、中須賀、伊藤和樹(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)、野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)の順に1コーナーに進入する。S字で野左根が伊藤をかわして4番手浮上。この上位4台がこれから毎周順位が入れ替わる激しいバトルを展開する。
オープニングラップは水野が制し、長島、中須賀、野左根、國井勇輝(SDG Team HARC-PRO. Honda)の上位5台。
2周目のSPインコーナーで長島が水野のインを突いてトップ浮上。「ダンロップタイヤのウォームアップ性を活かして温まりにくい左コーナーでやはり抜いてきました」と水野。
その先のシケイン進入、コンパクトなラインで中須賀が水野を刺して3番手浮上、さらに野左根がSPインで水野のインを突く。これで水野は4番手に後退。
水野がこのまま黙っているわけがない。バックストレートで野左根のスリップから抜けると馬の背コーナーでインに飛び込み3番手を奪い返す。さらに4周目の1コーナー、今度は中須賀のインを突いて2番手に浮上するとバックストレートでトップの長島をアウトから抜きにかかる。しかしここは長島が抑える。5周目のホームストレート、ドゥカティの直線の速さを活かしてあっと言う間に長島を抜き去る。しかし3コーナー進入で長島が抜き返す。
水野と長島のデッド・ヒートは続く。バックストレートで再び長島をパス、しかし長島は最終シケイン進入で強力なブレーキングで水野の懐に飛び込む、僅かに外側に膨らんだ水野の隙をついて中須賀・野左根がパス、再び水野は一気に4位にドロップダウン。まるでGP250ccクラスのような激しい順位争い。
誰も水野を前に行かせたくなかった。
「昨日のレース1のようにタイヤのウォームアップに時間をかけたわけではありません。スタートが上手く決まったので前でペースをつくろうと思いましたが長島選手に抜かれてしまいました。その後中須賀選手、野左根選手にも抜かれたのは自分のミスもあります。ほんの僅かなミスで抜かれる、一瞬も気を抜けない序盤でした」と水野。
ここまでトップを走る長島。レース1の反省を元に対策を講じた。温度が上がると予想したのでセパンテストで感触が良かったリアタイヤを投入。レース1で激しかったチャタリング対策とリアタイヤに合わせて各所をアジャストした。さらにレース1のデータとタイヤに合わせて走り方も変えた。レース1終了後、滅多に見せることがない暗い表情は相当悔しい思いをしたことを物語っていた。
4番手まで下がった水野だが慌てることはなかった。初日から言っている「俯瞰で見られる余力」で冷静に再び順位を上げていく。
7周目のホームストレートで野左根を、8周目に中須賀を、そして9周目に長島を捉えてトップに浮上。いずれも圧倒的に速いストレートで一気に抜き去った。
「直線が速いと言うことは武器になります。同時に、リスクの少ないところでパッシングできるので精神的にも負担が少ないです」
直線だけと言うが「コーナーも速い」と中須賀。
「ヤマハの特性を活かしてコーナーで詰めるけどストレートでバビューンと行ってしまう。コーナーだって去年よりすごく速くなっている。相当まとまっているなと思いました」
中須賀が認めるほどの速さを見せる水野、トップに立つと1分25秒台にギアを一段上げて後続を引き離しにかかる。だがここで中須賀も動く。10周目のバックストレートで長島のスリップから抜けると馬の背コーナー進入でパッシング。クロスラインで抜き返そうとする長島のインを閉じて巧みにブロック。2番手に浮上、水野の追撃態勢に入る。
「一歩引いて後方からわちゃわちゃを眺めていました(笑)」
レース1で2回ギア抜けのミスをしたのは「レースに集中していたつもりですがどこか集中し切れていかなった、結果的に水野選手にプレッシャーをかけることができなかった」と反省。
中須賀の言葉の通り水野にプレッシャーを与える。2番手に上がってから1分25秒台に入れ、13周目には1’25″670のベストタイムをマーク。それまで約1秒あった差は15周目には0.2秒、テール・トゥ・ノーズまで追い詰めた。
「昨日の反省もあるので今日はミスなく後ろからプレッシャーをかけ続けました。タイヤマネジメントも考えながら走行を続けましたが序盤のわちゃわちゃでタイヤを使ってしまいました」と中須賀。それでもレース1よりタイヤの荒れが少なかったと言うことはそれだけ集中して走っていたと言うことだろう。
