全日本ロードレース第7戦オートポリス 決勝レース2

2021/09/21

最高峰クラス史上初の快挙:全戦優勝を決めた中須賀克行。 2位:名越哲平、3位:濱原颯道

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が最高峰クラスでは史上初の全戦優勝を達成。地元九州で有終の美を飾った。2位にシーズン後半から上位に食い込んできた名越哲平(MuSASHi RT HARC-PRO. Honda)、3位は上位常連となった濱原颯道(Honda Dream RT 桜井ホンダ)が入った。

決勝日も朝から爽やかな秋空が広がる好天。JSB1000のレース2は18周、午後3時20分にスタートが切られた。“今シーズン初の渾身のスタート”だったという中須賀がホールショットを奪う。名越、加賀山就臣(Team KAGAYAMA)、濱原と続いて第1コーナーに進入する。

中須賀はスタート直後から飛ばす。「スタートで誰かに抜かれると思っていたら決まってしまいました。だったら序盤からペースを刻むことにしました」その思い通り1周目のジェットコースターストレートでは2番手の名越との差を広げる。

オープニングラップは中須賀が制し、以下、名越、加賀山、濱原、秋吉耕佑(MURAYAMA.TJC.RT)、亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)、津田一磨(Team BabyFace Powered by YOSHIMURA)、岩田悟(Team ATJ)、山口辰也(TOHO Racing)、柳川明(will-raiseracingRS-ITOH)の上位10台

中須賀はオープニングラップを1分48秒台の速さで周回すると、3周目に1分48秒896のファステストラップをマーク、5周目には2番手名越との差を2秒177にまで広げて独創体制を築く。

昨日のレース1では柔らかめのタイヤで中須賀に勝負を挑んだが気負いから第2ヘアピンでオーバーラン、7位に沈んだが、ラップタイムペースは2番手・3番手のライダーと変わらない走りで追い上げた。レース2ではスタートも決まり、中須賀の後ろから食らいつく。5周までは1分49秒台のペースでラップするが6周目から50秒台に落ちて中須賀との差が広がった。さらに名越の背後に濱原が迫ってくる。

濱原は3周目の第1ヘアピン進入で加賀山をかわして3番手に浮上する。2番手を走る名越よりも約0.2秒速いラップタイムで周回、約1秒あった差を8周目には0.302秒にまで縮める。名越の後ろにピタリと張り付き11周目の左100Rで名越を捉えて2番手に浮上する。“どこで抜けばホームストレートで抜かれずに済むか”を考えながら走っていた濱原。しかし9週目のホームストレートで再び名越が抜き返す。

「後ろの濱原選手が余力があるのか無理しているのか分からない状態で走ることでタイヤも使ってしまいました」「抜かれてから後ろに付いてみたら結構キツそうだったのでこれなら自分のペースで走れると思い、抜き返しました」と名越。名越と濱原がバトルをしている間に亀井が近づいてくる。

亀井は2周目の最終コーナーで加賀山の僅かなミスを逃さず立ち上がりでパスして4番手に浮上すると、前を行く濱原を追いかける。亀井は朝のウォームアップ走行で多重クラッシュに巻き込まれた。1コーナー進入で転倒した山口のマシンが亀井の背後から激突。右足腓骨骨折が完治していない亀井の右足はスタート前にはブーツに入らないほど腫れ上がっていた。その転倒で決勝レースはTカーで走るが仕様が違うのでフィーリングも違う。さらに右足の痛みが増す。「タイヤマネジメントは自分の方が良かったかも」という亀井は濱原を追い上げるが、わずか0.260秒追いつかず4位でフィニッシュする。

トップの中須賀は相変わらず1分49秒台で周回、レース折り返しを過ぎた10周目には7秒605の差をつけ完全に一人旅。それでも尚、集中力を切らさず49秒台中盤のタイムを刻む。最終的には16秒913もの大差をつけて今シーズン10勝目を挙げる。今シーズンSUGOのレース1が視界不良のためキャンセルとなったが、開催されたレース10戦全て優勝。これは最高峰クラスでは史上初の快挙だ。さすがの中須賀も全戦全勝を獲りたいと思ったら緊張したそうである。

激しい2位争い。名越と濱原:0.150秒差、濱原と亀井:0.379秒差の団子状態でファイナルラップを迎える。三つ巴のバトルが各コーナーで展開されるが、名越が抑え切り2位でチェッカー。濱原が3位、亀井が4位でチェッカー。

今シーズン序盤はブリヂストンタイヤを“潰して曲がる”ことに苦労した名越。目指すのはあくまでもトップ。そのために自分が履きやすいタイヤで走っても意味はなく、トップチームと同じタイヤで走らなくてはならない。突如エースライダーに抜擢されたことと、期待通りに走れないことの焦りから空回りした感があったが、後半戦鈴鹿から課題を克服することができるようになってきた。すると自信もついてくるので名越本来のパフォーマンスを発揮できるようになってきた。

「自分のようなライダーは結果を出さないと次が無い、ここで転倒したら誰も乗せてくれなくなるのでは、という不安とプレッシャーを感じながら毎戦走っていました」と濱原。それを裏付けるように今シーズン転倒はなかった。全戦完走。シリーズランキングも2位を獲得。「桜井ホンダさんが自分を走らせてくれたことに応えるためにもホンダで一番になりたい。と思っていました。」

