adfronte のすべての投稿

snapshot④- 素肌にレーシングスーツ:加賀山就臣-

新型コロナウィルスの影響で2020年の開幕を迎えられない全日本ロードレース選手権。感染し亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、感染された方々の早期回復と皆様の健康をお祈り申し上げます。

Racing Heroesでは過去に撮影した写真の中から独断と偏見でセレクト、その時のエピソードと共にランダムに掲載していきます。

加賀山就臣、言わずと知れた日本を代表するライダーである。世界で鍛えられた力強いその走りはファンを魅了する。また『野性獣』の異名を持つワイルドさも魅力のひとつである。写真は2010年の鈴鹿8耐でのひとコマ。素肌にレーシングスーツ。インナースーツを着用するライダーがほとんどであるが、素肌に直接と言うのは加賀山と藤原克昭くらいではないだろうか。(MotoGPのランディ・ドゥ・プニエも素肌にレーシングスーツだった)

2007年ヨシムラから鈴鹿8耐に参戦して優勝。2008年ゲリラ豪雨の鈴鹿8耐、1分30秒以上空いていたカルロス・チェカとの差を信じられないラップタイムで猛追、抜き去った直後の第1コーナーで足元をすくわれて転倒。すぐにコース復帰してピットイン。ヘルメットも脱がずに修理が終わるまでずっとマシンのそばに居た。加賀山の走りに胸を熱くするファンは多い。

photo & text : Toshiyuki KOMAI

snapshot③- 2008年酒井大作 初優勝-

新型コロナウィルスの影響で2020年の開幕を迎えられない全日本ロードレース選手権。感染し亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、感染された方々の早期回復と皆様の健康をお祈り申し上げます。

Racing Heroesでは過去に撮影した写真の中から独断と偏見でセレクト、その時のエピソードと共にランダムに掲載していきます。

2008年全日本ロードレース岡山は最終戦として2レース開催。雨のレース2で酒井大作が涙の最高峰クラス初優勝を飾る。前戦の鈴鹿で負った肩胛骨骨折を押しての出場。レース1ではコースアウトからの9位。レース2。ハイペースでトップを走る秋吉耕佑にピタリとつくが骨折の痛みから徐々に離れる。伊藤真一にかわされて3位に後退するがここで秋吉、伊藤が転倒。伊藤に抜かれた後も食らいついていた酒井が築いたマージンでJSB1000クラス初優勝を飾った。ウィニングランから泣いていたと言う酒井。ゴール後はアドバイザー辻本聡氏の元へ駆け寄り初優勝を報告した。

photo & text : Toshiyuki KOMAI

snapshot②- 2012年全日本ロードレース第4戦オートポリス-

新型コロナウィルスの影響で2020年の開幕を迎えられない全日本ロードレース選手権。感染し亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、感染された方々の早期回復と皆様の健康をお祈り申し上げます。

Racing Heroesでは過去に撮影した写真の中から独断と偏見でセレクト、その時のエピソードと共にランダムに掲載していきます。

2012年全日本ロードレース第4戦オートポリス。ST600クラスとSuper Formulaの併催2&4レースだった。金曜日のフリー走行でピットアウトする渡辺一馬。当時四輪の車検場が最終コーナー側にあったためピットロードを逆走、走行中の二輪マシンと接触しそうになる危険なシーンもあった。

決勝レースでは4位&リタイアと残念な結果であったが翌年2013年にはシリーズチャンピオンを獲得。2015年から最高峰クラスJSB1000クラスで活躍をしている。今シーズンは古巣のホンダに戻り伊藤真一が監督を務める「Keihin Honda Dream SI Racing」から参戦。早くその走りをみたい。

 

 

photo & text : Toshiyuki KOMAI

snapshot①- 2011年全日本ロードレース第5戦SUGO-

新型コロナウィルスの影響で2020年の開幕を迎えられない全日本ロードレース選手権。感染し亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、感染された方々の早期回復と皆様の健康をお祈り申し上げます。

Racing Heroesでは過去に撮影した写真の中から独断と偏見でセレクト、その時のエピソードと共にランダムに掲載していきます。

初回は2011年全日本ロードレース第5戦SUGO。2010年チャンピオン秋吉耕佑が逃げ、高橋巧が追う展開。序盤にかなり開いていた差が猛追により終盤にはテール・トゥ・ノーズの手に汗握る超接近戦。しかし僅差で秋吉が優勝。JSB1000クラスにステップアップして3年目、若手の高橋巧の成長を喜び、褒め称えるかのように秋吉がゴール後に高橋に握手を求めた瞬間。

photo & text : Toshiyuki  KOMAI

 

2019 MFJ MOTOAWARDS 開催

「2019 MFJ MOTO AWARD」が東京都大手町・日経ホールで開催され、全日本ロードレース、全日本モトクロス、全日本トライアル、全日本スノーモビル、全日本スーパーモト、全日本エンデューロ、各選手権シリーズの各カテゴリー上位3名が表彰された。

今年の6月、MFJ会長に就任した鈴木哲夫氏。元・株式会社ホンダ・レーシング(HRC)社長として高名な方だ。鈴木会長から今年度の報告と来年度の方針説明があった。

日本のモーターサイクルスポーツの歴史を後世に伝え、輝かしい実績のあった功労者及び選手を讃える「MFJモーターサイクルの殿堂」。第2回となる今年は、本田宗一郎氏と吉村秀雄氏を選出。本田宗一郎氏は1959年日本メーカーとして初めてFIM世界ロードレース選手権マン島TTレースに参戦、1966年には全クラス制覇の偉業を達成。日本のモーターサイクルスポーツを飛躍的に発展させた。村秀雄氏は日本のモーターサイクルスポーツ黎明期からエンジン開発を始めマシンのチューニングに取り組み日本のみならず海外のレースにも参戦。日本におけるレーシングコンストラクターの地位を確立し多くのコンストラクター・チューナを育成した。

顕彰式では本田氏の長女である尾形恵子様と吉村氏の妻である吉村直江様、長男の吉村不二雄様に記念のクリスタルトロフィーと花束が贈呈され、会場からは惜しみない拍手が送られた。

JP250クラス インター チャンピオン:笠井悠太、2位:谷本音虹郎、3位:岡野聖
JP250クラス ナショナル チャンピオン:松岡玲、2位:佐々木將旭、3位:片山千彩都

全日本ロードレースの表彰

J-GP3クラス チャンピオン:長谷川聖、2位:鈴木大空翔、3位:村瀬健琉

ST600クラス チャンピオン:小山知良、2位:南本宗一郎、3位:岡本裕生

J-GP2クラス チャンピオン:名越哲平、2位:榎戸育寛、3位:作本輝介

そして最高峰クラスJSB1000では

チャンピオン:中須賀克行、2位:高橋巧、3位:野左根航汰

ロードレース特別賞として

ルーキーオブザイヤー
J-GP3クラス:村瀬健琉
ST600クラス:荒川晃大
JSB1000クラス:岩戸亮介

ベストチーム
J-GP3クラス「CLUB Y’s」
ST600クラス「T.Pro.Innovation」
J-GP2クラス「Team HARC-PRO.」
JSB1000クラス「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」

