2023年ブリヂストンモータースポーツ活動発表会

2023/03/12

ブリヂストンの2023年度モータースポーツ活動発表会が富士スピードウェイホテルで開催された。今年はブリヂストンのモータースポーツ活動60周年を迎える。四輪では「POTENZA」ブランド、二輪では「BATTLAX」ブランドでレース活動をサポートしている。

モータースポーツが技術力・ブランド力を磨く

1963年第1回日本グランプリ参戦からブリヂストンのモータースポーツ活動の歴史が始まる。1964年からレーシングタイヤの本格的な開発に着手、1976年にはF1日本グランプリに参戦するまでに至った。

石橋秀一 取締役 代表執行役グローバルCEOからモータースポーツ活動60年を振り返る講話の中で「タイヤメーカーとしてみなさんの「走りを支える」というパッション、高い技術力、総合力、そしてブランド力を磨いたのがモータースポーツです。ブリヂストンにとってモータースポーツは極限への挑戦。「タイヤは生命を乗せている」を大原則に車の動きを支える挑戦を続けてきたことが今日のブリヂストンに繋がっています」とモータースポーツがブリヂストンブランドの根幹となっていることを語った。そして極限の世界で鍛え上げられた技術と情熱は「品質へのこだわり」「現物現場」「お客さまに寄り添う」「挑戦」のブリヂストンDNAを磨き上げた。ブリヂストンのモータスポーツへの取り組み姿勢は60年間変わっていない。

石橋CEOはモータースポーツへの造詣が深く、モータースポーツを基軸としたブリヂストンのブランディング強化に力を入れている。この業界に身を置く我々にとって嬉しい限りである。

二輪ブランドBATTLAXは今年40周年

ブリヂストンの二輪タイヤの歴史は意外と浅く1983年に「BATTLAX」ブランド立ち上げから始まる。1985年に鈴鹿4耐初参戦にして2位表彰台を獲得、翌1986年にはミラージュ関東:高石/石上組が初優勝を飾る。

「BATTLAXブランド立ち上げ当時、鈴鹿4耐の練習走行では誰も相手にしてくれず悔しい思いをしました。BATTLAXを絶対にグローバルプレミアムブランドにしてみせる、という思いを強く持ちました」との石橋CEOの思い通り、MotoGPで世界を制し、鈴鹿8耐では15連覇、全日本の最高峰JSB1000クラスでは13連覇を達成、今では「ブリヂストンでないと勝てない」とまで言われている。

BATTLAXブランド立ち上げ当時に商品開発として携わっていたという石橋CEO、二輪ブランドにも強い思い入れを持っている。

 

サスティナブルなレース用コンセプトタイヤを発表

続いて坂野真人執行役専務 技術・品質経営分掌・グローバルCTOから「極限の技術」に関する講話があった。

「ブリヂストンにとってモータースポーツは極限への挑戦です。モータースポーツの文化を支え、モータースポーツファンの感動に貢献する。そこで培った知識経験をイノベーションの起爆剤としてサスティナブルな技術、ダントツのプレミアム商品の開発に繋げる。ブリヂストンにとってレーシングタイヤを作るということは人を育て、技術を磨くことです。「タイヤは命を乗せている」これを絶対基盤としてモータースポーツという極限の場でとことん走り倒す。そんな現場の緊張感の中で人が育まれ、技術が磨かれ研ぎ澄まされています。」

「さらにモータースポーツを通じた新たな挑戦としてサスティナブル技術も磨いていきます。最先端の技術を投入することで、より豊かなモビリティ社会に貢献していきます」

会場にはコンセプトタイヤ:MCN(再生資源・再生可能資源の比率)50%の二輪レース用タイヤが展示されていた。通常はレース後のタイヤは裁断されて焼却されるが、このタイヤの構成部材の半分は次のタイヤ製造に活用される。現在はまだ50%であるがこれが100%になれば「使用済みレースタイヤが次のレースタイヤになる」のである。

レースで勝つことはもちろんだが、環境問題に取り組みレースタイヤの新しい形に取り組む姿勢はさすがブリヂストンである。後発参入ながら25年後には二輪で世界を制した技術力と人材を持つブリヂストンならサスティナブルなタイヤでありながらグリップ力と耐久性を兼ね備えたタイヤを作ることができることを期待したい。

最後に日本一速い男:星野一義Team IMPUL総監督、INDY500制覇した唯一の日本人ドライバー佐藤琢磨選手、TOYOTA GAZOO RACING 86カップに参戦する「POTENZA」ブランド商品開発を担当する佐々木雅弘選手によるトークショーが開催された。軽快な星野総監督のトークに会場は和やかな雰囲気に包まれた。

二輪四輪のモータースポーツを足元から支えるブリヂストン。サスティナビリティという世界規模の課題にも果敢に取り組み挑戦する姿勢は60年前にモータースポーツへ足を踏み入れた当時から変わっていない。

Photo & text:Toshiyuki KOMAI