4位の亀井。「朝フリーの転倒でマシンと右足にダメージを負いながらも2位争いができたのは良かったかなと思います」「但、表彰台に登るには周回数が足りませんでした」と悔しがる。レース後半、右足の感覚は無かったそうだ。
今シーズンの亀井をひと言で表すなら「躍進」だろう。常に上位争いに絡み、2度表彰台に登った。各サーキットで自己ベストを更新した。シリーズランキングは昨年の11位から6位に上がった。「来年に繋がる走りができました。マシンは詰めなくてはいけないところが大量にありますが、それに対して若いメカニックたちが目を輝かせているので来年はもっともっと伸びると確信しています」

5位には加賀山。オートポリスでは合わせきれなかった、と悔しがる。グリップ感不足に悩まされフロントのチャタも解決できなかった。得意のスタートを決めて良い位置どりにいるのだがペースを上げられず我慢の走りを強いられた。

今シーズンの全日本ロードレースは終了した。来年のシーズンまで半年以上空く異例のシーズンとなった。

中須賀の絶対的な速さが光ったシーズンであった。他方、濱原、名越、亀井など若手ライダーが上位争いに絡んできて今後に期待が持てるシーズンでもあった。

優勝:中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)記者会見

「スタートが自分でもビックリするくらい決まりました。1コーナーで誰かに刺されるかな、と思ったけどトップに立てました。前に出られたら一気に攻めて引き離しにかかる、と決めていたのでそういう意味では作戦通りの展開になりました。あとは集中して自分のリズムでペースを刻んで行きました。昨日のレース1の後、タイヤのライフを確認できたので今日はもう少しラップタイムを上げられると思いペースを上げました。タイヤマネジメントもしっかりできたかなと思います。

全戦優勝という記録ができたのも、パンデミックの中、各大会のサーキットが医療従事者さんたちと掛け合ってもらって開催していただいたおかげだと感謝しています。また、開幕から安定したバイクを提供してくれたヤマハ発動機と支えてくれたチームスタッフに感謝しています。そこがない限りこの結果というのは得られなかったので、みんなで勝ち取ったチャンピオンです。1年間安定した結果を残すことができて非常に嬉しく思っています。」

2位:名越哲平(MuSASHi RT HARC-PRO. Honda)記者会見

「昨日はスタートで出遅れた焦りから自滅してしまいましたが、その後のラップタイムをみてしっかり走り切れば表彰台争いはできるなと確信を持てました。今日のレース2では冷静に走ることを心掛けました。今日も柔らかめのタイヤを履いたので序盤にもっと中須賀選手と絡みたかったのですが離されてしまいました。

濱原選手に抜かれましたが後ろからみたらキツそうに見えましたのでさらに冷静になれました。レースの後半になると濱原選手の堅めのタイヤにアドバンテージがあるので抜かれた後に直ぐに追い抜きました。その後はしっかりと自分のリズムで走り2位を守り切れました。シーズン序盤ではそんなことはできなかったです。自分が求めているのはこの位置ではありませんがシーズンを通して成長を感じられる締めくくりとなりました。

また長年お世話になってきたメインスポンサーである武蔵精密工業さんとの最後のレースだったので、感謝の思いを背負いながら走りました。本当に感謝しています。」

3位:濱原颯道(Honda Dream RT桜井ホンダ)記者会見

「鈴鹿ではチームメイトの(日浦)大二郎選手がめちゃくちゃ速くて、岡山では思った通りの走りができなかったので、オートポリスは気合入れようと思って頑張ってプッシュしたので最善を尽くせたかなとは思っています。僕みたいなライダーが地道に結果を残していくにはまず走りきること。そして結果を出せるところでキチンと残すこと。それがプレッシャーとなっていました。転んで結果を出せなかったらどこも乗せてくれないのではないかと思いながら毎戦走っていました。名越選手を抜いた後に突き放せるんだったら突き放そうと思ったのですが、勝負を仕掛けて確実に仕留める場所が今回はありませんでした。

コロナで企業の業績が悪化している中で全日本ロードだけ全戦できたことには感謝しています。そして桜井ホンダが今年も僕を使ってくれたことに応えるためにも、ホンダで一番になりたいと思っていました。そうなってからヤマハファクトリーと闘いたいと思っていました。それが達成できたことはよかったです。」

 

全日本ロードレース第7戦オートポリス 決勝レース2上位10台は以下の通り

優勝:中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2位:名越哲平 MuSASHi RT HARC-PRO. Honda
3位:濱原颯道 Honda Dream RT 桜井ホンダ
4位:亀井雄大 Honda Suzuka Racing Team
5位:加賀山就臣 Team KAGAYAMA
6位:秋吉耕佑 MURAYAMA.TJC.RT
7位:柳川明 will raise racing RS-ITOH
8位:岩田悟 Team ATJ
9位:黒木玲徳 GOSHI Racing
10位:清成龍一 Astemo Honda Dream SI Racing

Photo & text : Toshiyuki  KOMAI