が受賞した。

各クラスのチャンピオンに今年の振り返りと来季の抱負を聞いてみた。

2年連続、通算9回のチャンピオンを獲得したJSB1000クラス中須賀克行。今シーズンはホンダワークス:高橋巧が中須賀の前に立ちはだかる。開幕2連勝の後の第2戦鈴鹿でまさかの転倒ノーポイントレース。高橋は鈴鹿から4連勝で中須賀の連覇は難しいと言われた。しかし、後半戦で4連勝を含む5勝を挙げ、最終戦で大逆転でチャンピオンを決めた。

「ホンダが速いのは解っていたのでその上を行くためにセパンの事前テストから良かれと思ってやって来たことが、開幕戦もてぎでは上手く機能して勝つことができました。しかしかなりの接戦だったので厳しいシーズンになるだろうな、と覚悟はしました。第2戦鈴鹿ではホンダ+高橋巧選手のパッケージがべらぼうに速くて驚きました。自分たちがやって来たことを信じて走りましたが予選でも追いつけず、決勝レースでは引き離されまいとしてプッシュした結果転倒してしまいました。

サーキットによって合う・合わないが出ているのは、どこかのバランスが僅かに狂っているのではないか、見落としがあるのではないか、と懸命にマシンのセットアップを詰めていきました。マシン開発には鈴鹿8耐も使いながらマシン開発を進めましたが詰め切れず結果も2位でした。

後半戦の初戦もてぎで勝てて、岡山でもウェットレースで3位でしたがドライでの好感触を得て、バイクのポテンシャルと目指す方向性が間違っていないことを確認できました。オートポリスから新しいパーツが入ってきて上手く機能してコースレコードを更新して2勝を挙げることができました。

最終戦は、(高橋)巧選手、(野佐根)航汰選手、自分、みんなチャンピオンシップがかかっていました。各々がやるべきことをやった中でアクシデントがありましたが、その中で自分が勝てるポジションにいたことがチャンピオン獲得への流れを作るきっかけになったと思います。ですが走りは固くなってしまいました。
オートポリス以降自分は、勝つことしか残されていなかったので、鈴鹿も“やってやるぜ!”と意気込んでサーキット入りしましたが、レース1の途中から失ったものが再び手に入るかもしれない、と思ったら急に走りがガチガチに固くなってしまいました。チャンピオンと獲れば獲るほどその重みがわかってくるので余計に緊張して自分の走りができませんでした。

今年は厳しいシーズンでしたが、例年以上に接戦だったし、レベルも高かったので非常に内容の濃い1年だったと思います。」

今シーズン、高橋巧という強力なライバルの出現により中須賀と高橋の熾烈なバトルが各サーキットで繰り広げられた。「厳しいシーズンだったけど、どうやったら勝てるか、を考えながらマシンの開発、レースを闘えたのでそう言う意味では楽しかった」と中須賀らしいコメントを発した。

J-GP2クラス最後のチャンピオンとなった名越哲平。今シーズン開幕戦の優勝が認められ世界(Moto2)へスポット参戦を果たした。

「今年は全戦全勝を掲げてシーズン入りしました。チャンピオンを獲らなくてはと言うプレッシャーがありましたが獲れるだろうという自信もありました。

開幕戦はポールポジション獲得、自分の思い描いていたレース展開、ペースで走れて優勝という幸先の良いスタートが切れました。

サーキット毎にマシンが合うところ、合わないところが出てくるだろうという予想はしていました。そこを含めて全戦全勝を掲げていたのですが、SUGOと筑波のレース1、岡山を落としてしまい結果的に達成できなかったのは自分の技量がまだまだ足りない、という事だと思います。

今年は3回、世界への挑戦をさせていただきました。初めてのマシン、初めてのコース、海外の猛者たちを前にして納得のいく結果ではありませんでしたが、この時の経験がシーズン後半に活きてきたと思っています。

また、鈴鹿8耐も走る機会を与えていただき、二人で走ることとなりとても厳しかったですけど、あれだけたくさん走り込みましたので改めて鈴鹿というコースを理解することができたと思います。その結果が最終戦鈴鹿でコースレコードを更新することに繋がったのではないか、と思っています。

自分自身と向き合った結果、そして新しい経験からたくさんの発見があり、それがチャンピオンに繋がったのかな、そう言う意味ではすごく良いシーズンでした。」

ST600クラスのチャンピオンに輝いた小山知良。意外なことにチャンピオン獲得は2000年以来19年ぶりだと言う。今シーズンは7戦中4勝、特に後半戦岡山から鈴鹿までは3連勝を飾っている。

「毎年チャンピオン獲得を目指して闘ってきました。ケガやトラブルに泣かされた年もありましたがここまで来るのに19年かかりました。特に昨年はあれだけチャンピオンにこだわって闘ったのに獲れなかった。だったら今年は一戦一戦、勝ちにこだわり、レコードを更新し、圧倒的な速さで勝つことを目標にしました。

開幕戦はトラブルの不発に終わりましたがそこからチームと立て直しを図り、第2戦SUGOで優勝、岡山、オートポリス、鈴鹿と3連勝できました。毎戦、勝つことにこだわった結果がチャンピオンに繋がったと思います。今までは接戦で勝つことが多かったのですがオートポリスでは2位以下に5秒近いギャップを付けて勝てました。まだまだ自分自身成長していると感じています。

勝ちにこだわることは当然リスクも背負います。例え転倒したとしてもそれは攻めた結果だから仕方ない、キチンと原因を突き止めて次戦に活かしてさらに勝ちを狙う。そうやって勝ちを重ねていけば必然的にチャンピオンは付いてくると思います。

今年の岡山、急な雨で苦しいレース展開でしたが、そこで2位でもイイや、3位でもイイや、と思わず絶対に勝つと思って勝負に臨んだことが、結果的にその後のチャンピオンシップに影響を及ぼしました。

来年は2連覇を狙いたいですけど、軽々しく口に出して言えるほど簡単なものではないことは自分が一番良く知っています。

来年も今年同様に、自分自身が成長して、勝ちにこだわり、圧倒的な速さを見せつけて勝つレースをしていきたいと思います。」

一見リスクが高い闘い方だが、長年のレース経験で培ってきた技術、レースの組み立て方、展開の豊富な知見がある小山だからこそできるのだと思う。

激戦のJ-GP3クラスを制した:長谷川聖。シーズン3勝を挙げ最終戦を待たずにオートポリスでチャンピオンを決めた。

「昨年自分はランキング4位だったのですが、上位3人が他のクラスへ移行してしまい、自分が実質一番上に立ったのでチャンピオンは獲らなくてはならない、と言う気持ちでシーズンに入りました。今までとは全然違うモチベーションでした。

その意識の高さが開幕戦優勝という形で現れたと思います。その後も常に上位争いに絡んで2勝を挙げることができました。最終戦鈴鹿はトラブルで全然トップ争いに絡めませんでしたが、前戦のオートポリスでチャンピオンを決めていて良かったです。

今年はチャンピオンシップを考えて走りました。転倒したら獲れるものも獲れなくなってしまうので、順位が下がったとしても下がり幅を減らしていかに多くのポイントを取るか、を考えていました。J-GP3クラスは混戦で誰が勝ってもおかしくない状態で自分は常に上位でポイントを重ねて行けたのがチャンピオンに繋がったと思います。

2位以下に10秒以上の差をつけて全日本ロードレース初優勝できた開幕戦が今年最も印象に残っているレースです。

来年の体制はまだ決まっていませんが、できれば大きな排気量のクラスで走りたいと思っています。」

 

2020年シーズンもライダーたちが織りなす人間ドラマをぜひサーキットの現場で観て欲しいと思う。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

MFJ MOTO AWARDS 2018 開催

「MFJ MOTO AWARDS 2018」が東京都大手町・日経ホールで開催され、全日本ロードレース、全日本モトクロス、全日本トライアル、全日本スノーモビル、全日本スーパーモト、全日本エンデューロ、各選手権シリーズの各カテゴリー上位3名が表彰された。

日本のモーターサイクルスポーツに情熱をもって取り組みんできた方々の偉大な活躍や功績を讃えた「MFJモーターサイクルの殿堂」を今年度設立した。初代殿堂入りを果たしたのは、1961年世界ロードレース選手権西ドイツグランプリでセンターポールに日の丸を掲げた最初の日本人ライダー:高橋国光氏と、1963年マン島T.T.レースで日本人として最初に優勝した伊藤光夫氏。会場からは惜しみない拍手が送られた。

「モータースポーツが日本の文化として根付くこと」を目的に発足した自由民主党モータースポーツ振興議員連盟が評議して決定した今年の議員連盟会長杯は、前人未到の全日本モトクロス国際A級通算150勝を獲得し最終戦で逆転チャンピオンに輝いた成田亮に贈られた。

JP250インター:チャンピオン:笠井悠太、2位:村瀬健琉、3位:成田彬人

JP250ナショナル:チャンピオン:家根谷大晟、2位:西村硝、3位:横山尚太

全日本ロードレースの表彰

J-GP3クラス チャンピオン:中島元気、2位:岡谷雄太、3位:小室旭

ST600クラス チャンピオン:岡本裕生、2位:小山知良、3位:長尾健吾

J-GP2クラス チャンピオン:岩戸亮介、2位:関口太郎、3位:名越哲平

JSB1000クラス チャンピオン:中須賀克行、2位:高橋巧、3位:渡辺一馬

世界選手権で功績を残した日本人を称える「世界選手権功労賞」に、FIM世界耐久選手権に日本チームとして初めてチャンピオンを獲得した「F.C.C. TSR Honda France」藤井正和総監督、FIM世界トライアル選手権 TRIAL-E CUP 2位の黒山健一が受賞した。

ロードレース特別賞として

ルーキーオブザイヤー

J-GP3クラス:岡谷雄太
ST600クラス:佐野悠人
J-GP2クラス:名越哲平
JSB1000クラス:水野涼

ベストチーム

J-GP3クラス「Team SRS-Moto」
ST600クラス「51ガレージ チームイワキ」:宗和孝宏代表
J-GP2クラス「Team 髙武 RSC」:柳本眞吾代表
JSB1000クラス「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」:吉川和多留監督

が受賞した。

 

 

全日本ロードレース各クラスのチャンピオンに今年の振り返りと来季の抱負を聞いてみた。

11レース中(岡山は決勝レース中止)8勝と圧倒的な強さを見せつけてシリーズチャンピオンを奪回、通算8度目の獲得を達成した中須賀克行。

「今シーズン、点数をつけるとしたら90点かな、と思っています。マイナス10点は鈴鹿8耐を走れなかったことですね。自分が造ってきたマシンで優勝できたことは嬉しいですけどやっぱり走りたかったですね。10点は来年に取っておきます(笑)
自分にはまだまだ伸び代が残っていると思っていますし、100点は自分で言うのではなく周りから“アイツは100点だったよな”と言ってもらえるのが嬉しいですね」

「昨年、チャンピオンと獲れなかったのは、連続チャンピオン、レースに出れば勝つのが当たり前という自分自身に対する甘えがあったのだと思います。そこに隙ができたのかな、と。初めてチャンピオンを獲った年は常に“勝つためにバイクをどうすればいい?”“レースをどう闘う?”と自問自答してもがいていたことを思い出しました。いま一度初心に立ち返り、自分を追い込んでバイク・レースへの向き合い方、トレーニングの仕方を見つめ直した結果が今年の結果に繋がっていると思います。」

「来シーズンも当然チャンピオンを狙っていますし、参戦するレース一戦一戦に“勝ち”にこだわりたいです。そしてレベルの高い走りをファンのみなさまにご覧に入れられるように全力で頑張ります」

中須賀ほどの強さを持つライダーが自分をさらに追いつめた、とは意外であったがそこが“常に勝ちにこだわる”中須賀克行たる所以かもしれない。

2年目の今年、大きく成長したJ-GP2クラスチャンピオン:岩戸亮介。

「悪い印象ですけど開幕戦は忘れられません。作本選手は13番グリッド。自分は2番グリッドだったのにレース途中で作本選手にパスされて“えっ?なんで?”と。そこから手を出せなくなってしまいました。“自分で自分をぶん殴ってやりたい”とコメントしましたがレース直後は悔しさを通り越して茫然自失状態。一生忘れられない悔しさとなりました。チームメイトの作本選手に負けたことで自分に足りないものが明確になりました」

「単純に速さだけではなく、レース中に勝つための組み立てや、日頃からの取り組み方も含めて気持ちの持ちようが足りていなかった、と感じました。自分の中の不安材料を取り除くためにレースに対する向き合い方やトレーニングを改めて継続させた結果、気持ちの中に余裕ができてレース中にどんな状況になっても冷静に対処して前に出られるようになりました。結果が伴うことで “負ける気がしない”という自信が生まれるようになりました」

「来季の動向はまだ決まっていませんが自分の目標はずっとJSB1000クラスに上がり、ものすごく大きな壁である中須賀選手に挑戦することなので、そこを目指して頑張ります」

「自分は福岡県出身で熱くなると中須賀さんのような福岡弁でしゃべるんですよ」と気の優しそうな顔つきからは想像できないほど気が強い岩戸。来シーズン、JSB1000クラスにステップアップできることを祈りたい。

ST600クラスのチャンピオンに輝いた岡本裕生。

「シーズン前に立てた目標は、全戦優勝、コースレコード更新、チャンピオンの三つでした。そのうちひとつは獲得できましたがそれ以外は程遠い結果でした。全戦表彰台に登れましたが全戦優勝からは程遠い結果で、チャンピオンを獲れたことは嬉しく思いますが悔しい思いが強いです」

「SUGOではコースレコードまで1000分の何秒かまで迫り、後続を10秒以上引き離して勝てたことが嬉しかったです。1ポイント差で迎えた最終戦ですが、チャンピオン獲得のことは考えずレースに勝つことだけを考えていました。チャンピオン獲得は目標にしていましたが、獲って当たり前、獲らなくては目標にしている海外では通用しないと思っていました。しかし優勝で締めることができず悔しかったです」

「2年前、自分から宗和さんにお願いしてチームに入れてもらいました。宗和さんは厳しい中にも優しさを持って指導していただいています。初年度2勝を挙げて今年はチャンピオンを獲りに行くぞ、との目標を立て、自分の目標に向かって歩んでいけるための道筋を造ってもらいました。宗和さん、芳賀紀行さんの尽力でイタリア選手権にも2回参戦させてもらいスキルアップすることもできました。宗和さんには感謝の言葉しかありません。今年はチャンピオンという形でチームに恩返しができたかな、と思っています。来年もチームのため、そして自分のために走り、海外で走ると言う目標のために結果を残していきたいと思います」

宗和監督の指導の下、成長を続ける岡本の来季の活躍に期待したい。

激戦のJ-GP3クラスを制した:中島元気。

「自分は昨年全日本ロードレースデビューイヤーで、表彰台に登れることが嬉しかったですが、今シーズンは勝ちにこだわりました。もちろん表彰台の登るのは嬉しいですが勝てない2位、3位では悔しい思いがありました。特に前半戦、岡谷選手にあと一歩というところで連勝されてしまい”どうして勝てないのだろう?“と考えていました。昨年参戦したアジアタレントカップのライダーの闘争心、貪欲な勝ちへの執着心、それが足りなかったな、と思います。マシンに頼る走りではなく自分のレベルを上げて行く走りを意識した結果速さがついてきたかな、と思っています」

「オートポリスの優勝は本当に嬉しかったです。前半戦の悔しさを晴らせました。小室選手との最終ラップの最終コーナーのバトル、今までの自分だったら競り負けてはじき出されていたと思いますが、“勝ちたい”という闘争心のおかげで競り勝てたのだと思います」

「来年の体制はまだ決まっていませんが、今年チャンピオンを獲得して自分で成長できたかな、と感じられるので、来年はさらに成長して常に勝ちを狙って全力で闘いたいと思います」

 

2019年シーズンもライダーたちが織りなす人間ドラマをぜひサーキットの現場で観て欲しいと思う。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

Team KAGAYAMA「2018シーズンエンドパーティ」

Team KAGAYAMAの2018年を締めくくる「シーズンエンドパーティ」が神奈川県横浜市・マリンタワー4Fの「THE TOWER RESTAURANT YOKOHAMA」で開催された。

ベイブリッジや横浜公園を望むウッドデッキには鈴鹿8耐を走ったレーシングマシンとTaste of Tsukubaで優勝した片持ちスイングアームのTeam KAGAYAMAオリジナル“カタナ”が展示された。チーム関係者、スポンサー、そしてTeam KAGAYAMAをいつも応援している熱心なファンのみなさまなど100名を超える方々が集まる盛大な会となった。

今シーズン、Team KAGAYAMAは最高峰のJSB1000クラスに加賀山就臣、スペイン選手権に浦本修充が参戦した。

「Team KAGAYAMAを立ち上げて8年目を無事に終えることができたのはサポートいただいている企業さま、ファンのみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。今年は全日本ロードレース以外に1980年代の空冷・鉄製フレームのバイクを改造して闘うTaste of Tsukubaというレースに参戦しました。スズキには“カタナ”という伝説のバイクがあるのでそれをTeam KAGAYAMAオリジナルマシンに仕上げて勝つことができました。また新しいことに挑戦して話題を作れたかな、と思っています」と加賀山就臣が挨拶。

続いて浦本修充を紹介「浦本は2016年にTeam KAGAYAMAに加入、その年にJ-GP2クラスでTeam KAGAYAMAにとって初めてのチャンピオンを獲得。非常に嬉しかった」と加賀山。浦本は「前半はどんなに頑張っても一ケタの順位が獲れませんでしたが、後半はトップ争いもできましたし、尻上がりに調子が上がっていったので自分としては成長できたかな、と思っています。」と挨拶。

Team KAGAYAMAを足元から支えている株式会社ダンロップモーターサイクルコーポレーション 販売促進部野口輝行様より乾杯のご発声。「加賀山さんとは1990年からの長いお付き合いです。自分の誇りは2006年加賀山さんが世界からスポット参戦で鈴鹿を走った時に優勝したことです。その年、ダンロップはまだ一勝もできていなくて加賀山さんが勝ってくれたおかげで士気が上がりました。会社の若いメンバーには“頑張って努力を続けていれば必ず結果として実るんだ”と教えています。そして今年、Taste of Tsukubaで2勝を挙げてもらいました。来年はアメリカで開発した“スポーツマックスQ4“を日本で発売しますので加賀山さんにも乗っていただきダンロップの良いところをみなさまにも味わっていただきたいと思います」と乾杯のご挨拶でシーズンエンドパーティがスタートした。

会場には鈴鹿8耐を一緒に闘った世界の芳賀紀行さんも駆けつけていた。「就臣とは小さい頃からずっと一緒にレースをやってきました。メーカー・チームが違えどずっと就臣のことを応援してきました。みなさんもずっとずっと就臣のことを応援してやってください」とエールを送った。

ファンをすごく大切にするTeam KAGAYAMAのメンバーは、お客様と積極的にお話をする。記念撮影に気軽に応え、多くのファンの方がライダーたちの周りに集まって写真を撮っていた。

ほぼ半数の人に当たるのではないかと思われるほどの景品が当たる抽選会は大盛り上がり!

そして横浜を拠点に活動するロックバンド「1-E(イチノイー)」の生演奏。地元が加賀山と同じ横浜の「I-E」はTeam KAGAYAMAをずっと応援しており、鈴鹿8耐のメインステージで演奏した。

楽しいパーティもあっという間に時間は経過し、最後は日本のバイクレース界のお母さんとしてみんなから親しまれている株式会社ヒョウドウプロダクツ兵頭多美江様から「これからも加賀山就臣とTeam KAGAYAMAをよろしくお願いします!」と中締めのご挨拶。

最後に全員で記念撮影。

来年度の活躍を誓い、Team KAGAYAMAの2018年レースシーズンは幕を閉じた。

来年の体制発表はなかったが加賀山就臣のことだ、みんながまた驚くような話題を提供してくれるに違いない。来年もTeam KAGAYAMAの活動からは目が離せない。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

2018年「ハルク・プロ感謝の夕べ」開催。来季参戦体制発表

毎年恒例の「ハルク・プロ 感謝の夕べ」が東京都・立川グランドホテルで開催された。

今シーズンのハルク・プロは、各クラスに若手ライダーがステップアップ。JSB1000クラスに水野涼(20)、J-GP2クラス名越哲平(21)、ST600クラス上原大輝(21)、JP-250クラス赤間清。今年は無冠で終わるという結果だったが会場には大勢のお客様が駆けつけた。

「2002年以来勝てなかった年は無かったのですが、今年の最終戦まで表彰台に登ってもいないな、どうしたもんかなぁ、、と思っていたところ我々の気持ちを知ってか知らずか、名越哲平がJ-GP2クラスで今季初優勝、ハルク・プロにとっても初勝利を挙げてなんとか記録を延命できました。来年もレース活動と続けてまいります。そしてモータースポーツを通じて日本の二輪の文化をさらに発展させていきたいと思います。我々の活動はみなさまから支えていただいたおかげです。ありがとうございます。」と本田重樹会長から挨拶。

続いて、ハルク・プロのライダーによる今シーズンの結果報告が行われた。

先ずは最高峰クラスルーキーの水野涼。「去年のこの場ではJ-GP2クラスのチャンピオンとして登壇、今年は最高峰クラスにステップアップしてチームを引っ張っていこうと考えていましたが、結果はSUGOの4位が最高、ランキング11位という結果でした。もう少しJSB1000クラスで通用すると思っていたのですがレベルの高さを痛感しています。鈴鹿8耐でも自分のスティントで転倒してしまいチーム・スポンサーのみなさまに迷惑をかけてしまいました。来年はもっと良い成績でこの場で報告できるように頑張ります。一年間ありがとうございました。」

「今年一年間たくさんのサポートをありがとうございました。今年はJ-GP2クラスにステップアップしました。前半戦はJ-GP2マシンというものを理解できず転倒も重なり苦労しました。後半戦に入り少しずつマシンに乗り慣れてきて最終戦で優勝することができました。しかし、シーズンを通してみるとドライでもウェットでもトップとの差は開いていて自分の力が足りないことを痛感しました。来年はさらに自分を追い込んで頑張っていきますので、変わらぬ応援とサポートを何卒よろしくお願いいたします。」と名越哲平。

今年ST600クラスにステップアップした上原大輝。「昨年はJP250クラスでチャンピオンを獲得して今年はミストレーサRTハルク・プロからST600クラスにステップアップして参戦しました。600ccは初めてでしたが自信もあり開幕戦を楽しみにしていたのですが、結果は目標にはとても及ばない結果で今シーズンを終えてしまいました。今年一年、今まで経験したことのない悔しさや難しさの体験の中で少しは成長できたかなとは思っています。しかし、トップとは程遠いので今シーズンを通して学んだことを来年の走りに活かして結果として残したいと思います。今年一年間のサポートと応援をありがとうございました。」

「今年はJP250クラスにスイッチして開幕戦もてぎの公式練習までは“イケるんじゃないか?””悪くてもランキング6位、コツコツやれば3位までいけるんじゃないか“と思ったのですが、見事に予選・決勝で転倒してそこから調子が狂ってしまいました。結果はシリーズランキング11位でした。来シーズンは今年の成績を上回るように頑張っていきます。」と52歳とは思えないほど若い赤間清がコメント。

恒例の樽酒の鏡開き、そして株式会社ホンダモーターサイクルジャパン パブリックリレーション部:部長赤坂様の乾杯のご発声で宴会がスタート。

本田光太郎社長から2019年の体制発表が行われた。MuSASHi RT HARC-PRO. HondaからJSB1000クラスは引き続き水野涼、J-GP2クラス:名越哲平、昭和電機株式会社がメインスポンサーとなるSDGミストレーサRTハルク・プロからST600クラス:上原大輝、JP250クラス:赤間清、さらにJ-GP2クラスに榎戸育寛の加入が発表された。

「ホンダさま、ハルク・プロさま、昭和電機株式会社さまをはじめとする様々な方々のご支援によってこの場に立つことができました。この感謝の気持ちを言葉だけではなく必ずや結果でお返ししたいと思っています。」と力強い挨拶。そこへ名越哲平が「チャンピオンは自分なので育寛は2位で」と割り込んできた。榎戸も黙ってはいない「来季はそうはいかないぞ、勝つ気満々です!」と応戦。榎戸と名越、良い意味でライバルとして刺激し合い、切磋琢磨しながら成長していくのではないだろうか。

本田重樹会長のムチャ振り?でTeam HRC高橋巧がステージに。「昨年、水野涼くんから“来年、巧さんを越えますから”と軽く言われました」と暴露。これには水野もタジタジで「本当にすみませんでした」と平謝り。会場は笑いの渦に包まれた。

ビンゴゲームでは豪華賞品が多数提供され大いに盛り上がったところで本田光太郎社長から中締めの挨拶。「今シーズンも無事にレース活動を終えられたのもひとえにみなさまがたのご協力があったからこそだと心より御礼申し上げます。ありがとうございました。来シーズンもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」

ハルク・プロのますますの活躍に期待がかかる。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

Team KAGAYAMAが「元町 安全・安心パレード」に参加

誰もが振り返る甲高く乾いたエキゾースト音が元町のショッピングストリートに響き渡る。 一般公道では走ることができないホンモノのレーシングマシンが元町をパレードした。マシンはTeam KAGAYAMAのGSX−R1000、ライダーは加賀山就臣。今年も子どもたちの安全・安心を願う「元町 安全・安心パレード」に参加した。チーム発足の2011年以来8年連続で参加している。

このパレードは協同組合元町SS会が交通安全意識の高まりと無事故を願って開催している。今年は神奈川県警加賀町警察署1日署長に小田えりなさん(AKB48チーム8 神奈川県代表(チームK兼任))、横浜市消防局 中消防署1日署長に田山寛豪さん(元トライアスロン日本代表)を迎えた。

街ゆく人たちからは初めて観るレーシングマシンに「何なに?何が走ってるの?」「カッコいい!」「すっげぇーイイ音がする!」と驚きと賞賛の声が多く聞かれた。

チームヨコハマになりたい。

横浜生まれ横浜育ちの加賀山。横浜に対する愛着は人一倍である。「元町 安全・安心パレード」への参加は横浜への感謝の想いから参加し続けている。そして、レーシングライダーだからこそ安全には常に気にかけている。

「安全に走る・曲がる・止まる”はレースでも一般公道でも同じ。モータースポーツから伝えられる交通安全貢献がある」「チーム発足の時点からいつかは”チームヨコハマ“になりたいと言う想いがあった。モータースポーツを認知してもらうには地域貢献が大切。ストリートライダーたちに伝えられる交通安全はたくさんあるのでこのパレードを通じて伝えていきたい。横浜市と地元の元町のみなさんには本当にたくさんの応援、サポートを受けているからそれに応えたい、そして横浜の二輪の顔・シンボルとしてTeam KAGAYAMAがなれればいいな、と思っている」と言う。

