全日本ロードレース第5戦もてぎ。JSB1000クラスの公式予選は雨。難しいコンディションの中、#88水野涼(SDG DUCATI Team KAGAYAMA)が1分56秒352をマークし、ポールポジションを獲得した。2番手には#1中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)。1分56秒944。
転んでもタダでは起きないオトコ・中須賀、しっかり帳尻を合わせてきた。3番手には#92國井勇輝(SDG Team HARC-PRO. Honda)1分56秒995。4番手は#4野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)1分58秒055。昨日トップだった#45長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)は5番手:1分58秒989。
水野は久しぶりの全日本。木曜日の走行ではまずマシンを確認し、その午後には雨も経験した。そこで今週末の天候を見据え、ウエット用のセットアップを作っていた。金曜日のドライではレースを想定したロングランもこなした。
「本当に順調に今週はセッションを進められています」その積み重ねが、土曜日の雨で生きた。「予選序盤は雨量が多く1分58秒台で回っていました。一度ピットに戻り、そのまま待つことも考えましたがライバルたちが次々とタイムを上げてきたのでコースインしました」残されたわずかな時間で1分56秒352までタイムを縮めた。
「木曜日に作ったセットアップがうまく仕上がっていたので、最後の少ない時間でもここまでタイムを上げられました」昨日、水野は「連勝というより、もてぎは勝ちたい」と話していた。自分が得意だと思えるサーキットだから、勝ちたい。シンプルである。
朝から降り続いた雨は、JSB1000 Race1のスタートを迎えても止むことはなかった。15周の決勝。ポールポジションの#88水野がホールショットを奪う。その後方では#4野左根と#92國井が接触、野左根が弾かれるがが、S字で抜き返す。ヘアピンでは#1中須賀が國井のインに飛び込み、3番手に浮上、國井は4番手。
オープニングラップは水野が制しそのまま独走となると思ったがそうはならなかった。2周目のS字で野左根が水野の懐に飛び込み、中須賀も続く。水野は3番手にドロップダウン。
水野はこのとき思うようにペースを上げられていなかった。でも焦らなかった。
「タイヤのグリップも感じなくて、無理して追いかけなくてもいいかなと思いました」タイヤに熱が入るまで我慢することを選んだのだった。
一方、野左根は早く前に出たかった。「序盤からレースを引っ張ろうと思いました。タイヤを早く温めることは自分にアドバンテージがあると思っていました」。序盤から積極的に仕掛けて前に出るがレース中盤から終盤でドロップダウンしていた野左根だが今年は違う。最後までトップ争いに絡むレースが増えた。だから水野を押さえてレースをコントロールしたかった。中須賀もそれに続く。2周目は野左根、中須賀、水野というオーダー。
だが、タイヤに熱が入った水野は動く。V字で中須賀をかわすと、その同じ周に野左根にも仕掛ける。90度コーナーで前に出るが、野左根もクロスラインで抵抗。それでも水野は次の1コーナーで再び前へ出た。
「一台一台しっかり抜いていったところが、レースで一番大事なポイントでした」ここから、水野のレースが始まった。
5周目に1分56秒507、6周目にはこのレースのファステストとなる1分56秒164。水野は一気にペースを上げ、野左根との差を広げていく。しかし、本当の難しさはここからだった。
周回を重ねるごとに雨脚は強くなり、コース上の水量も増えていく。「ブレーキングポイントは毎周、いや「毎コーナー」変わリマました」と水野。12周目には1コーナーではコースアウトも喫した。それでも再びペースを戻してトップチェッカー!これで開幕6連勝。昨年の最終戦鈴鹿から数えると8連勝。
だが本人は、その数字に浮かれてはいない。「この波に乗れるうちは乗りたいと思います。この波はずっと続くわけではないので、伸ばせるうちは伸ばしたいですね」
その水野を後ろから追い続けた野左根が、興味深い言葉を残している。
「今までの涼じゃないというか、自信に満ち溢れた……雰囲気でなんとなく圧倒された」速さを数字で表すことはできる。しかし、同じコースを同じ条件で走るライダーにしか感じられないものがあるのだろう。
「ライダーしか多分感じないかもしれないですけど、それを感じさせるほど彼も強くなりました。悔しいですけどね」野左根はそう続けた。プライベートでは超仲良しの二人だがレースになれば負けられないライバル。だからこそ悔しい。
その野左根自身にも、この2位は意味があった。今大会からマシンがアップデートされた。序盤、その武器を生かしてトップに立ち、雨量が増してからも大きくペースを崩さず水野を追い、Astemo Pro Honda SI Racingへ移籍してから、地元もてぎでは初めてとなる表彰台を獲得した。
「ここまで勝ててないっていうのは、悔しさもありますし、申し訳なさもあります。だからこそ、このチームと一緒に勝ちたいです」
3位の中須賀にも、また違う葛藤があった。開幕戦もてぎは転倒でレースを終えている。だからこそ今回は、まず「しっかりレースをやり切る」こともひとつのテーマだった。水野、野左根を追いたい。しかし雨量が増し、前すら見えず、マシンがハイドロを起こす状況で、ブレーキングを詰めれば転倒のリスクも大きくなる。
「リスクを負うことができんやった」九州弁だ。九州弁の時は本音が多い。
それは守りに入ったという意味ではない。先ずは完走すること、データを残すこと、次に繋げること、攻めながらも冷静に展開を読む、それが中須賀。「でも優勝争いしていたら突っ込んだけどね」とも続けた。
「ベストは尽くしたけど、二人には及ばなかった、今回はそういうこと。」現在のマシンは2015年にブランニューで投入され、数々の勝利を納めてきたが流石に古さは隠せない。
「でもそれを言い訳にしてたら先がない。あるものの中で最大限の努力をし続けていけば、絶対またチャンスは巡ってくると思っています」無いものねだりはしない中須賀らしいコメントだ。悔しさを抱えながらも3位でチェッカーを受けた。
4位は國井。今回からバイクの乗り方を少し変えた。「バイクを曲げることを意識して乗り方を変えました。たったそれだけのことかもしれませんが“イケる”と言う自信がライディングに出ていると思います。何よりタイムに現れるのが正しい証拠だと思います」と続けた。
5位には前日のART合同走行でトップタイムを記録した長島哲太が入った。長島は3周目にトップ5の中でファステストを記録する場面もあったが、その後は徐々にトップ4から離され、単独5番手でレースを終えた。
昨日、「連勝というより、もてぎは勝ちたい」と話していた水野。その言葉どおり、得意なもてぎでまずひとつ勝った。そしてその背中を追った野左根が感じた、「今までの涼じゃない」強さ。その一言が今の水野涼を物語っているのかもしれない。
全日本ロードレース第5戦 SUPERBAIKE RACE in MOTEGI ART合同走行 決勝レースのTOP10は以下の通り
優勝:#88 水野 涼 SDG DUCATI Team KAGAYAMA
2位:#4 野左根 航汰 Astemo Pro Honda SI Racing
3位:#1 中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
4位:#92 國井 勇輝 SDG Team HARC-PRO.Honda
5位:#45 長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
6位:#6 岩田 悟 Team ATJ0
7位:#5 伊藤 和輝Team SAKURAI HONDA
8位:#85 津田 拓也 Team SUZUKI CN CHALLENGE
9位:#95 西村 硝 S-SPORTS SUZUKI
10位:関口 太郎 SANMEI Team TARO PLUSONE
Photo & text:Toshiyuki KOMAI


































