手がつけられない速さだ。水野涼(SDG DUCATI Team KAGAYAMA)がコースレコードを更新する1’25.336をマークしてポールポジションを獲得。その勢いのままレース1を制してポール・トゥ・ウィン。これで昨年最終戦鈴鹿から4連勝を飾っている。
だが水野からは気負いや緊張感が感じられない。肩の力が抜けているというか自然体だ。本人曰く「大人の階段を登っているんですよ」とのこと。確かに今シーズンの水野は変わった。
例えば予選。「ポールポジションは“取れれば良いかな”程度に考えています。大事なのは決勝レースですし、その決勝レースも勝てる時もあれば勝てない時もあります。勝てない時に如何にポイントを獲るか。最終目標はシリーズチャンピオン。そこに向けて何をすべきか、大切なのは何なのか、を考えられるようになりました。去年までだったら“絶対にポールポジションを獲ってやる”と気負っていたと思います」
昨日はそんなことを言っていたが蓋を開けてみればコースレコード更新。これには本人も驚いていた。
「気温も路面温度も低かったので柔らかめのタイヤでタイムを出す選択肢もありましたが、大切なのはタイムではなく良い結果でレースを終えることなので決勝用のタイヤで臨みました。序盤にタイムを出したら後半はロング(レース距離を想定した連続周回)を行いました。結果アベレージも昨日より上がって、セットアップが詰まってきていると実感しました。ですので25秒台に入れば良いなとは思っていましたがコースレコード更新と聞いて驚きました」
予選2番手は中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)1’25.336。予選3番手は長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)1’25.877。この上位3人が25秒台。
予選から4時間後、18周の決勝レース1が行われた。好天だが強く冷たい風が吹きつけるコンディション。気温10度、路面温度37度の中で14:25にスタート。
ホールショットは長島が奪う。中須賀、野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)、西村硝(S-SPORTS SUZUKI)の順に1コーナーに進入、水野は出遅れて5番手。オープニングラップは長島が制する。
長島を先頭に中須賀、野左根、水野の4台が先頭グループ。3周目の1コーナーで水野が野左根をパスして3番手浮上。S字で珍しく中須賀が後ろを振り返るシーンがあった。ギアがニュートラルに入ってしまい失速、後ろの水野が追突しないかと気にした。「水野選手が上手に避けてくれて助かりました」 水野は中須賀のわずかなミスを見逃すはずがなく馬の背の進入でインを刺すと2番手に浮上、さらに6周目のバックストレッチで長島を捉えるとトップに浮上する。
「風が強く気温も低かったのでタイヤを温めるのに時間をかけました。スタートで出遅れた分を取り戻すのに6周を要してしまい、反省点です」と水野。ここから先頭でグループを引っ張る。
前を追いたい中須賀は6周目の10%勾配登り坂で、長島をパスする。長島がフロントをウィリーさせて一瞬失速したスキを突いて一気に駆け上がり2番手に浮上する。
水野と中須賀のトップ争い。間を空けて長島と野左根の3番手争い。その後方では國井勇輝(SDG Team HARC-PRO. Honda)と伊藤和樹(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)の5番手争いが展開される。
長島をパスした中須賀は7周目に1分25秒台に入れると25秒台を連発する。水野も10周目に1’25″781のベストタイムをマーク、トップ2台だけ25秒台の異次元の走りを続ける。中須賀は11周目に1’25″674のファステストを叩き出すと水野の背後にまで迫った。しかし再びギアがニュートラルに入るミスをしてしまい0.2秒まで縮めた差が1.2秒まで開いてしまった。この1秒の差は大きい。そのまま水野がトップチェッカー!ポール・トゥ・ウィンを飾る。
「決勝レースのアベレージが一番良かったです。事前テストが26秒台中盤、予選が26秒台前半に対して25秒台後半を刻めました。ウィークに入ってからはバイクのセットアップはあまり変えず走り込みを増やしました。それが良かったようでバイク的には良いレースでした。ですが内容的には自分が想定していた展開ではなかったので反省点が残るレースでした。
スタートで出遅れてしまい、タイヤのウォームアップに時間をかけ過ぎました。トップに出てからもラップを刻めましたが中須賀さんがギア抜けのミスをしたから差が開いたというラッキーな部分もありました。それらを考えると課題が残るレースでした。」
「もちろん常に勝ちを狙いますが、そこに拘り過ぎるとどこかで破綻することもあります。勝てるレースで確実に獲り、可能性の低いレースでは確実にポイントを獲る、と割り切れると事前テストもレースウィークの進め方も違います。大切なのはチャンピオンを獲ること。目先のことだけを追いかけるのではなく俯瞰した目でレースに向き合うことができるようになりました」
今年の水野は良い意味で力を抜いてリラックスして臨んでいるように見える。「大人の階段を登っている」とはこのことなのか、と実感した。
2位の中須賀。「予選では水野選手に(自分が持つ)コースレコードを破られてしまいましたが自分もレコードに近いタイムまで詰めることができたのはポジティブに考えています。決勝レースでは2回もミスをしてしまい結果的に1秒以上のアドバンテージを与えてしまったことは反省点です。でも逆に言えばそれがなければもっと迫れると言うことです。明日はもっとプレッシャーを与えられる走りをしたいですね」
「今回は少し柔らかめのタイヤをセレクトしました。そうしないと25秒台でラップすることはできません。そのペースでなければ水野選手について行くことができないのです。ですがその分タイヤへの攻撃性が高まり表面が荒れてしまします。タイヤマネジメントとプッシュ。このバランスとリズムをキープすることが難しかったです」
3番手争いをしていた長島と野左根は最終ラップのシケイン進入で野左根がインを突いて勝負が付いた。
「金曜日に転倒してから少しリズムが合わなくなった感はあります。予選でももっとタイムが伸びると思っていました。決勝レースでは水野選手と中須賀選手のペースに付いて行くことができず、長島選手のペースも速かったので仮に抜いたとしても抜き返されると思ったので、最終ラップのシケインで勝負すると決めていました。結果的に上手くいって良かったですが悔しいレースでした」と野左根。
「予選では25秒台にも入れられましたし、決勝レースも想定していたラップタイムで周回できました。ですがトップの2台のペースが25秒台と昨日までよりも一段上がってしまいました。そこに付いていけるだけのパッケージではありませんでした。そして何より最終ラップで野左根選手に前を譲ってしまったことが悔しいです。」
自分のやるべきことができなかったことが情けないと落ち込んでいた長島を見るのは珍しい。
全日本ロードレース第2戦SUPERBIKE in SUGO 決勝レース1上位10位は以下の通り
1:#88 水野 涼 SDG DUCATI Team KAGAYAMA
2:#1中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING
3:#4野左根 航汰 Astemo Pro Honda SI Racing
4:#45 長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
5:#92國井 勇輝 SDG Team HARC-PRO.Honda
6:#5 伊藤 和輝 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
7:#6岩田 悟 Team ATJ
8:#12 日浦 大治朗 Honda Dream RT SAKURAI HONDA
9:#85津田 拓也 Team SUZUKI CN CHALLENGE
10:#95 鈴木光来Team ATJ
Photo & text:Toshiyuki KOMAI

