チーム発足8年、未だに現役ライダー

加賀山は現役で走ることにこだわる。チーム代表、監督、ライダー、と一人で何役ものわらじを履くのだが決して現役を退こうとはしない。その理由を尋ねると「理由なんてないよ(笑)」と一笑に付された。

「走れるから走る。条件さえ整えば成績を残せる自信はあるし、それができると信じているから走っている。そして応援している人がたくさんいるので彼らがいる限りは走り続けたい」「単純にバイクが好き、バイクで競ることが好きなんだと思う。サーキットで攻める、オートバイを開発する、速くするためにセットアップすることが好き。オートバイはそれに応えてくれるし確実に速くなる」と加賀山。

加賀山が絶大なる信頼を寄せるチーフメカニック:斉藤雅彦氏

その加賀山が絶大なる信頼を置いているのが斉藤雅彦チーフメカニックである。加賀山が現役で走り続けられているのは斉藤氏がいるからと言っても過言ではないだろう。

加賀山と斉藤氏の付き合いはもう20年以上になる。チームは違うが同じスズキ系のチーム:斉藤氏がミラージュ関東、加賀山がSRS KUBOに在籍していたときに知り合った。

斉藤氏が加賀山らしいエピソードを話してくれた。鈴鹿のレースで加賀山と芳賀健輔選手が激しいトップ争いを展開していた。しかし、加賀山が前に出るとペースが落ちる。後日加賀山に理由を聞いてみたら「コースがわからないから前に出ると次にどっちに曲がるかわからなくてペースを上げられなかった」とのこと。

エンジニアとメカニックは違う。

加賀山は「オートバイを正確に組み上げる優秀なエンジニアはたくさんいる。だけどレースで勝つためにベストの選択をすることができる優秀なチーフメカニックは少ないと思う。何が正しいかは誰にもわからない。だからそのときどきで出来ることとできないことを見極め、今のライダーには何が最適なのかを選択することができるのが斉藤チーフメカニック」と言う。

「いくらオートバイが100点満点でもライダーのマインドがそこに達していなければオートバイは走らない。逆に80点のオートバイでもライダーのチカラを120%発揮できればトータルで100点になれる。ライダーとオートバイ、欠けていればそこを補い合うことができるのがバイクレース。その両方をマネジメントするのがチーフメカニックだと思う」と加賀山。

斉藤チーフメカニックは「昔は“良いバイクを作ること”、そのためにエンジン、車体、タイヤ、電気、サスペンション、全てのことを理解することがメカニックの仕事だと思っていた。だけど今はそれらを理解した上で、バイク、チーム、周りの人間も含めて全てをマネジメントして、ライダーが安心してピットから出て行けるような状況を作り出す存在がチーフメカニックの役割だと思っている」と言う。

たまに嘘つきのときもありますが(笑)。

「ライダーの今の状況を把握してすべきことを選択する。そしてライダーが行きたいタイミングで出せるように準備することが大切」「ライダーは人間。どんなに良いタイヤ、良いオートバイを用意しても「もしかしたら途中で壊れるかも。。」「これでいけるのかな」と不安になったら絶対にタイムは出ない。

「これでいける、大丈夫だ」と言い切ってライダーを送り出す。たまに嘘つきのときもありますが(笑)。」と斉藤チーフメカニック。

ライダーが如何に安心して走り出せるかを作るのが我々の仕事。行きたいときに行かせる、今は走るべきではないと思ったら残り時間があっても出さない。そこの見極めが肝心だし難しいところ」と言う。

キャッチャーだけではバッテリーは成り立たない。

加賀山がセッション中に“パーツを変えて”と言ってピットインしても「変えない。ダメだ」と断られることもしばしばあるそうである。「ライダーは必要以上にパーツを変えようとしたり、変える必要も無いのに変えたかがったりする。そこをコントロールするのもチーフメカニックだと思う」と加賀山。ライダーもメカニックも目指すものは一緒「勝つため、ひとつでも成績を上げるためのオートバイを作ること」そのアプローチ方法が違うだけなので、話し合って納得すればお互いの意見を尊重する。

「ライダーが言っていることを止めたり、進めたり、変更させたりするのもチーフメカニックの仕事。世界をみても一緒にやりたいというメカニックは少ない。」と加賀山の斉藤チーフメカニックに対する信頼は絶大である。

斉藤チーフメカニックも「チームの状況にもよるけど、オートバイ、タイヤのダメな状況をなんとかカバーして走ることができるライダー」「ちゃんとしたマシン、チームの状況を作り出せれば十分トップ争いができるライダーだと思う」と加賀山の才能を認めている。

「信頼してくれるライダーがいて初めてメカニックの存在意義が生まれる。キャッチャーだけでは成り立たない。ライダーと言うピッチャーがいないとバッテリーにはなれない」と言う斉藤チーフメカニックの言葉が印象的であった。

常に話題をふりまくTeam KAGAYAMA

毎年、何かしら話題を振りまくTeam KAGAYAMA。昨年の鈴鹿8耐を走ったハフィス・シャーリンは今年MotoGPクラスを走っている。2013年には前代未聞のプロ野球始球式を加賀山就臣が努めた。ホンモノのレーシングマシンで横浜球場に現れ、レーシングスーツのままで投球した。

この「元町 安全・安心パレード」には、Team KAGAYAMAのライダーとして今年RFMEスペイン選手権にフル参戦する浦本修充も参加した。今シーズンの意気込みを聞いてみた。

「日本をベースにスペイン選手権の時に移動しています。RFMEスペイン選手権のレベルは非常に高くてとても勉強になっています。自分の中で少しずつ手応えを感じてきていますがそれをまだ結果に残せていないので残りのレースでなんとか結果を出せるように毎戦集中して臨みたいと思います。チームメイトが3人います。その中で常にトップでいることは最低限、そして表彰台に昇ることを今シーズンの目標としています。

日本人ライダーの中でこのような形で海外のレースに参戦できる人はいないと思うので、(加賀山)就臣さんには感謝しかありません。「ナオを海外に行かせて良かったよ」と言ってもらえるような結果を残し、その結果で就臣さんへの恩返しをしたいと思います」と加賀山への感謝の気持ちを込めて語っていた。

ポケットバイク“74Daijiro“による「親子体験ポケバイ試乗会」が岩田悟、岡崎静夏、亀井駿をインストラクターに迎えて開催された。パレードを観てバイクに乗りたい、というちびっ子達が初めてバイクに乗り、その屈託の無い笑顔がとてもステキだった。

今年もTeam KAGAYAMAの活動が楽しみである。

photo & text : Toshiyuki KOMAI

 

2018全日本ロードレース開幕戦 公式予選&レース1

中須賀克行ダブルポール獲得!さらにレース1優勝!2位にTeam HRC高橋巧、3位モリワキ清成龍一

全日本ロードレース開幕戦「SUPERBIKE RACE in MOTEGI」の公式予選と決勝レース1が開催された。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がレース1、レース2のポールポジションを獲得。さらに公式予選の後に行われた決勝レース1では圧倒的な速さで優勝を飾る。2位には今年ワークスとして復活したTeam HRCの高橋巧、そして3位にはMORIWAKI MOTUL RACINGの清成龍一が表彰台に登った。

