帰ってきた篠崎佐助③。連勝ならず、2位は負け。悔しさを滲ませた鈴鹿ラウンド

2021/07/23

2021年、7年ぶりに全日本ロードレースへ参戦した篠崎佐助(Team TECH2 & YSS)。篠崎佐助を追いかけるRacing Heroesのシリーズ第3弾。前戦筑波でハイサイド転倒を喫し、レース翌日の精密検査で肩の骨にクラックが判明。完治しないまま手負いの状態で鈴鹿大会に臨んだ。

梅雨末期の不安定な天候

鈴鹿ラウンドは梅雨末期と重なり不安定な天候の元で開催された。レースウィークは木曜日のハーフウェットから始まった。翌日のART合同走行も朝までの雨で路面は完全なドライではなかった。午後は一転して晴れ。路面温度は急激に上がり強い風も吹く。篠崎はレコード更新を目指して走るがタイムが伸びない。「1分30秒前半のつもりで走っている」がモニターに映し出される数字は31秒台。結局1分31秒655とトップタイムを刻んだものの求めていたタイムには届かなかった。「体感的には30秒前半のつもりでしたが31秒の表示に驚きました。ファイナルギアがロング気味でストレートの加速が今ひとつなので明日に向けて改善したいと思います。」

ポールポジションを逃す

翌土曜日は予選・決勝レースを1日で行う。朝一番に行われた予選。篠崎は序盤の3周目に1分30秒220でトップタイムをマーク。しかし篠崎の背後についていた田中直哉(JOYONE RACING)が30秒を切る2分29秒914でポールポジションを獲得。篠崎はスリップに入られても嫌わずにそのまま走行を続ける。「若いライダー達に速くなってもらいたい。そのために自分でよければ胸を貸す」篠崎自身もまだ27歳と若いのだが後輩の育成にも熱心だ。開幕から連続で獲得していたポールポジションを初めて獲れなかった。

ヘアピンでのパッシングを悔やむ

土曜日の夕方16時15分、8周による決勝レーススタート。篠崎は絶妙なスタートでホールショットを奪う。得意の先行逃げ切りで後続を引き離しにかかるが田中、中村龍之介(ENDLESS TEAM SHANTI)、鈴木悠大(キジマKISSレーシングチーム)の4台がひしめく集団となる。

「序盤から引き離したかったけど後ろをみたらこれは逃げるのは無理だと思いました」

4台の先頭集団はトップを入れ替えながら周回を重ねる。ストレートの速さが篠崎の強みであったが今回は他のライダーも同じくらいに速さをみせて速さを活かしきれない。

4台が入り乱れながらの凄まじいバトルのままファイナルラップを迎える。田中、中村、篠崎、鈴木の順にホームストレートを通過。鈴木がトップで1コーナーに進入するがアウトに膨らんだ隙を縫って中村がトップを奪う。篠崎はS字入口で鈴木のインを刺して2番手。そしてヘアピンの突っ込みで篠崎はトップを奪う。スプーン立ち上がりで篠崎のスリップから抜けた中村がバックストレートでトップに立つ。すると田中もスリップから抜けて130Rでインを突くが立ち上がりでは篠崎が前。しかしこの時中村はシケインで刺せるほどの距離にはなくそのままトップチェッカー。篠崎は2位。連勝が途絶えた。

「スプーン立ち上がりで後ろを見たらストレートで抜かれるな、と思いました。その後シケインで勝負、と思ったのですが、130Rで2台目(田中)が来るとは思っていませんでした。130Rで(田中を)抜いた時、2台に風で煽られたせいで(中村)龍之介選手がサーッと前に行ってしまい、シケインで刺せる距離ではありませんでした」ヘアピンでトップに立ったのが間違えだった、と悔やむ。

「スプーンまで後ろについてバックストレートで抜いて130Rに入り、シケインを抑える、がセオリーだったかなと思います。」ヘアピンでのパッシングに、笠井も日浦大治郎も「そこじゃないだろう!」と思ったそうである。

TEAM TECH2の藤原監督「今回マシンが今ひとつ詰め切れなかったのは(篠崎に)申し訳ないと思います。他方、佐助にはトップに立ったらトップの走りをして欲しかったです。4台のグループだったらスリップの後に1台しか来ないという事はあり得ない。3台来た時にどうするか、を考えていたのか、その上でどう闘うのかを考えるべきでした。また、途中で一度後ろに引いて様子を伺うのもどうかな、と。そんなメンタル的な部分が今回の勝敗を分けたような気がします」

ここまで負け無しの連勝を飾ってきた篠崎の記録はここで止まった。「連勝記録更新」「全戦全勝でチャンピオン」の周囲の声がプレッシャーになっていたことも事実だ。最後のシケインで無理をすれば突っ込めたかもしれない。だがチャンピオンシップを考えて止めたと言う。それが正解。大事なのはシリーズをチャンピオンを獲って終えること。鈴鹿終了時点で22.5ポイント差をつけてランキングトップに立っている。だが人一倍負けん気の強い篠崎、アタマではわかっていても「勝たなきゃ意味が無い、2位は負けと一緒」と悔しさを滲ます。

「次戦岡山は思い切り行きます」悔しさと共に何か吹っ切れた感のある篠崎の次戦に期待したい。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI