2019年鈴鹿8耐 決勝レース

2019/07/30

前代未聞のゴール後に判定修正。Kawasaki Racing Teamが26年ぶりの優勝!2位YAMAHA FACTORY RACING TEAM。3位Red Bull Honda

2019年鈴鹿8時間耐久ロードレースは、ゴール2時間後に暫定結果変更という前代未聞の事態となった。暫定優勝だった#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMが2位、3位に#33 Red Bull Honda、そして順位認定されなかった#10 Kawasaki Racing Teamが優勝という正式な暫定結果となった。

暫定結果変更の理由は後述するが、今大会は近年希に見る素晴らしいレースであった。8時間走り終えて、優勝と2位の差がわずか18秒、2位と3位の差が48秒という接近戦であった。

今大会はホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4メーカーバトル勃発として騒がれていた。事実、3大ワークスの鍔迫り合いであった。特に中盤から終盤にかけてのバトルは耐久レースとは思えないスプリントレース並みの接近戦を展開した。

ホールショットは#95 エスパルスドリームレーシングIAI ブラッドリー・レイが奪う。#10 Kawasaki Racing Team:レオン・ハスラム、#1 F.C.C. TSR Honda France:ジョシュ・フック、#33 Red Bull Honda高橋巧と続く。130Rでジョシュ・フックがトップを奪いオープニングラップを制する。2番手に#12 ヨシムラスズキMOTULレーシング:シルバン・ギュントーリ、3番手に#95 トミー・ブライドウェル、4番手に#10 レオン・ハスラム、5番手に#21 中須賀克行、6番手に#33 高橋巧、7番手に#3 KRP三陽工業& will raise RS-ITOH岩戸亮介、8番手に#7 YART-YAMAHAニッコロ・カネパ、9番手に#2 Suzuki Endurance Racing Team(SERT)グレッグ・ブラック、10番手に#11 TEAM SRC KAWASAKI FRANCE エルワン・ニゴンの上位10台。

3周目に#12シルバン・ギュントーリがトップを奪うと26周目までをトップで通過する。27周目に#21中須賀がトップを奪うが30周目にピットインを行い3番手。31周目に#10 カワサキが、そしてなんと#33ホンダは33周目にピットインする。第1スティント28周がスタンダードだったがここ最近第1スティントの周回数を延ばすトップチームが多い。SCが入ったとは言え#33ホンダが33周まで引っ張ったのは燃費が良い証だ。

1回目のライダーチェンジを終えると順位が落ち着いてくる。やはり#21 ヤマハ、#33 ホンダ、#10 カワサキの3チームが上位3つのポジションを入れ替えながら時間が経過する。

第4スティントに1回目の三つ巴のバトルが観られた。90周目、トップ#33高橋巧のマージンは1分9秒330。91周目にステファン・ブラドルにライダーチェンジ。コース復帰後のマージンは7秒973にまで縮む。ここから2番手#10ジョナサン・レイと3番手#21中須賀が猛追。99周目には0.916秒にまで追い上げテール・トゥ・ノーズのバトルとなる。そして100周目のシケインで#10レオンと#21中須賀が一気に#33ステファンをパスすると、その差を開き始め112周目には10秒612まで広がる。

2度目のバトルは残り時間3時間を切った第5スティント後半。トップを走る#10レオン・ハスラムと#33高橋巧、#21アレックス・ローズの差は129周時点で5秒519あったが、138周目には0.191秒。そして139周目のS字、バックマーカー4台に前を塞がれた#10レオンのアウト側から#33高橋がパス、#10 レオンはダンロップコーナー進入でもバックマーカーに引っかかり、イン側から#21アレックス・ローズがパス、#33高橋、#21アレックス、#10レオンの順番に変わる。

今年の最大のドラマは最後に起きた。最終スティント。トップを守っていた#33高橋が最後のピットイン。ここでホンダは勝負に出る。ラップタイムペースが速い高橋をそのまま走らせダブルスティント。疲れているはずの#33高橋は2分8秒台の快走を見せてチームの期待に応える。しかし、ここで信じられない速さで走行するマシンがいた。#10ジョナサン・レイである。夜間走行の時間だというのに2分7秒台で#33高橋をプッシュ。ついに202周目にトップを奪う。しかしその直後、スプーンカーブで雨の情報。東コースではさほど感じられないがさすがに#10ジョナサンもペースを落とさざるを得ず2分11秒台で走行。

ここで#21アレックス・ローズがスパートをかける。ダブルスティントで疲れが出たか#33高橋のペースが上がらない。#21アレックスは#33高橋より約3秒速いラップタイムペースで追い上げると210周目に2番手に浮上する。誰もがこの順位でゴールするだろうと思っていた矢先の残り5分。#2 SERTのエンジンが悲鳴を上げる。白煙を上げてS字ひとつめのグラベルにマシンを止める。さらにこの直後のファイナルラップに悲劇が起こる。なんとトップ快走中の#10ジョナサン・レイが転倒。オイルに乗ったと推測される。ここで赤旗掲示、そして19:30の8 時間を迎える。#21ジョナサンのマシンは動かず。暫定結果では#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMが優勝、2位#33 Red Bull Honda、3位F.C.C. TSR Honda Franceと発表され表彰式が行われた。

しかし、この結果にカワサキが抗議。ゴールから約2時間半後の21:50、優勝は#10 Kawasaki Racing Team、2位YAMAHA FACTORY RACING TEAM、3位Red Bull Hondaに修正された。

理由はこうだ。FIMレギュレーションには「赤旗中断後、5分以内にマシンとライダーが自力でピットに戻ってこなかった場合は順位認定せず」と言う項目がある。審査委員会はそれに準じて#10カワサキを完走扱いせず#21ヤマハ優勝の暫定決定を下した。しかし、カワサキからの抗議を受けて再度検証したところ、上述の「5分以内にピットへ戻る」と言う項目は「EWCレギュレーション」には記載されていなかった。(MotoGPとWSBKでは明文化されている))記載されていたのは「赤旗中断・終了の場合、赤旗が出る1周前のラップがレース結果として適用される」であった。この規定により、優勝は#10 Kawasaki Racing Teamに変更された。

ヤマハもホンダも抗議する権利はあるが、この裁定を受け入れた結果、正式な暫定結果として成立した。ヤマハとホンダのこの対応も賞賛されるべきであろう。

2019年の鈴鹿8耐は近年希にみる超接近戦の素晴らしいレース展開であっただけに、最後のドタバタが非常に残念である。

2018-2019 FIM世界耐久選手権シリーズ最終戦 鈴鹿8時間耐久ロードレース ト決勝レース上位10位は以下の通り。(2019年7月29日 正式発表)

優勝:#11 Kawasaki Racing Team ジョナサン・レイ/ レオン・ハスラム/ トプラック・ラズガットリオグル
2位:#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 中須賀克行/アレックス・ロウズ/マイケル・ファン・デル・マーク
3位:#33 Red Bull Honda 高橋巧/ 清成龍一/ ステファン・ブラドル
4位:#1 F.C.C. TSR Honda France ジョシュ・フック/フレディ・フォーレ/ マイク・デ・ミリオ
5位:ヨシムラスズキMOTULレーシング 加賀山就臣/ 渡辺一馬/ シルバン・ギュントーリ
6位:YART-YAMAHAブロック・パークス/ マービン・フリッツ/ ニッコロ・カネパ
7位:#634  MuSASHi RT HARC-PRO. Honda 水野涼/ ドミニク・エガーター/ チャビ・フォレス
8位:#95 エスパルスドリームレーシングIAI 生形秀之/トミー・ブライドウェル/ブラッドリー・レイ
9位:#19 KYB MORIWAKI MOTUL RACING 清成龍一/高橋裕紀/トロイ・ハーフォス
10位:#72 Honda Dream Sakurai Honda 濱原颯道/ 伊藤真一/ 作本輝介

photo & text : Toshiyuki KOMAI