一方の水野。中須賀が一向に離れない。レース1とは明らかに違う。そこで勝負に出た。
「序盤に順位を落としてからトップに立つまでにタイヤを使ってしまいました。トップに立ってからもプッシュし続けて走ってきましたが、中須賀さんが全然離れない。残り5周の時点で余力を残すのは止めて全力で予選アタック並みに攻めようと思いました。かなりリスクが高く、途中何度も転倒しそうになりましたが、そこまでしないと中須賀さんを抑えるのは無理だと思いました」
すると信じられないことにレース終盤の18周目に予選タイムを上回る1’25″465のファステストラップをマーク!これで勝負あり。そのまま水野が逃げ切り今シーズン開幕から3連勝。昨年の最終戦鈴鹿から5連勝を飾った。
「最初から最後までプッシュし続けたレース。終盤にギアを一段上げてファステストが出せるほどマシンのセットアップはまとまっていました。相手のミスで勝ったと言う感覚もなく、自分もミスなく、相手も全力を出し切って臨んだ正真正銘の真っ向勝負で中須賀さんに勝てた、これが嬉しくて、今までのレース人生の中で一番嬉しい勝利でした」
2位は悔しい中須賀。「当然ながら勝てるレースとそうでないレースがあります。勝てない時に如何にポイントを獲るか。そう言う意味では開幕戦の自分はダメでした。
今回、自分たちの出せるチカラは全部出し切り、全力で勝負しました。結果は完敗。水野選手が一枚も二枚も上手だったと言うこと。素直に優勝おめでとう、と言いたいです。但し、このまま眺めているつもりはサラサラありません。次戦オートポリスは地元のサーキット。この借りは返すつもりです」
あの負けず嫌いの中須賀が素直に負けを認めた。滅多にないことだ。それだけ水野が速かった。マシンだけではない。水野自身も強くなった。
「中須賀選手とのバトルで最後にもう一度プッシュできたのも、余力というかあともう一歩行ける、という自分が見えたのでリスクを負うのは覚悟の上で攻めました。そういう意味では冷静さは保てていたと思います。全力を尽くせば結果は付いてくるだろうし、結果が出なかったとしてもそのプロセスが大切なので必ずその次に活かされると思います。」
「今年に入ってから落ち着いてレースができていますし、結果的に良い方向に向かっています。チームとしてのまとまりを感じています。ウィークの中で“オートポリスに使えそう”というセットアップを考えながら進めることもできました」
次戦に向けた準備も考えていたとは驚きであった。
長島と野左根の3位争い。昨日のレース1では最終ラップの最終シケインで野左根が勝負を仕掛けて勝った。レース2でもデッド・ヒートを繰り返す。ほぼ同じペースでラップを続ける2台。19周目のシケイン進入で長島が野左根をパス、昨日やられたことをやり返した。
野左根も懸命に追いかけるが今日の長島はペースが落ちない。最終ラップのシケイン進入で仕掛けようと考えたが「マシン1台分距離が足りませんでした」という野左根の言葉通り長島が抑え切って3位表彰台。野左根は悔しい4位。5位に國井勇輝が入った。
全日本ロードレース第2戦SUPERBIKE in SUGO 決勝レース1上位10位は以下の通り
1:#88 水野 涼 SDG DUCATI Team KAGAYAMA
2:#1中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING
3:#45 長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
4:#4野左根 航汰 Astemo Pro Honda SI Racing
5:#92國井 勇輝 SDG Team HARC-PRO.Honda
6:#5 伊藤 和輝 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
7:#12 日浦 大治朗 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
8:#10 鈴木光来Team ATJ
9:#95 西村 硝 S-PLUSE DREAM RACING -ITEC
10:#6岩田 悟 Team ATJ
- Photo & text:Toshiyuki KOMA




