今大会は2レースのため、決勝レースのグリッド決定方式が従来とは異なる。決勝レース1のグリッドは、各ライダーのベストラップタイムにより決定する。 決勝レース2のグリッドは、各ライダーのセカンドラップタイムにより決定する。中須賀は安定したタイムで周回、レース1、レース2のダブルポールを獲得した。

土曜日も朝から冷たい雨が落ちてくる。天気予報では曇り、しかしJSB1000クラスの予選が始まる9:30になっても雨は止まずウェットコンディションの中での公式予選となった。このレースウィークで初めてのウェット。決勝レースも雨が予想されたため各車積極的にコースインする。終盤、雨脚が若干弱くなってきたコンディションでピレリタイヤを装着する星野知也(TONE RT SYNCEDGE4413)が58秒台に入れる1 分58秒958のタイムでトップに立った。しかしその直後津田拓也(ヨシムラスズキMOTULレーシング)がわずか100分の3秒差の1分59秒926でトップに立つ。さらに、チェッカーが振られたファイナルラップに中須賀が1分58秒077のタイムで逆転ポールポジションを獲得した。

各ライダーのセカンドラップタイムで決まるレース2のグリッドも中須賀がポールポジションを獲得。2番グリッドは同じヤマハファクトリーの野左根航汰、3番グリッドは津田であった。

公式予選が終わってからわずか3時間半後の午後2時、23周による決勝レース1がスタート!

ホールショットは津田が奪う。しかし3コーナー入口で中須賀がトップを奪い、さらに高橋巧が5コーナー進入で津田のインサイドから2番手に浮上する。高橋はその先のV字コーナーで中須賀をかわすとオープニングラップを制する。以下、中須賀、星野、高橋裕紀(MORIWAKI MOTUL RACING)、野左根、津田、津田一磨(Team Baby Face)、渡辺一樹(ヨシムラスズキMOTULレーシング)、清成、山口辰也(Team SuP Dream Honda)の上位10台。

ここで清成がとんでもないペースで追い上げる。2周目2分00秒105から3周目に1分54秒772と約6秒もタイムアップ。しかもそのタイムは2周目の5コーナー進入でトップに立った中須賀より3秒も速い。「自分のスタイルもそうだけどマシンやセットアップが序盤にペースを上げやすいパッケージ。だからここで勝負をかけた」と清成。9位でオープニングラップを通過したのに4周目のヘアピンで中須賀のインからトップに浮上。モリワキが最高峰クラスに復帰してから初めて決勝レースでトップに立った。

トップ清成、2番手中須賀、3番手高橋巧、その後方には高橋裕紀がつける。高橋裕紀は昨年最終戦直後に右肩の手術(脱臼しやすい)を行い開幕戦には間に合わせる予定だったが事前テストで悪化させてしまい右腕が思うとおりに動かない状態。しかし予選では4番グリッドを獲得し、レース1でも4位入賞を果たした。

「ところどころウェットパッチが残るコンディションで清成選手があんなペースで走るからこっちもある程度リスクを覚悟でペースを上げないとついて行けない」と中須賀にコメントさせるほど清成はハイペースで走行、しかし11周目の4コーナーであわやハイサイドを喫し、なんとか転倒を免れたがマシンを立て直す間に中須賀にトップを奪われる。トップに立った中須賀、ここでペースを上げる。こうなると中須賀の必勝パターンである。

みるみる後続を引き離し、2位に約10秒もの大差をつける独走でトップチェッカー!今季初のポール・トゥ・ウィンを飾る。事前テストから他を圧倒する速さを見せていた中須賀。「昨年、開幕戦から転倒が続いてここモテギでも2戦とも転倒していたので慎重に走ったが、清成選手の異常なまでのペースにしっかりとついていくことで後続とのマージンを開く事ができた。トップに立ってからは路面も乾いてきたのでペースを上げてしっかりと自分の走りができたのが良かった」と中須賀。

「骨折のケガのため事前テストを走れず、ワークス車輌のレース仕様のマシンになって初めて乗ったので正直不安だったのでリスクを避けて少しずつ慣れていこうと思った。予選まで思ったほどペースを上げられなかったので表彰台も難しいかな、と思っていたが決勝レースがドライで走れたのが幸いした。最後に清成選手を抜いて2位表彰台に上がれて最低限の仕事はできたかな」と高橋巧。

「このレースウィークドライでの調子が良かったので予選では最低3列目までには入りたいと思ってプッシュしていたらハイサイド転倒してしまった。ケガの程度はたいしたことなかったがマシンが大きく壊れてしまったので決勝レーススタートギリギリまでマシンを修復してくれたスタッフに感謝したい。決勝スタートで前に行く事ができなかったがこのコンディションは我々に味方すると思い序盤に勝負を仕掛けたらトップ争いをすることができたので良かった」と清成。

ヤマハ、ホンダのワークスにモリワキが食い込み、ちょっと変わった顔ぶれとなった開幕戦の表彰台。今シーズンの波乱を予感させるのか、明日のレース2がどんな展開となるのか楽しみである。

全日本ロードレース開幕戦「SUPERBIKE RACE in MOTEGI」の決勝レース1上位10位は以下の通り。

優勝:#21 中須賀克行YAMAHA FACTORY RACING TEAM
2位:#1 高橋巧Team HRC
3位:#23 清成龍一MORIWAKI MOTUL RACING
4位:#72 高橋裕紀MORIWAKI MOTUL RACING
5位:#11 渡辺一馬Kawasaki Team GREEN
6位:#090 秋吉耕佑au・テルルMotoUP RT
7位:#8 山口辰也Team SuP Dream Honda
8位:#46 星野知也TONE RT SYNCEDGE4413
9位:#31 津田一磨Team Baby Face
10位:#12 津田拓也ヨシムラスズキMOTULレーシング

Photo & text : Toshiyuki KOMAI

2018全日本ロードレース開幕戦 ART合同走行

いよいよ2018年シーズン開幕!ART合同走行、中須賀克行がひとり飛び抜け48秒台。

いよいよ2018年シーズンの全日本ロードレースが開幕した。今年は久しぶりに全クラス同時開幕、場所は栃木県:ツインリンクもてぎ。開幕戦は木曜日からレースウィークがスタート、2日目の金曜日はART合同走行が2本行われた。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)がただ一人48秒台の1分48秒541でトップタイム。しかも自ら持つコースレコードまで0.081秒差と、抜き出ている。2番手には1分49秒167でチームメイトの野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM #5)がつけてヤマハファクトリーがワン・ツー。

今シーズンのJSB1000クラス、一番大きな変化はレース数が増えたことだ。全9戦のうち5戦が土日2レース制となり年間レース数は13レースとなる。昨年までは1レース落とすと致命的だったが今年は挽回の余地がある。お客様にとってもレース数が増えるのは嬉しいことであろう。

