浦本修充(AutoRace Ube Racing Team)が速い。朝9時から行われた公式予選。中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が1分25秒台に入れると浦本、野左根航汰(Astemo Honda Dream SI Racing)も25秒台に入れる激しいタイム争い。そして最後の最後に浦本が1’25.373を叩き出してポールポジションを獲得。
昨年岡本裕生がマークしたコースレコードまで100分の4秒差だった。2番手と3番手が1’25.570同タイムと言う珍しい事態。先にタイムを出した中須賀が2番グリッド、3番グリッドに野左根。「ポールは嬉しいですが大事なのは決勝レース。中須賀さんが速いので集中したいと思います」と相変わらず控えめなコメント。4番グリッドは津田拓也(Team SUZUKI CN CHALLENGE)、5番グリッドは名越哲平が獲得した。
午後1時15分、22周の決勝レース1がスタート。
ホールショットは野左根。中須賀、浦本と続いて1コーナーに進入する。そのまま野左根航汰がオープニングラップを制する。「(野左根)航汰のペースが思ったほど上がらなくて、先頭グループが7台に膨らんだので一度前に出て自分のペースで走りたいと思いました」と考えた中須賀が4周目の1コーナーでトップを奪う。
ここで衝撃的な映像が映る。3番手を走行していた浦本が緊急ピットイン。場内は騒然とする。「3周目の1コーナーでガラガラと異音がして裏ストレートでアクセルを開けるとエンジンが空回りしてクラッチが滑っていると思いピットインしました」ここまで圧倒的な速さを見せていただけに残念である。
中須賀は一気に26秒前半にまでペースを上げ、11周目に25秒台に入れる。しかもその後6週連続で25秒台でラップ、16周目には1’25″732のファステストラップをマークする。ここで想定外のことが起こる。野左根が離されず付いてくる。序盤のスタートダッシュに定評があるのだが中盤以降ペースが上がらないことが課題であった。今回は中須賀が25秒台に入れても25秒台でラップ、しっかりと付いていく。
「今年スイングアームを新しくしたりマシンが大きくモディファイされました。もてぎは時間が足りず効果が出ませんでしたがここSUGOではまとまってきて進化していることを実感しました。」
「ですが自分でもここまでのハイアベレージで走れるとは思っていなかったので嬉しい誤算ではありました」
3番手は津田が単独走行。スタートで2つポジションを落としてしまい、長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)、伊藤和輝(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)、岩田悟・鈴木光来(Team ATJ)の集団に飲まれ、そこから抜け出すのに7周を要してしまった。3番手に浮上して時点で前とは5秒近く空いていた。
「ホンダ車やファクトリー車に比べてストレートスピードでは勝てず、リスクを承知でコーナーで長島選手や伊藤選手を抜くしかなかったので時間がかかってしまいました。」
レース終盤、中須賀のペースが落ちた。一度は引き離した野左根が背後にまで迫ってきた。
「タイヤマネジメントには気をつけていたつもりですが、自分たちが選んだタイヤでは想定以上に路面温度が低く、タイヤが荒れて一気にタイムが下がってしまいました。対して航汰は自分ほどタイヤは荒れてなさそうでしたので終盤厳しかったです」25秒台でラップしていた中須賀が21周目には27秒台にまで落ちた。
「後ろから見ていて中須賀選手の右側のタイヤが荒れているのはわかりました。自分はそこまでではなかったので中須賀さんよりは余力があったと思います」と野左根。
そしてフィナルラップ。激しくプッシュする野左根。巧みにブロックする中須賀。だが、ハイポイントコーナーで中須賀のインに飛び込みトップを奪う。バックストレートから馬の背コーナー進入のブレーキング勝負。
「自分もギリギリまでブレーキは我慢しました。でも中須賀さんはそれで止まれるの?って位までブレーキングを遅らせました」
ブレーキの突っ込みで前に出た中須賀はクロスラインで立ち上がろうとした野左根をブロック。最後の勝負どころのシケイン。アウト側にラインを変えてシケイン立ち上がりでインを取ろうとした野左根を中須賀がブロック、わずか1,000分の4秒差で勝利した。
3位には津田。カーボンニュートラルチャレンジで参戦後初の表彰台獲得にチームは沸き立つ。しかし、ゴール後に黄旗追い越し違反で30秒加算ペナルティが科せられ9位となった。4位入賞した日浦大治朗が繰り上げ3位となった。
「厳しいレースでした。25秒台にまでペースを上げたのですが航汰を離すことができず、最後は我慢比べかなと思っていたら自分の方がペースが一気に下がってしまい、抑えるのに必死でした。25秒台に入れるペースが早かったのかタイヤを荒らしてしまったことが反省点です。どっちが勝ってもおかしくないレースで自分が勝てたのは良かったです。」 中須賀の表情からはタフなレースだったことが伺えた。
野左根は悔しい2位。しかも1,000分の4秒差。
「あのハイアベレージについていけるのか未知数でした。ここまでマシンを仕上げてくれたチームに感謝です。終盤は自分の方が余力があると思っていたのですが、あの状態でも抜かせない中須賀選手の走りは凄いと思います。自分に足りないのはそこだと思います。その差が1,000分の4秒だと思います。負けたのは悔しいですが清々しい気持ちです」序盤のスタートダッシュに加えて、中盤以降もペースが落ちないとなると大きな武器となり上位争いに加わってくることになるだろう。
3位には日浦大治朗。「レース前半が厳しかったのですが、後半は自分のペースで走れて集団のトップで4位でした。棚ぼたとは言え3位に上がれたのは嬉しかったです。
でも、浦本選手や名越選手がいたら6位入賞できるかできないかぐらいの位置なので、明日もしっかりと気を引き締めて頑張りたいと思います。」
最後に津田に聞いてみた。
「裁定結果は結果なのでライダーのミスとして受け入れようと思います。ウィークに入ってから事前テストよりタイムは伸びましたし決勝レースでも26秒前半で走れています。決勝レースで野左根選手がここまで伸びてくるのは想定外でした。自分たちも確実に進化しているのですが野左根選手ほどの上げ幅がありませんでした。気持ちを切り替えて明日の決勝レースに臨みたいと思います。」
全日本ロードレース第2戦SSUGO 決勝レース1 上位10位の結果は以下の通り
1:#1中須賀克行YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2:#3野左根航汰Astemo Honda Dream SI Racing
3:#14日浦大治朗Honda Dream RT SAKURAI HONDA
4:#9伊藤和輝Honda Dream RT SAKURAI HONDA
5:#8岩田悟Team ATJ
6:#30鈴木光来Team ATJ
7:#10長島哲太DUNLOP Racing Team with YAHAGI
8:#13児玉勇太Team KODAMA
9:#7津田拓也Team SUZUKI CN CHALLENGE
10:#11関口太郎SANMEI Team TARO PLUSONE
Photo & text:Toshiyuki KOMAI