開幕からブレない水野涼の”俯瞰”「2位以上でチャンピオン」でも動じない。ライバルが認めた“ひとつ抜けた速さ”

2026/09/25

2026年全日本ロードレース選手権も残り2大会。JSB1000クラスは岡山大会を含め残り3レースとなった。

シリーズランキング首位は175ポイントの水野涼(SDG DUCATI Team KAGAYAMA)。2番手の長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)とは63ポイント差。岡山で水野が2位以上を獲得すれば、最終戦を待たずしてシリーズチャンピオンが決まる。そんな大きな意味を持つ岡山大会が、ART合同走行で幕を開けた。

午前の走行1回目は中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がトップにつけていたが、セッション最後の17周目に長島が1分31秒275をマーク。中須賀を0.093秒上回り、最後の一周でトップを奪った。水野は3番手、野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)は5番手で午前を終えた。

午後の走行2回目、存在感を見せたのが水野だった。7周目に1分30秒639を記録。中須賀も終盤に1分30秒645までタイムを縮めたが、わずか0.006秒届かない。3番手に野左根、4番手長島、5番手國井勇輝(SDG Team HARC-PRO.Honda)と続いた。

しかし、この日の水野の強さを示していたのは一発のタイムではない。午後に行ったロングランだった。

水野は1分30秒台の速いアベレージで周回。「テストぐらいのタイムもいけたし、テストよりさらにアベレージも上げられました」と手応えを語った。

事前テストは雨に見舞われ、多くのライダーが十分なドライ走行をできなかった。そのため中須賀や野左根は、本来テストで消化するはずだったメニューをこの日の走行で進めなければならず、ロングランまでたどり着けなかった。一方、走行日が違った水野はテスト3日目にドライで約4時間走行。その時間を使い、これまでとはキャラクターの異なるタイヤに合わせてマシンを作り込むことができた。

その差が金曜日に表れた。中須賀は水野の走りを、

「非常にアベレージが速い。今一歩、水野選手が抜きん出てるかな」と評した。

一発では0.006秒差。しかし中須賀が見ていたのは、その数字ではない。

「今日のタイムだけ見ると2番手で1分30秒台。でもアベレージだとだいぶ差がある」それでも、「なんとか、その勢いを止めに行きたい」と続けた。

今季未勝利の中須賀。事前テストで思うように走れなかった状況についても「そうは言っても、みんな条件的には一緒」と言い訳にはしない。

「慌てずにやるべきことをやって、最終的に決勝がどうかというだけ」

「目の前のことをキッチリとやるだけ。しっかりと準備することが大切」と語った。

野左根も水野について「ロングランしていてもペースが良かった。今ひとつ抜けていると思う」と認める。野左根自身は「ここまでとっちらかったのは久々」というほど苦しい一日となったが、セッティングの方向性は見え始めている。

中須賀も「一歩抜きに出ている」。

野左根も「ひとつ抜けている」。
水野の強さを最も雄弁に語ったのは、トップタイムの「1分30秒639」以上に、ライバルたちから出たこの言葉だったのかもしれない。

では、岡山でチャンピオンを決められる水野本人はどうなのか。2位以上でチャンピオン。そのことを意識しているかと尋ねると、

「全くないですね」と即答した。「そりゃ最終戦の前に決まったら気持ち的には楽だな、とは思います。でも決まらなくてもしょうがないな、と思います」

何が何でも岡山で決めようとは考えていない。そのために無理をするつもりもない。

「走りやレースウィークを俯瞰できるようになりました」

それは開幕からブレていない。気負いからくる焦りも無くなり、セッションの中での“空回り”もなくなった。
「無理はしなくなったかもしれないです」転倒が減り、チームの余計な作業も減った。かと言って速さを追い求めなくなったわけではない。むしろ速く走るために、何をすべきかを以前より冷静に見られるようになった。

そして、自分たちの現在地をこう表現した。

「変に自信を持っているわけじゃないです。より丁寧に、慎重に、一歩ずつ歩んいでる感じです」

チャンピオンまで、あと一歩。だが水野は、その先にある王座を見てはいない。見ているのは次のセッションであり、次の一周であり、目の前の準備だ。

そして奇しくも、それは中須賀がいつも口にしている言葉でもあった。

「しっかりと準備する。目の前のことをやるだけ」

王座に最も近い水野と、その歩みを止めようとする中須賀。
立場は違う。だが岡山初日の終わり、ふたりが見ていたものは同じだった。岡山の週末は、まだ始まったばかりだ。

全日本ロードレース第6戦 SUPERBAIKE RACE in OKAYAMA ART合同走行 TOP10は以下の通り

1:#88水野 涼 1’30.639 SDG DUCATI Team KAGAYAMA
2:#1中須賀 克行 1’30.645 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
3:#4野左根 航汰 1’30.852 Astemo Pro Honda SI Racing
4:#45長島 哲太 1’30.970 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
5:#92國井 勇輝 1’31.005 SDG Team HARC-PRO.Honda
6:#95西村 硝 1’31.493 S-SPORTS SUZUKI
7:#85津田 拓也 1’31.517 Team SUZUKI CN CHALLENGE
8:#6岩田 悟 1’31.583 Team ATJ
9:#5伊藤 和輝 1’31.651 Team SAKURAI HONDA
10:#10鈴木 光来 1’31.683 Team ATJ

Photo & text:Toshiyuki KOMAI