ホンダが10年ぶりにワークスとして復活、名門チーム「Team HRC」から昨年のJSB1000クラスチャンピオン高橋巧が参戦。ホンダとヤマハのワークス対決も話題のひとつと言える。

昨年のJ-GP2クラスチャンピオン水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO. Honda)、ST600クラスチャンピオン前田恵助(YAMALUBE RACING TEAM)、生形秀之(エスパルスドリームレーシング・AI)がJSB1000クラスにステップアップ、昨年まで海外で参戦していた渡辺一樹がヨシムラスズキMOTULレーシング入りなどライダーの顔ぶれも大きく変わり、今シーズンのJSB1000クラスは面白くなるだろう。

前日の木曜日は好天に恵まれたが、夜間に雨が降り金曜日の朝は路面が乾かずハーフウェット。JSB1000クラスの走行辺りから乾きはじめるものの様子見が多かった。午後の走行は完全ドライだったが風が強く吹いた。
総合3番手に1分49秒242で清成龍一(MORIWAKI MOTUL RACING)がつける。

総合4番手はカワサキ移籍2年目の渡辺一馬(Kawasaki Team GREEN)が1分49秒287。

総合5番手にヨシムラに電撃移籍した渡辺一樹の1分49秒441。6番手にヨシムラのエースライダーとして6シーズン目を迎える津田拓也の1分49秒494。

7番手に高橋巧(Team HRC)1分49秒545。3月にケガを負い心配されたが開幕に合わせてきた。高橋までが49秒台であった。

ART合同走行総合の上位10位は以下の通り。

1:#21 中須賀克行YAMAHA FACTORY RACING TEAM 1’48”541
2:# 5 野左根航汰YAMAHA FACTORY RACING TEAM #5  1’49”.167
3:#23 清成龍一MORIWAKI MOTUL RACING 1’49”.242
4:#23 渡辺一馬Kawasaki Team GREEN 1’49”.287
5:#26 渡辺一樹ヨシムラスズキMOTULレーシング1’49”.441
6:#12 津田拓也ヨシムラスズキMOTULレーシング1’49”494
7:#1 高橋巧Team HRC 1’49”.587
8:#72 高橋裕紀MORIWAKI MOTUL RACING 1’50”.050
9:#090秋吉耕佑au・テルルMotoUP RT 1’50”.223
10:#75 前田恵助YAMALUBE RACING TEAM 1’50”.647

photo & text : Toshiyuki KOMAI

 

 

 

2018 「MFJ親子バイク祭り」開催

「2018 MFJ親子バイク祭り」が第45回東京モーターサイクルショーの特設会場で開催された。このイベントは二輪モータースポーツの普及、振興のために、
・親子でバイクに触れる場の提供
・モータースポーツの入り口である「キッズバイク」のバックアップ
・ミニバイクレースとロードレースの架け橋となるイベントの実施
を3本柱として5年後、10年後のユーザー育成を目的とした参加型のイベント。

ちびっ子のうちからバイクに触れて楽しさを覚え、ミニバイクレースの中で安全とマナーを覚える。日本の二輪モータースポーツの未来を担う子どもたちを育てるとても有意義なイベント。今年は3日間で延べ406名ものちびっ子達が参加、昨年に比べて大幅に動員が増えている。

今年はあと3回開催される。
2018年4月22日モーターファンフェスタ 会場:静岡県 富士スピードウェイ
2018年7月1日全日本ロードレース選手権 会場:茨城県 筑波サーキット
2018年9月〜10月 開催日:場所、未定

インストラクターとして手島雄介、名越哲平、羽田太河、國峰啄磨、上原大輝、亀井駿、山中琉聖、豊島 怜の全日本ロードレースのライダーたち8名が参加。みんな指導には慣れているようでとても優しく、そして丁寧に教えていた。「止まれ、の意味はわかったよね」「お父さんお母さん、帰り道にこの標識を見かけたらお子さんと一緒に意味を思い出して語りかけてください」と子どもたちだけではなく親御さんと一緒に考えることを提言していたのが印象的だった。一日中バイクに触れたちびっ子たちのキラキラの笑顔は大切な宝ものだと思う。

手島雄介

長年MFJ親子バイク教室に携わってきましたが、今年から日本郵便さんが冠スポンサーに付いていただき、それまで個別のコンテンツを展開していたものが、一体感を持って同じ方向を向いて展開できた事が大きな変化点だと思います。親御さんも「モーターサイクルショーに来れば親子バイク教室がある」と広く認知してもらっているようで親子でモーターサイクルショーに来場するご家族が増えてきていると感じています。しかも、お父さんが子供を連れてくる、と言うより子どもたちが「バイクに乗りたいからモーターサイクルショーに行きたい!」と言って来場する家族が増えてきたな、と感じています。自動車産業に携わるスポーツを通して子どもたちの未来に夢を与え人間形成ができるのがモータースポーツだと思うのでこれからそこに期待したいと思います。

名越哲平

年々このMFJ親子バイク教室の参加台数が増えてきていると実感しています。年々サーキット参加人数が減ってきているのにこの親子バイク教室の参加人数が増えているのは嬉しいです。インストラクターを始めた頃と比べると「バイクってなんだろ?」「バイク知ってるよ!」という子どもたちが確実に増えてきていると思います。参加している子供も「楽しい!楽しい!」と笑顔が絶えないのがやっていて嬉しいです。親御さんも心配すると言うより楽しんでいるのが印象的でした。これをきっかけにオートバイとモータースポーツに興味関心を抱いてもらえれば嬉しいです。

羽田太河

安全第一でいつもやっていますが今回も転倒者もなく無事に終えられて良かったです。みんな楽しんでもらえたと思います。今年で5年目のインストラクターですが、年々参加者は増えています。さらに「楽しい!」「もう一回やりたい!」と言うお子さんが増えていると実感しています。自分もポケバイからスタートしているのでこんなちびっ子の時からバイクに慣れ親しむのはとても大切な事だと思います。

國峰啄磨

いろんな子どもたちがいるので楽しかったです。昔、自分もここにいたんだな、と思いながら教えていました。自分の原点はこのポケバイだし、ここからバイクが好きになって将来のライダーになってくれれば嬉しいです。ちょうどこれ位の年齢がいろんなものを吸収しやすいのですぐにバイクの乗り方も上達すると思います。親御さんと一緒になって楽しんでいる姿をみるとこっちも嬉しくなります。

上原大輝

子どもたちが「怖い」というより「乗りたい」という印象が強かったです。ちょっと教えただけですぐに乗れるようになり、転倒した子供もいたけどその後すぐにもっと乗る!と言っていました。子供も親御さんも「サーキットで乗りたい」という声が多かったのがすごく嬉しかったです。今回初めてのインストラクターをやり、教えながら勉強になることが多かったです。小さい頃からバイクに接することはとても大切な事だと思います。

Photo & text : Toshiyuki KOMAI