11月29日木曜日。第2戦のオーランパーク・レースウェイへ。ここはワイン・ガードナーの故郷ウーロンゴンからも60kmくらいのところにある。第1戦のコルダーパーク同様1962年にオープンしたサーキット。コルダーパークは今もあるようだが、オーランパークは2010年に閉鎖されてしまったようだ。1周2.6km反時計回りでアップダウンあり、立体交差ありのコースで、立体交差部分を除いてコース両脇のグリーンゾーン、エスケープゾーンは広い。とにかく広いってことを身をもって体感することになるとは思ってもみなかった。
ここは元々牧草地だったのだろうかやたらとハエが沢山いる。確かに匂いも牧場のような匂いがする。日差しを遮るものが無くとても暑い。モリワキチームは一つだけある扉に鍵のかかる小屋を提供され作業エリアとした。他と比べちょっと特別待遇かな。ここでもTV撮影のためガードナー選手、八代選手、宮城選手がカメラカーの先導でコースを走行。あいかわらず路面状況は良くないらしい。所々コンクリートパッチがある。
スタート・フィニュッシュラインのあるダンロップストレートの終わりにある1コーナーはマルボロコーナーで緩い左コーナー。短い直線があってその先のタイトな左コーナーを立ち上がるとすぐにグッドイヤーブリッジと言われる立体交差を下りながら潜り抜けすぐに右コーナー。シケイン状にコースが改修されていて、先ほどの右に続いてさらに右に回り込み左に切り返してまたすぐ右に回り込む。上っていって立体交差上を通ると下りながら右コーナー、そしてバルボリンS字があり、その先ほとんど左に直角に曲がるヤマハコーナーを立ち上がるとグッドイヤーストレートに緩やかなホンダコーナーと続き、短いストレートの先がカストロールコーナーと呼ばれるタイトな最終コーナーとなっている。と文章で書くとこうなる2.6kmのコース。立派なクラブハウスとメインストレートの最終コーナー寄りにスタンドがあるが、それ以外はコースサイドに建物などは無いに等しい。コースサイドの観客席はメインスタンド以外は全て緩やかな土手の草地。どこで見てもコースの大半は見ることができる。
オーランパークでは事件が3つ起こった。最初の一つは大したことではない。先ほどハエが多いということを書いたが、陽気のせいか風土のせいか、このハエがのんびりしている。立ち話をしていると、Tシャツの背中いっぱいにハエ、ハエ、ハエ。顔だろうが足だろうが手だろうが構わずとまってくる。現地の人はそんな状態でも気にしない。手で払うこともあまりしない。我々は顔や手にハエがくると手で払うのだが、のんびり屋さんのハエは避けることもせず、顔だろうが腕だろうが潰れてくれる。これがまた気持ち悪い。それを知っていてここの人たちは手で払ったりしないのかもしれない。私や森脇さんはハエが気になって仕方ないので、体に塗布する防虫スプレーを買いに行こうと連れ立ってサーキット近くのマーケットに行った。なんだかいろいろスプレーが置いてあったが、ハエや蚊に大きくバツ印がついていた強力そうなスプレーを買ってきた。森脇さんと私は、お互いのからだにたっぷりとこのスプレーを振りかけた。さらに森脇さんは掌に大量にスプレーしておもむろに顔を洗うようにたっぷりと塗りだした。さすがに私は腕に刷り込むくらいはしたが顔にはやらなかった。やっぱりバツ印が大きいのは効果テキメンで、体にハエが止まると、ポトリと落ちる。止まってはまた落ちる。二人してこの防虫スプレー良く効きますねぇと話しているのを、まわりの人たちが不思議そうに、いやこの人たちおかしいって顔で見ているのに気が付いた。
我々が防虫スプレーだと思っていたのは、そうではなくて、とても強力な殺虫剤だと教えられた。もちろん二人はすぐに水のあるところへ行って直接皮膚に塗りこんだところをゴシゴシと洗うことになった。森脇さんはことさら念入りに顔を洗っていた。それからはハエが止まっても手で払うことを極力やめてなすがままにすることにした。そういえばここで森脇さんのハエの観察結果を聞いた。ハエを手づかみにする方法。ハエは止まって揉み手をしているときはリラックスしていて、揉み手をやめて足をつけたときは警戒している。そして飛び立つときはヘリコプターのように真上に一度上がってから前へ進んでいく。だから止まっているハエの上5cmくらいのところをハエの前の方から横に手を動かして握ると、勝手にハエが掌に入ってくる。なるほど、よーく見てみるとハエの離陸はそんな感じだった。やってみると確かに捕まえられる。面白い。日本に帰ってきてから何度か挑戦したが成功率はこの時の半分以下に落ちてしまった。日本のハエの方が機敏みたい。そんなことをしている間にも八代選手、宮城選手はコースを走りピットに戻ってはセットアップを続け、さかんに森脇さんともコースの走り方などディスカッションしていた。二人とも結構もがき苦しんでいるようだ。
つづく